J・A・バヨナ監督の「永遠のこどもたち」(2007)、「インポッシブル」(2012)の脚本を書いたセルヒオ・G・サンチェスが監督としてデビューし、バヨナが製作総指揮にまわった2017年作品。
アメリカが舞台で、英米の若手俳優が出演しているが、実際はスペインで撮影されたサイコ・スリラーだ。「永遠のこどもたち」がそうであったように、暗い過去を隠す人物、とくにいたいけな子供にまつわる不思議な現象、開かずの間のある怪しげな邸宅といったミステリアス要素を盛り込んで、ストーリーが進行していく。

©2017 MARROWBONE, SLU; TELECINCO CINEMA, SAU; RUIDOS EN EL ATICO, AIE. All rights reserved.

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 1960年代のアメリカ・メイン州。片田舎にひっそりと建つマローボーン邸に、ジャック、ジューン、ビリー、サムという四人の子供が住んでいた。彼らの父は兇悪な殺人鬼として追われた人物で、母ローズは子供四人を連れて、イギリスから故郷のこの村に移住し、名前も旧姓のマローボーンと名乗っていた。だが、その母も長男ジャックに弟たちのことを託して病死した。ひっそりと息を潜めるように暮らす彼らにとって、図書館の司書をしているアリーだけが心の頼りだった。
 或る日、父が彼らの前に出現し、実の子供たちに襲いかかってくる。ジャックが無我夢中で父を殺害し、死体を隠す。一難去って一難、こんどは家の相続に母の署名と手数料200ドルが必要だと、ポーター弁護士が乗り込んできた。母の死を知られると、成人前のジャックをはじめ子供たちは施設に送らればらばらになってしまう。長女ジューンが母の署名を偽造し、いったんはポーターを追い払うことができたが……。

 題名にもある掟とは、子供たちが生き残るために守らなければならない五つの定めのことで、奇々怪々な雰囲気をもりあげる効果をになっている。
責任感の強いジャック、直情径行でかっとなりやすいビリー、心優しいジューン、恐がり屋の幼いサム。そして心和むアリー、彼女に恋し拒否されるとジャックを追いつめようとするポーター。

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 人里離れ、いかにも怪しげな邸宅に住む人々が対面する怪奇現象。あっと驚く、最後のサプライズを生かすために、製作者は出来事の全貌を見せず、ミステリー小説の読者ならおなじみの“燻製にしん”手法を使って、観客を間違った方向へと誘っていく。加えて古めかしい邸宅の外景、暗い内部が意味ありげに描写され、多くの人々がだまされてしまうだろう。

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 アリーに扮したマイアミ生まれのアニャ・テイラー=ジョイをのぞく、四兄弟すなわちジャックのジョージ・マッケイ、ジェーンのミア・ゴス、ビリーのチャーリー・ヒートン、サムのマシュウ・スタッグは全員イギリス出身。
ちなみにアニャ・テイラー=ジョイとチャーリー・ヒートンは19年8月全米公開予定のXメンシリーズの「ニュー・ミュータンツ」でも共演している。スペインのアストゥリアスで撮影されている。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。
著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

『マローボーン家の掟』60秒予告編

『マローボーン家の掟』60秒予告編

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〈STORY〉
海沿いの森の中にひっそりとたたずむ大きな屋敷。そこに暮らすマロ―ボーン家 の4人兄妹は、不思議な”5つの掟”に従いながら、世間の目を逃れるように生きていた。
忌まわしい過去を振り切り、この屋敷で再出発を図る彼らだったが、心優しい母親が病死し、凶 悪殺人鬼である父親を殺害したことをきっかけに、4人の希望に満ちた日々はもろく崩れ出す。 屋根裏部屋から響いてくる不気味な物音、鏡の中にうごめく怪しい影。いったいこの屋敷に は、いかなる秘密が隠されているのか。
やがて平穏を保つための“掟”が次々と破られ、心身共に追いつめられた長男ジャックが、最愛の妹と弟たちを守るために下した決断とは......。

【監督・脚本】セルヒオ・G・サンチェス
【製作総指揮】J・A・バヨナ
【出演】ジョージ・マッケイ/ミア・ゴス/チャーリー・ヒートン/マシュー・スタッグ/アニャ・テイラー=ジョイ
2017年/スペイン・アメリカ/英語/カラー/シネマスコープ/5.1ch/1時間50分/日本語字幕:佐藤恵子 原題:MARROWBONE/
配給:キノフィルムズ|木下グループ
宣伝:REGENTS
レーティングG
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新宿バルト9 ほか全国ロードショー