カンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝いた『パリ、テキサス』、監督賞を受賞した『ベルリン・天使の詩』など、映画史に永遠に刻まれる傑作を世に送り出し続けるヴィム・ヴェンダース監督。

世界中から敬愛されている名匠の待望の最新作『世界の涯ての鼓動』(8月2日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開)と、旅人同士でもっと旅を楽しむイベント「旅会」を主催する(株)旅工房が、旅と映画を楽しむ『世界の涯ての鼓動』旅会を実施いたしました。

公開に先駆け、本編映像や、映画の舞台になったノルマンディー地方の情報を紹介しながら、本作の宣伝担当と、フランスを知り尽くしたゲスト・坂井彰代さんとのトークセッションを実施。ヴェンダース監督が「この映画の成功は、魔法のように魅力的な場所を見つけることにかかっていた」と語るように、本作の見どころとなるロケーションの一つ、ノルマンディーの魅力を深く語りあう本イベント。レポートをお送り致します。

実施日時 
7月26日(金)(株)旅工房にて
トークゲスト●坂井彰代(さかいあきよ)

坂井彰代
徳島県生まれ。上智大学文学部卒業。オフィス・ギア主宰。「地球の歩き方」シリーズ(ダイヤモンド社)の『フランス』、『パリ&近郊の町』などの取材・執筆・編集を初版時より担当。取材のため年3~4回、渡仏している。著書に『パリ・カフェ・ストーリー』(東京書籍)、『パリ・メトロ散歩』(同)がある。

坂井「今回のテーマはフランスのノルマンディーということで、バカンス気分を味わいながら楽しんでください。」

宣伝担当「坂井さん、本作を一足先にご覧いただいて、ご感想をお聞かせいただけますか?」

坂井:この映画の原題「サブマージェンス」は“潜水”“没入”という意味ですが、美しい海岸が広がるノルマンディーで出逢った2人が、極限状態に置かれても相手を思うことで明日を生きる力を得る、「世界の涯ての鼓動」という邦題が、とてもこの映画の本質をとらえていると思いました。

宣伝担当「早速ですが、ノルマンディー地方はパリの北西に位置します。今回撮影をしたのは、ディエップという街です。」

坂井「ノルマンディーの街はとても美しいです。モネなど、印象派の画家たちが風景画を描いたポイントにパネルが置いてあるんですね。街を歩くとこのパネルに何回も出会うと思います。彼らが活躍したのは19世紀です。第二次世界大戦でノルマンディーはかなりの被害を受けてしまい、街並みは当時から大きく変わってしまっています。時代の変化に思いを馳せながら眺めてみるのも良いと思います。」

舞台となったホテル ボワ・デ・ムティエ!

宣伝担当「続いて、2人が宿泊するホテルとして使われた Bois des Moutiers(ボワ・デ・ムティエ)です。ヴェンダース監督も「2人が恋に堕ちる舞台として完璧だ」と強く感じたそうで。今は季節限定で庭園だけ公開されているようです。

1900年頃の美術工芸運動の最中に異宗教間の会合場所として建てられた屋敷とのことなんですね。」

©2017 BACKUP STUDIO NEUE ROAD MOVIES MORENA FILMS SUBMERGENCE AIE

イギリス海峡に面した海岸線

宣伝担当「主人公の2人が出逢うのが、この海岸沿いです。広大な砂浜が美しいですね。」

坂井「まさしく世界の涯てですね。フランスは地中海など色んな海に面していて、少しずつ雰囲気が違います。イギリス海峡に面しているこの海は、少し水が冷たいんですよ。」

©2017 BACKUP STUDIO NEUE ROAD MOVIES MORENA FILMS SUBMERGENCE AIE

サン・マルグリット・シュル・メール

宣伝担当「劇中で印象的に登場する大きな岩のある海岸は、他作品の仏映画『顔たち、ところどころ』にも登場したサン・マルグリット・シュル・メールです。第二次世界大戦時の、フランス史上最悪とも言える凄惨な負の記憶(※)が残る場所。この迫力のある大きな岩は、ナチス・ドイツ軍が作った掩蔽壕(えんぺいごう)の一部で、当時は崖の上にあったのですが、20年ほど前に敢えて今の場所に落としたそうです。」
(※連合軍がノルマンディー上陸作戦を行った5つのエリアのうちの1つで、「コードネーム:ジュノー・ビーチ」と呼ばれた。)

©2017 BACKUP STUDIO NEUE ROAD MOVIES MORENA FILMS SUBMERGENCE AIE

坂井「消防隊の人たちが人工的に落としたそうですね。破壊するのではなく、海岸に落として満潮時に波に削らせ、徐々に風化させる…というのもいいですね。このあたりは、いわゆる観光地ではなく、ノルマンディーの中でも“涯て”と言えます。仕事柄フランスの様々な場所を訪れますが、ノルマンディーは絵になる場所が非常に多いと感じています。昨年公開されたアニエス・ヴァルダ『顔たち、ところどころ』もそうですが、『シェルブールの雨傘』『男と女』『プライベートライアン』など、ノルマンディーを舞台にした映画は沢山ありますよね。

時代と共に変化し、様々な歴史や記憶、人々の想いを湛えたノルマンディーの風景には、ただ美しいだけではない、悲しみや緊張感なども漂っています。ノルマンディーのそういったものが、ヴェンダース監督や、他の映画監督たちを惹きつけているような気がします。特に海岸線には掩蔽壕(えんぺいごう)の跡など、戦争の記憶が形として残っていますし、現代的なテーマをもった映画にノルマンディーは合っているのかもしれません。」

その後も、高級リゾート地で知られる“ドーヴィル”や、風情のある港町が見どころの“オンフルール”、モネが描いた事で知られる“エトルタ”、「フランスで最も美しい村」のひとつとして知られる“ブーヴロン・アン・ノージュ”、ノルマンディーの名所“モン・サン・ミッシェル”やモネの庭園で知られる“ジヴェルニー”、ノルマンディーの名産品(乳製品やシードル)など、名所から食に関する話まで坂井さんにご紹介頂きました。
その後は、旅会の参加者の皆様と一緒に、ノルマンディー地方名産のシードルとガレットで交流会を実施!参加者同士で情報交換をしたり、坂井さんと一緒に歓談をするなど盛り上がりの中、イベントは終了。参加者の皆さんには、ノルマンディーの魅力を余すところなく体感して頂きました。

株式会社 旅工房×映画『世界の涯ての鼓動』タイアップツアー
レンヌ×サンマロ×モン・サン・ミッシェル×パリ6泊8日間
ノルマンディーの名所モン・サン・ミッシェルを含むオリジナルツアーです。

詳細はこちら:https://www.tabikobo.com/tour/TFRKLAF8RSMP-MLML-YE

ヴィム・ヴェンダース監督の狂おしくも切ないラブサスペンス
『世界の涯ての鼓動』予告

ヴィム・ヴェンダース監督の狂おしくも切ないラブサスペンス『世界の涯ての鼓動』予告

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偶然と呼ぶには、あまりにも深い出逢い
男は無法地帯のソマリア、女は前人未踏の深海へ

ノルマンディーの海辺に佇むホテルで出会い、わずか5日間で情熱的な恋におちたダニー(アリシア・ヴィキャンデル)とジェームズ(ジェームズ・マカヴォイ)は、別れの朝の引き裂かれるような痛みに、互いに生涯の相手だと気付く。だが、生物数学者のダニーには、グリーンランドの深海に潜り地球上の生命の起源を解明する調査が、MI-6の諜報員であるジェームズには、南ソマリアに潜入し爆弾テロを阻止する任務が待っていた。やがて恐れは現実となり、ダニーの潜水艇が海底で操縦停止に、ジェームズはジハード戦士に拘束されてしまう。果たして、この極限の死地を抜け出し、最愛の人を再びその胸に抱きしめることができるのか──?

生物数学者のダニーには、『リリーのすべて』でアカデミー賞®を受賞したアリシア・ヴィキャンデル。MI-6の諜報員ジェームズには、『X-MEN』シリーズで人気を博し、『スプリット』『ミスター・ガラス』で注目を集めたジェームズ・マカヴォイ
地球の果てまでもとらえる壮大な映像美と、人間の心の涯てまでを追いかけるエモーショナルなストーリーで、世界中から敬愛されている名匠ヴィム・ヴェンダースが、ロマンティックな美しさをたたえたノルマンディーの海岸、人類の原風景のようなグリーンランドの広大な海、砂に包まれた峻厳な南ソマリアを舞台に描く、狂おしくも切ない極限下のラブサスペンスが誕生しました。

監督:ヴィム・ヴェンダース

出演:ジェームズ・マカヴォイ『ミスター・ガラス』『X-MEN』シリーズ   アリシア・ヴィキャンデル『リリーのすべて』『トゥームレイダー』

原題『Submergence』/2017年/ドイツ・フランス・スペイン・アメリカ/英語・アラビア語/カラー/ビスタサイズ/DCP/5.1ch/112分 字幕翻訳:松浦美奈
配給:キノフィルムズ/木下グループ 
レーティング:G
©2017 BACKUP STUDIO NEUE ROAD MOVIES MORENA FILMS SUBMERGENCE AIE

8月2日(金)、TOHOシネマズシャンテ他にて全国順次公開