桜舞う季節になりました。
目黒区美術館では、世紀末ウィーンの新しい時代に向けたデザインやグラフィックアートを楽しんでいただく「京都国立近代美術館蔵 世紀末ウィーンのグラフィック」展を開催致します。
世紀末ウィーンとは、「19世紀末、史上まれにみる文化の爛熟を示したオーストリア=ハンガリー帝国の首都ウィーン、およびそこで展開された多様な文化事象の総称である。」とのことです。
(ウィキペディアより)
のちに金色のゴージャスさが印象的な《抱擁》、《接吻》で知られるグスタフ・クリムトや、建築家で家具や食器のデザインも手掛けたヨーゼフ・ホフマンなどを中心とした芸術家たちが、新しい時代にふさわしい革新的な芸術やデザインを模索し、創り出しました。
特にグラフィックの分野は、印刷技術の発達や雑誌、メディアの媒体によって目覚ましく発展し、新たな芸術の幕開けを社会に伝達し、浸透させる大きな役割を担いました。
本展は、京都国立近代美術館が、2015年に収蔵したもので、このコレクションは、もとはアパレル会社キャビンの創業者である平明暘氏が蒐集したものです。
1897年のウィーン分離派結成から、1914年の第一次世界大戦勃発までのウィーンでの新しい芸術、グラフィックなど、約300件もの膨大なコレクションが一挙に公開されます。
また、同じく平明暘氏旧蔵のリヒャルト・ルクシュによる石膏彫像も世紀末ウィーンの貴重な芸術作品ですので、この機会にお見逃しなく足をお運びください。
また、本展は2019年、日本とオーストリアが修好150 周年を迎えるにあたっての記念すべき展覧会となっております。
ウィーンの新しい時代の風を感じさせ、今の時代でもなお新鮮なアートデザインの数々を是非、ご堪能ください。
それでは、シネフィル上でも「世紀末ウィーンのグラフィック」展のいくつかの作品を展覧会と同じく、4つの章に分けてご紹介いたします。

1 ウィーン分離派とクリムト 

美術史をさかのぼってみると、ルネッサンス期の王侯貴族の肖像画や宗教画から始まって、
バロックや、市民の生活を反映した風俗画、光を受けた色彩豊かな印象派、より深い人の心を描く表現主義など、いくつかの改革があり、やがて、より人々が共感し、生き生きと表現された芸術が生まれているように感じます。
ウィーンでも1867年に、「時代にはその芸術を、芸術にはその自由を」という有名なモットーを掲げて、ウィーン分離派(正式名称;オーストリア造形芸術家協会)が結成されました。
彼らは新しい時代に合った芸術、デザインの刷新を求め、展覧会活動をし、『ヴェル・サクルム(聖なる春)』という機関誌の刊行を行いました。
この章では、ウィーン分離派の中心人物となるクリムトとその後継者であるエゴン・シーレとオスカー・ココシュカの素描作品などが紹介されています。

グスタフ・クリムト《ウィーン分離派の蔵書票》1900年頃 京都国立近代美術館所蔵

グスタフ・クリムト《右向きの浮遊する男性裸像》(ウィーン大学大広間天井画《哲学》のための習作)1897-99年  京都国立近代美術館所蔵

2 新しいデザインの探求

カラー印刷の技技術や写真製版技術の発達により、デザイン刷新のためにいろいろな図案集が刊行されました。
カール・オットー・チェシュカやコロマン・モーザーが制作に参加した《泉(Die Quelle)》シリーズや、ベルトルト・レフラーによる《ディ・フレッヒエ(平面)》で提案された図案は現代においても新鮮なものです。
人々を魅了する多彩な図案のデザイナーを輩出したウィーン工芸学校、その活躍の場であるウィーン工房にもスポットが当てられています。
さらに建築家たちの新たな取り組みをオットー・ヴァーグナー、ヨーゼフ・ホフマン、そしてアドルフ・ロースらの素晴らしい作品でご覧いただけます。

ベルトルト・レフラー(編)『ディ・フレッヒェ(平面)-装飾デザイン集 第Ⅱ巻』1910/11年 京都国立近代美術館所蔵

表紙・装丁:カール・オットー・チェシュカ『キャバレー〈フレーダーマウス〉上演本』第1号 1907年 京都国立近代美術館所蔵

表紙:モーリツ・ユンク、装丁:カール・オットー・チェシュカ 『キャバレー〈フレーダーマウス〉上演本』第2号 1907年 京都国立近代美術館 所蔵

3 版画復興とグラフィックの刷新

19世紀の写真の発明は、それまでの版画の役割を大きく揺るがすものとなってしまいましたが、版画の芸術性を高めることになりました。
西洋でも日本の浮世絵や東海道五十三次などの多色木版画が注目されていましたが、ウィーンでも木版画やリトグラフなど多様な版画手法における試みが見られるようになり、版画が人々の生活を彩ることになりました。

ルートビィヒ・ハインリヒ・ユンクニッケル《三羽の青い鸚鵡》(連作「シェーンブルンの動物たち」より)1909年頃 京都国立近代美術館所蔵

カール・モル《ハイリゲンシュタットの聖ミヒャエル教会》1903年 京都国立近代美術館所蔵

4 新しい生活へ

グラフィックにおける新たな試みは当時盛んに刊行されるようになった美術雑誌や、物語の挿絵など様々な媒体を通して人々の生活に浸透していきました。
ポスターやカレンダー、蔵書票など日常生活に関わるグラフィックの、魅力あふれる新しいデザインが紹介されています。

「時代にはその芸術を、芸術にはその自由を」という志を掲げ、新しい芸術を探求した若き芸術家たちの情熱には本当に感動させられました。
「世紀末ウィーンのグラフィック」展をこの機会に是非、ご堪能ください。

フェルディナント・アンドリ《ライ麦おばさん》(アウグスト・コピッシュ『精選詩集』 「ゲルラハ青少年叢書 第13巻」のための挿絵)1903年頃  京都国立近代美術館所蔵

フランツ・フォン・ツューロウ 《月刊帳》 1915年3月版 1915年  京都国立近代美術館所蔵

東京展 展覧会概要

会期:2019年4月13日〜6月9日
 
会場:目黒区美術館 東京都目黒区目黒2-4-36
 
電話番号:03-3714-1201
 
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
 
料金:一般 800円 / 大学・高校生、65歳以上 600円 / 中学生以下無料
 
主催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団 目黒区美術館、京都国立近代美術館

東京展 関連イベント

講演会①「世紀末ウィーンとグラフィック ― 総合芸術に見る民主化の試み」
日時:2019年4月20日 14:00~15:30
講師:池田祐子(国立西洋美術館主任研究員、本展企画者

講演会②「世紀末ウィーンの社会と文化」
日時:2019年5月12日 14:00~15:30
講師:山之内克子(神戸市外国語大学教授[オーストリア、ウィーン文化史])
大人のための美術カフェ〈特別編〉「様式のない時代は可能か―世紀末ウィーンの建築から考える」
日時:2019年5月26日 14:00~15:30
講師:本橋仁(京都国立近代美術館特定研究員)
※各回とも定員70名(先着順)、聴講無料(要当日有効の観覧券)

世紀末ウィーンのグラフィック展@東京 cinefil チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、世紀末ウィーンのグラフィック展@東京 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上10組20名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2019年5月12日 24:00 日曜日 

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
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7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます