ゴージャスな金色が印象的で、華麗で優美、そして官能的な女性像を描いたことで知られるクリムトの展覧会が、いよいよ4月23日(火)~7月10日、東京都美術館において開催されます。
約30年ぶりとなる待望の「クリムト展 ウィーンと日本 1900」では、過去最多の25点のクリムトの油彩画が集結します。
ファンの方はもちろん、そうでない方も、一見の価値のある見ごたえのある展覧会です。
そして、本展は、日本とオーストリアの友好150周年を記念するイベントのひとつであり、昨年のクリムト没後100年の記念展覧会でもあります。
19世紀末ウィーンを代表するグスタフ・クリムト(1862-1918)は、豪華絢爛な色彩と、これまでにない新しい革新的なデザイン性、そして、世紀末的な官能性を併せ持った不思議な芸術世界を創り出しました。
19世紀末ウィーンとは、「世紀末ウィーンのグラフィック」展でもご紹介しましたように、「19世紀末、史上まれにみる文化の爛熟を示したオーストリア=ハンガリー帝国の首都ウィーンで繰り広げられた、新しい時代に向けた芸術やデザインの革新運動」のことです。(参照 ウキペディア)
「時代にはその芸術を、芸術にはその自由を」という志を掲げ、古い伝統を打ち破り、新しい時代に向けた芸術を模索し、創り出した芸術家たちの情熱には感動させられます。
この革新運動の中心人物がクリムトだったのです。
クリムトらしい「黄金様式」の時代の《抱擁》、《接吻》そして今回来日する《ユディトⅠ》などは、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
いまなお、世界中の人々を魅了するクリムトの世界を是非、ご堪能ください。
妖艶な美女を描いたイメージのクリムトですが、今回の「クリムト展 ウィーンと日本 1900」では、可憐な少女を描いた《ヘレーネ・クリムト》や、緑の美しい風景画《アッター湖畔のカンマ―城 Ⅲ》、人間が生まれてから死ぬまでの「生命の円環」を主題とした《女の三世代》、そして、ベートーヴェンの「第九」に着想を得て、幸福を求めて敵に向かい、楽園にたどり着くまでをドラマテックに表現した《ベートーヴェン・フリーズ》など、様々なクリムトの絵画がご覧いただけます。
《ベートーヴェン・フリーズ》は、全長34メートルを超える壁画で、壮大なスケールです。
本展では、1984年に制作された精巧な原寸大の複製により、その壮大なスケール、迫力を体感してみてください。
金箔や真珠層の輝きと鮮やかな色彩が織りなすクリムトならではの大壁画です。
今回、クリムトの展覧会でスペシャルポーターに就任された俳優の稲垣吾郎さんも、自身の舞台「No.9 -不滅の旋律-」でベートーヴェン役を演じられ、「《ベートーヴェン・フリーズ》の原寸大壁画のある空間に身を置くことが待ち遠しい」と述べられています。
稲垣さんの音声ガイド初挑戦も楽しみです。
では、シネフィル上でもいくつかの作品を見ていきましょう。
クリムトの描く魅惑の世界を「官能」、「真理」、「歓喜」、「可憐」、「艶麗」、「生命」、
「爽涼」、「内省」に分けて鑑賞していきましょう。
  
  

官能を描く

グスタフ・クリムト《ユディトⅠ》 1901年 油彩、カンヴァス 84×42cm ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll

クリムトの「黄金様式」の時代の代表作のひとつです。
黄金色は本物の金箔で、クリムトによって、油彩画に初めて本物の金箔が使われました。
額縁もクリムトのデザインによるものです。
旧約聖書外典の「ユディト記」によると、美しい未亡人ユディトは、祖国を救うために、敵将ホロフェルネスの首を切り落としたといわれています。
どんな困難にも屈しない女性の強さを誇示し、彫刻や絵画に取り上げられてきました。
ですが、ここでは、女性がもたらす危険な誘惑に対する警告を表しています。
恍惚とした表情を浮かべ、裸身をさらすユディトの匂いたつような官能性。魅力的な女性として描かれています。
  
  
   

真理を描く

グスタフ・クリムト《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》 1899年 油彩、カンヴァス 244×56.5cm オーストリア演劇博物館 © KHM-Museumsverband, Theatermuseum Vienna

足元に蛇を巻き付け、生まれたままの姿の豊かなブロンド女性の髪の女性が、右手に持った鏡を鑑賞者に向けています。
鏡は、古来よりすべての「真実」のシンボルとされていました。
この作品は、伝統的な表現方法を用いながらも、ヌードを描いた斬新な芸術です。
1897年ウィーン分離派結成の直前に構想された作品です。
世紀末の美術や芸術では、「ファム・ファタル(宿命の女)」が好んで取り上げられました。男を誘い、虜にする魔性の女の権化でした。
クリムトの描いた《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》も魅力的に描かれていて、ファム・ファタルの要素があるようです。
   
  

歓喜を描く

グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》(部分)1984年(原寸大複製/オリジナルは1901-1902年) 216×3438㎝ ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll

グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》(部分)1984年(原寸大複製/オリジナルは1901-1902年) 216×3438㎝ ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll

全長34メートルを超える壁画は、クリムト40歳頃の大作です。
黄金の甲冑を身にまとった騎士が、人生の幸福を求めて敵に向かい、楽園にたどり着くまでが絵巻物のように描かれています。ベートーヴェン交響曲,第9番に着想を得たこの壁画は天使たちによる合唱と男女の接吻で集結します。
  
  
  

可憐を描く

グスタフ・クリムト《ヘレーネ・クリムトの肖像》1898年 油彩、厚紙 59.7×49.9cm 個人蔵(ベルン美術館寄託) Kunstmuseum Bern, loan from private collection

クリムトの弟エルンストの娘ヘレーネが6歳の時の肖像画です。
姿勢を正して前方を見つめるその姿は大人びて見えます。
正確に横顔をとらえた表現は、1898年の第一回ウィーン分離派展で高評価だったフェルナン・クノッブフの肖像画に影響を受けたものとみられています。
  
  
  

艶麗を描く

グスタフ・クリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》1913/1914年 油彩、カンヴァス 140×85cm 豊田市美術館

モデルとなっているのは、ウィーン工房の主要なパトロンの一人銀行家のオットー・プリマフェージの妻です。
色鮮やかな東洋風のモチーフを伴う抽象的な背景に、華やかな衣装の女性が配されたこの作品はクリムトの後期肖像画の特徴を示す重要な一点です。
1910年代このような色彩豊かな女性像を大胆な筆致で描いていたクリムトは、1911年のローマ国際美術展で大賞を獲得し、名実ともに確固たる地位を築きました。
  
 
    

生命を描く

グスタフ・クリムト《赤子(ゆりかご)》1917/1918年 油彩、カンヴァス 110.9×110.4cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Gift of Otto and Franciska Kallir with the help of the Carol and Edwin Gaines

新しい生命の象徴である赤ん坊を描いた作品。
晩年のクリムトは、多彩なフォルムと色彩に満ちた作品を描いています。
積み重ねられた布がダイナミックな画面を構成し、奥行きをも感じさせる効果になっています。
豊かな色彩を用いた装飾的な画面は、フォークアートから、色とりどりの布の柄は日本の着物から、ヒントを得たものと考えられています。
  
  
  

グスタフ・クリムト《女の三世代》 1905年 油彩、カンヴァス 171×171cm ローマ国立近代美術館 Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea, Roma

《女の三世代》はローマ国立近代美術館所蔵の作品で、縦横約170cmと、壁画などを別にすれば、クリムト最大の絵画のひとつで、その完成度も極めて高い傑作です。
今回、日本初公開となります。(ローマ国立近代美術館調べ)
この作品はクリムトが深い関心を寄せた「生命の円環」をテーマに人間の一生を、幼年期、青年期、老年期の3段階に分け、寓意的に表したものです。
安らかに眠る幼児を優しく胸に抱く、若く美しい裸体の女性は、夢見るかのように目を閉じています。
頭部から身体をつたって流れるような装飾的モティーフで飾られた姿は生命の美しさ、輝きを表現しています。
一方、背後には、年老いた女性がうなだれ、老醜を恥じるかのように、顔を覆っています。3人の背後に立ち上がるのは、灰色と黒の壁で、生あるものには不可避の死、あるいは滅びの象徴を表現しているのでしょう。
ムンクの《生命のフリーズ》を彷彿させます。
  
  

爽涼を描く

グスタフ・クリムト《アッター湖畔のカンマー城III》 1909/1910年 油彩、カンヴァス 110×110cm ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll

19世紀末、オーストリアのザルツカンマーグート地方にあるアッター湖は、夏季滞在地として多くの画家が訪れていました。
クリムトはこの地に建つカンマ―城をたびたび描いています。
建築物と自然が対比して描かれているだけではなく、建物や樹々が水面に反射して、美しく、クリムトが好んだ正方形の構図が、緻密に描かれています。
  
  

内省を描く

グスタフ・クリムト《マリー・ヘンネベルクの肖像》 1901/1902年 油彩、カンヴァス 140×140cm ザクセン=アンハルト財団、モーリッツブルク・ハレ州立美術館 Kulturstiftung Sachsen-Anhalt, Kunstmuseum Moritzburg Halle(Saale), Germany

青みがかった正方形の画面の中で、右手を顎に添えて物憂げな表情でこちらを見つめる女性が描かれています。
クリムトや芸術仲間とも親しかった女性は、モードサロンのおしゃれなデザインのドレスを身にまとい、印象派の手法を思わせる背景に溶け込むように、ソファーに腰かけています。
同年に描かれた《ユディトⅠ》と比べると、女性の魅力がそれぞれ違っていて、クリムトは多種多様な表現で、女性の内面の魅力を画面に引き出すようになったことがわかります。

みなさま、いかがでしたでしょうか。
この春、東京都美術館を訪れて、クリムトの描く魅惑の世界を、是非、ご堪能ください。

展覧会概要

会 期:2019年4月23日(火)〜 7月10日(水)
 
休室日:5月7日(火)、20日(月)、27日(月)、6月3日(月)、17日(月)、7月1日(月)
 
開室時間:午前9時30分~午後5時30分 ※金曜日は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで)
 
会 場:東京都美術館 企画展示室 〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
 
主 催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、朝日新聞社、TBS、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
 
後 援:オーストリア大使館、オーストラリア文化フォーラム
 
協 賛:ショップチャンネル、セコム、損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、竹中工務店、トヨタ自動車、三菱商事、パナソニック、みずほ銀行
 
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
 
<巡回情報>
会 期:2019年7月23日(火)〜 10月14日(月・祝)
 
会 場:豊田市美術館(愛知県豊田市)
 
報道に関するお問い合わせ先: 「クリムト展」広報事務局(共同PR内)担当:三井、谷川
TEL: 03-3575-9823 / FAX: 0120-653-545(平日のみ:10時〜16時)
E-mail: klimt2019-pr@kyodo-pr.co.jp
〒104-8158 東京都中央区銀座7-2-22 同和ビル

クリムト展 ウィーンと日本1900@東京 cinefil チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、クリムト展 ウィーンと日本1900@東京 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2019年5月26日 24:00 日曜日 

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
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