6月14日

上映35日目。アップリンク渋谷トークイベント最終日。
色々なことを思い出しながら最後の記事を書いている。

5月11日の公開初日。
自分で再上映を決めたが内心ドキドキしていた。

「光と血」という作品で2週間全回満席にした実績と自信はあったが、同じことが果たして通用するのか。途中でまた去年のように打ち切られたらどうしよう…など不安は尽きなかった。

一週目の上映が始まり、連日来てくれる沢山の観客の反応を見て徐々にその不安はそがれていった。すぐに翌週の上映回数が増え、パンフレットの出版やDVD発売、地方の追加上映の準備、ゲストのブッキングなど慌ただしい日々が始まった。

日中は情報のリリース確認や、DMでいただいたコメントの判別や対応、クレームに対する対処などLINEグループは常に動き続け、スタッフも3週目あたりでどんどんと疲弊していった。今思えば無謀であったし、体力のことを過信しすぎていた。

でも、くらいついてきてくれたスタッフたちのお陰でなんとかほぼ毎日舞台に立つことが出来た。改めて、スタッフに感謝の意を表明したい。

そして何より、毎日上映後にいただくお手紙や、口頭での感想、SNSでのメッセージなど、観客の皆さんの感想に救われていた。本当にありがとうございました。

©映画「青の帰り道」製作委員会

僕は「青の帰り道」という映画が大好きだ。

裕太の事件のことがあったので「いわくつき」と嘲笑する人もいたが、それでもこの作品が僕にとって大切な一本であることは変わらないし、そこで腐らず観客に観てほしかった。そして、一人一人の感想が大きくなっていき、5500人を超える人がこの映画に触れてくれたことを本当に光栄に思っている。

映画を知るきっかけが流星だった人ももちろん多いと思うが(よくやった!流星!)それでも、そこから作品を好きになってくれた人もたくさんいると思う。毎日、観客の顔を見ていた僕はそう実感した。

流星は嬉しいことにブレイクしてしまったため、劇場には来れなかった。パニックになったり、来れなかった人を考慮してのことだ。でも、流星もこの再上映をきっと喜んでくれているはずだし、彼の出演作品の中でも僕は「青の帰り道」の流星が好きだ。(もちろん「チア男子!!」や「愛唄 ー約束のナクヒトー」「虹色デイズ」でも素敵だが)

この先も彼と一緒に映画を作っていきたいと思っている。

そして、結婚してスペインに住む主演の真野さんも二回も登壇してくれたし、他のメンバーも忙しい中駆けつけてくれた。僕は本当に幸せ者である。ありがとう。

最終回ゲストは清水くるみさん、岡本麻里さん

左から藤井道人監督、清水くるみさん、岡本麻里さん

この35日間を経験して、思ったことをいくつか。

映画を作ることは容易くない。でも映画を観てもらうことも等しく容易くない。
大切なのは「真心」だと思う。

どんな手を使ってでも、映画は観客の元に届かねばならない。その熱意は絶対に観客にも伝わるはずだし、疲れる作業かもしれないが、手を抜かず情熱をもって届けようとすればそれは必ず観客の心に届く。
メジャーでもインディーズでもやることは変わらないと再認識した。

そして、ここからは少しまじめな話だが、映画を作る・売る行為には対価が発生するべきだ。残念ながら映画業界は「やりがい搾取」なるものが跋扈する業界でもある。自己投資と割り切っている場合を除いて、無料で舞台挨拶、無料でビラ配り、無料で執筆…。監督料だって微々たるものだ。僕はそういう業界に常に違和感を感じている。僕自身、インディーズからやってきたからこそ、そこへの嫌悪が強い。

今回僕は、製作委員会から興行収入の一部のパーセンテージをいただけるように交渉した。「映画を売る対価」である。何でもかんでも無料で、自分の情熱や思いを切り売りするべきではないと思う。金銭的なストレスは、やがて「映画」への絶望に変わってしまうと思う。

率先してその部分は変えていけたらいいなと、今回の興行でも強く思った。これから、映画業界を変えていってくれるだろう後輩たちのためにも、先陣を切って様々な改革に挑戦したいと思っている。

少し、固い話になってしまいましたね!ごめんなさい。

最後にはなりますが、観てくれた皆様、この映画を応援してくれている皆様、そして劇場スタッフ、宣伝チームの皆さま、本当に僕の想い一つで始まったこの再上映に力を貸してくれて感謝いたします。

この感謝を忘れずに、次回作、次々回作と真摯に映画作りに向き合っていきます。
長文、駄文、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。

2019年6月15日 「青の帰り道」監督 藤井道人

■藤井道人 Michihito Fujii
映画監督、映像作家、脚本家。1986年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部映画学科脚本コース卒業。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』でデビュー。『光と血』などの作品を発表する一方で湊かなえ原作ドラマ『望郷』、ポケットモンスター、アメリカンエキスプレスなど広告作品も手がける。2017年Netflixオリジナル作品『野武士のグルメ』や『100万円の女たち』などを発表。2019年『デイアンドナイト』『青の帰り道』公開中。6月28日『新聞記者』の公開が控える。

ご来場のお客様からご感想をいただきました!

■ru_SIDEB様

藤井監督、青の帰り道35日間トーク完走!本当にお疲れ様でした!!
感想や質問をいつも笑顔で受け容れてお応え頂き、嬉しかったです。
ゲストの皆さんとも素敵な時間。作り手側の熱を直接感じられた貴重な場をありがとうございました!!

昨日はまた初心に戻りキリにはまり込んでしまった。その後のトークで工藤夕貴さんとの商店街シーンについて監督とくるみちゃんが語ってくれた時、鮮明にフラッシュバックしてしまいトーク中も涙溢れちゃって。
アフターでもくるみちゃんに対面した瞬間も泣きそうに。涙腺よ。

何度鑑賞しても、鼻すする程泣く。
ただ悲しいだけじゃない。様々な想いの涙。内容も台詞もわかっていても込み上げる感情が止められない。映画館で感じたい映画。

■yuriyuriyuri様

昨日は「青の帰り道」連続最後の?トークショー
私は親たちにも共感する部分があり「ずーんと」きたのですが 笑
思い返すと、キリとお母さんの場面、キリとタツオのお父さんの場面、が一番好きなことに気づきました。キリ。。。

「藤井監督」連日本当にお疲れさまでした!

■あっきん 様

藤井監督自らゲストをブッキングし開催してくれたトークショーつき上映最終回。
計35日…この企画をやりきった監督の行動力には頭が下がる。お陰でこの作品がどう作られ、キャストやスタッフの皆さんがどんな想いで撮影に臨んだか深く知ることができた。こんな経験、きっと二度とできない。

アップリンク以外でも全国の映画館での上映が続々と発表されているのはうれしい限り。観たいと願ってる人がたくさんいるので、ぜひ届いてほしい。そしてわたしも上映が続く限り観に行く!念願のDVD化も決まったようなので必ず購入するけど、スクリーンで観るのはやはり特別だから。

再上映初日からトークショーを5回拝見できたことは本当に感謝。当初は真野ちゃん・冨田くんの回で最後にするつもりが、どうしても最終回を見届けたくなり、幸運にもチケットが取れたので参加させてもらった。初日に続き清水くるみさんのお話にはとても引き込まれた。魅力的な女優さんだ。

初めて観た時、一番感情移入したのはキリだった。カナを支え、カナの夢を一緒に追いかけるキリが自分と重なったから。辛い経験をしたけど、母との関係を結び直し、カナとも再び並んで歩き出したであろうラストに救われた。商店街を母役の工藤夕貴さんと歩くシーンは毎回涙が止まらない。

■つきの様

大きな夢を抱いていた人ほど挫折した時は辛いものだろう。
私は平凡に過ごしてきた今に後悔はないけどそれでも「たられば」はある。

自分に余裕のない時に他人を慮る事が出来なくて傷つけてしまったり、
内容はとても重いが登場人物の誰かしらどこかしらに共感できた。

■ゆき様

連日登壇された藤井道人監督、本当にお疲れ様&ありがとうございました!!
最終日も楽しかったです!
作品に纏わる様々なエピソードを知ることでより深く作品の世界に入り込んで、お話を聞けば聞くほど青が大好きになりました。
一日でも長く「青の帰り道」が続き、より多くの方に愛されますように。

映画『青の帰り道』上映情報

★5/11(土)〜公開中【東京】アップリンク渋谷
https://shibuya.uplink.co.jp/

★6/22(土)〜【大阪】 第七藝術劇場
http://www.nanagei.com/

★6/22(土)〜【京都】出町座
https://demachiza.com/

★7/5(金)〜【岩手】 盛岡中央映画劇場
http://www.chugeki.jp

★7/6(土)〜【神奈川】シネマジャック&ベティ
http://www.jackandbetty.net/

★7/13(土)〜【茨城】 あまや座
http://amaya-za.com/

★7/19(金)・26(金)【北海道】シアターキノ
http://www.theaterkino.net/

★7/27(土)〜新潟・市民映画館 シネ・ウインド
https://www.cinewind.com/line-up/

映画『青の帰り道』

映画「青の帰り道」特報/2018年12月7日(金)全国ロードショー

www.youtube.com

出演:真野恵里菜 清水くるみ 横浜流星 森永悠希 戸塚純貴 秋月三佳 冨田佳輔
山中崇 淵上泰史/嶋田久作
工藤夕貴 平田満

主題歌:amazarashi『たられば』

監督:藤井道人
原案:おかもとまり
脚本:藤井道人/アベラヒデノブ
制作プロダクション:and pictures
制作協力:BABEL LABEL/プラスディー
配給:NexTone
配給協力:ティ・ジョイ
再上映配給:BABEL LABEL/ボタパカ/and pictures

©映画「青の帰り道」製作委員会

公式サイト:(以下より)

連載第34回