映画webマガジン「シネフィル」で長編作の前から注目し続けてきた奥山大史監督。

カンヌ、ベルリル、ヴェネチアに次ぐ重要な映画祭として世界四大映画祭とも言われ、スペイン語圏で世界最大の映画祭となる第66回サンセバスチャン国際映画祭で、日本人として最年少22歳で新人監督部門のコンペティションに参加し、見事に最優秀新人監督賞を受賞。

サンセバスチャン国際映画祭
2019年カンヌ国際映画祭のパルムドールに輝いたポン・ジュノ監督(『殺人の追憶』)やローラン・カンテ監督(『ヒューマン・リソース』)らが受賞している世界で最高峰の新人監督の登竜門的映画祭。

その後も今作で、ストックホルム国際映画祭における最優秀撮影賞、マカオ国際映画祭でスペシャルメンション、そしてアイルランドのダブリン国際映画祭でもまた最優秀撮影賞と各国の最高の映画祭で続けざまに受賞を重ねました。

今回、シネフィルで単独インタビューを掲載いたします。

奥山大史監督 cineflインタビュー

サンセバスチャン国際映画祭受賞で世界でも注目されましたよね。

海外で上映したいと思って作った映画ではないですが、サンセバスチャンは一番出したかった映画祭でした。評判のいい映画祭でもありましたし、新人監督の部門で世界でも定評がありましたし--

評価をもらえたことには驚きましたし、最初は実感はなかったんですが、カトリックが根付いている国で評価されたことは最初は実感がなかったんですが、一番に驚きでした。
本当に、最初にサンセバスチャンでかかって良かったと思っています。

学生で、低予算で出来上がった映画なので、皆様の協力やご好意で出来上がった映画なので、ちょっとした評価をもらえたことでご迷惑をかけた方に少しでも、ちょっとだけでも恩返しできたのかなと思いました。

最初は怖かった部分があったんですよ。一種の変り種として、入れてもらえたのかな、選んでもらった時点でかけていいはずだよなとは思っていたんです。
キリスト教のある一定の人に刺さったのかな。
実際、会場からも、12メートルぐらいのでっかいキリスト像が見えるんですよ。

日本の作品でキリスト教を描く作品は珍しいと思うんですが、自身の体験と重なる部分は多かったんですか?

そうですね。この作品を作るきっかけとなったのも、ミッション系の小学校に、幼稚園の途中からでしたが、通っていたことは大きいと思います。

リアルな体験から生まれたんですね。海外の人が考えるキリスト像と近いのですかね?

多分違うとは思うんですよ。海外それこそサンセバスチャン、スペインみたいな国だったら、やはり本当にもっとキリスト教が身近なので、それが当然で、それが教育にも入ってくるぐらいだと思うんですけど、日本では、別に教育に入るというより、一つの学校の方針という形で入って来ているので、そういう人たちと比べると差はあるんですが、でも日本で普通の小学校に通っている人と比べると、身近な存在でした。
実際、イエス様の存在について考えることはいっぱいありましたし、そもそも「本当にいるのかな?」とか、いないどころか「ちょっとひどい人なんじゃないかかな?」と思っちゃうような時期を経験するということは実際のクリスチャンの人たちもあるみたいなので、そこはすごく繋がったのかなと思います。

小さいイエス様が出てきますが、反応は?

本当にち小さなイエス様が出てくるたびに、すごく笑ってくれるんですよ。手を叩いてくれる人もいたりして、なんでこんなに受けてくれるのかなと最初わからなかったんですが、街中での感想などを聞いたり、Q&Aなどで色々話をすると、身近なだけに彼らなりのタブーもあって、その上、宗教画なども多く見てきていますし、そんな中でこの作品を新鮮に感じてくれたんです。

奥山大史監督

ある意味キリスト像を描くのには怖くなかったですか。日本人だからこそ自由にできた?

あと、キリスト教をちゃんと僕なりに分かっている上で描いているので、この映画のためにキリスト教について勉強し始めていたら、間違いというかキリスト教的におかしい部分が出てきたりすると思うんですよ。それがなるべくないように考えては作っているので、それを知った上でイエス様が出てくるとあくまで、このちっちゃいイエス様はユラの信仰心の象徴なんだろうなとか、子供の想像でしかないんだろうな。ちゃんと理解してくれたんですよね。
もしもあそこで、例えば牧師さんの話す内容とか、この映画は、全部音楽は賛美歌で構成されているんですが、その賛美歌の選曲とかそういうものが、ちょっとでもクリスチャンの人から違和感のあるものだったら、神様をちっちゃくして、神様をなにも分かっていないと言われたと思うんですが、それ以外が一応ある程度ちゃんと成立してた上での、小さなイエス様なので、これはあくまで「象徴として出てるんだな」「かわいいな」「こんな描き方していいのかな」とニヤニヤしてくれ観てくれました。

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映画に中に神社のシーンも出てきますね

宗教をまたぐという日本の独特で、それこそ年末年始がわかりやすいですが、それが面白くて、その日本人の宗教観をそのまま描きたいなと思いました。
なので、決して賽銭箱の上をイエス様を歩かせることで日本人の宗教を揶揄しようという、そういうつもりは全くなくて。なので、そのことでユラが違和感を抱くとかの描写していません。
そもそも日本人の人たちに見てもらおうという想定で作っているので、なんかこう、自分たちの宗教観って確かにこんな感んじだよな。じゃあ自分が信じてた神様って一体どんなものだろうなど、考えるきっかけにそれでなればいいなと思っています。
自分が感じていたこととか、信じてたことか、をちょっと俯瞰してみることで、そこに違和感を観た人が感じてくれたらと思っています。

ストックホルム国際映画祭で撮影賞もとりました。そしてダブリン国際映画祭でもまた最優秀撮影賞。いかがですか撮影での受賞は?

ストックホルムで上映してもらえるということが嬉しかったですし、同時にかかる並びの日本映画がすごくて、『万引き家族』や『千と千尋--』などが日本映画を代表する映画が並んでる中で、この映画を入れてくれたことがまず嬉しかったです。
ストックホルムは、キリスト教が根強い国ではないんですが、そんな中で、ここでは純粋に映画として楽しんでもらえているなってことが実感できたことが何よりでした。賞を取ることは、気にしてなかったんです。

撮影にはどのあたりをこだわってたんですか?

撮影賞は、確かに自分で撮影もしましたので認めてもらったのは嬉しかったんですが、今回、別に撮影技術にこだわっているわけないんですよ。ワンシーンワンカットですし、基本的にレンズもそんな変えてないですし、特殊なカメラをを使ったわけでもないので。
そういう面での認められ方ではなくて、本当に冷静に、一つのシーンの中で、このシーンはどのくらい登場人物と距離をとって、レンズは何ミリで、どのくらいの角度から撮るのかなど、すごく練りながらとっていたので、それが間違っていなかったと思えたことが嬉しかったです。

初長編で子供の演出は大変じゃなかったですか?

大変だけど楽しかった。ユラくんに見事に答えてもらいました。
何かと表情もリアリティ豊かですし、子役の演出は苦労しませんでした。集中力も二人ともありましたし、鶏の演出には苦労しましたが--(笑)

このような作品をいつから撮ろうと思っていたんですか?

いくつかあったんですが、自分の体験したことを踏まえてキリスト教をテーマにして作りたいとは高校生ぐらいの時から考えていました。
でも、実際に実現化させようというなかでは、ちょっと「テーマが重すぎるかな」とか、いろいろなことを踏まえて最終的に小さなイエス様が出てくる形になりました。
撮影には、一年前から動き出しましたが、それからプロットとか変化してって、オーディションを三ヶ月前にして、自分的にはドタバタした印象ではあったんですが--撮影も6日間でしたし。

初挑戦なのに軽みのある中で奥行きがでていて、初作品とは思えないですよね。

自主映画とかが多かったですが、色々と撮影に参加してきた経験が生きているかしれません。撮影しながらもこういうテーマだったらこうしたらいいなとか、俯瞰的に仕事ができたので、その経験が大きかったかもしれません。

映画監督になるきっかけ。影響を受けたものはなんですか?

演劇ですね。ずっと演劇が作りたかったんです。中学生の終わり頃から見はじめて、高校で実際に劇団の手伝いをしたりしました。でもだんだん演劇は、表現の面など色々制約が多いので、なんかそれをうまくくぐり抜けて、自分のやりたいことを表現できるのはなんだろうと思った中で、徐々に映像にうつっていった感じです。
なので、今も映画を作りながらもちょっと演劇でやりたかったことを取り入れたりしてます。
その一つが、ワンシーンワンカットでカットを割らずに、ちゃんと一場面でみせていく、ちょっとナマモノ的な要素を入れながらとかは、演劇からの影響です。
当時、青年団が好きだったんですが、平田オリザさんの"会話を同時多発でやる"とか、"意識を分散させることで、セリフにリアリティを持たせる"とかそういったことから一番影響を受けているのは映画より演劇かもしれません。

では、映画での影響は

邦画だと作品としてすごく好きなのが橋口亮輔さんがすごく好きで
『ぐるりのこと。』とかすごく良くて、、
今回の映画で、影響を受けた人でいうと、まずワンシーンワンカットという面ではロイ・アンダーソン監督。絵画的にきっていって、ゆったりとしたテンポで詰めてくとか、演出面では是枝監督の影響をすごく受けていますし--
ただ、何を描きたいかかが映画では一番大事だと思うんですが、誰からも影響されないというか、尊敬はしているものの橋口監督が好きだからセクシアリティをテーマにしようとしても、是枝監督が好きだから家族をテーマにしようと思っても結局、その人たちの劣化版にしかならないので、だったら自分にしか作れないものと考えて、この作品となりました。

これから映画をご覧になられようと思っている方へ

とっつきにくいテーマと思われる方もいるかもしれませんが、実際にそんなことはありません。
また、宗教ということでなく、例えば大好きなスポーツ選手でもタレントでも自分にとって絶対的な存在だったものを信じられなくなったかたにも是非観てもらいたいと思っています。

写真 大津 供絵
インタビュー シネフィル編集部 A.K

世界が注目!奥山大史監督長編デビュー作『僕はイエス様が嫌い』予告編

世界が注目!奥山大史監督長編デビュー作『僕はイエス様が嫌い』予告編

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[STORY]
祖母と一緒に暮らすために、東京から雪深い地方の小学校へ転校することになったユラは、新しい同級生たちと行う礼拝に戸惑いを感じ ていた。やがてその行為にも慣れ、周囲と打ち解け始めた頃、目の前に小さなイエス様が出現。ユラは、願い事を必ず叶えてくれるイエ ス様の力を信じるようになっていくが......

◾️監督・脚本・撮影・編集:奥山大史

◾️出演:佐藤結良 大熊理樹 チャド・マレーン/木引優子 ただのあっ子 二瓶鮫一 秋山建一/大迫一平 北山雅康/佐伯日菜子

プロデューサー:吉野匡志
ラインプロデューサー黒川苅子
制作担当:志村光記
照明:岩渕隆斗
録音:柳田耕佑
美術:藤本楓
ヘアメイク:ほんだなお
助監督:関航大
整音:渡部聖
制作:閉会宣言
配給:ショウゲート
宣伝:プレイタイム
スペック:2019/日本/カラー/スタンダードサイズ
英語タイトル:JESUS
©『閉会宣言』

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