マルグリット・デュラスの小説「苦悩」を映画化した『あなたはまだ帰ってこない』が、1月23日(水)に発表された第44回セザール賞(フランス)に、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞等の主要8部門にノミネートされました。

フランス映画芸術技術アカデミーが主催するセザール賞は、フランスの米アカデミー賞と称され、フランス映画界では最も権威のある重要な賞。
今回、「あなたはまだ帰ってこない」は、作品賞をはじめ、監督賞(エマニュエル・フィンケル)、主演女優賞(メラニー・ティエリー)、脚色賞、撮影賞、衣装賞、美術賞、音楽賞の主要8部門にノミネートされました。
2010年にセザール賞有望若手女優賞を受賞したメラニーは、フランス文学界を代表するマルグリット・デュラスを演じた本作で、初の主演女優賞を受賞するか注目が集まっています。

本作の原作となる小説「苦悩」は、ナチス占領下のパリで、マルグリット・デュラスがレジスタンス活動のため捕虜となった夫の帰還を待ち続ける心情を日記につづった作品です。
これまでに「二十四時間の情事」(1959)、「かくも長き不在」(1960)、そして「愛人/ラマン」(1992)等、デュラスの小説は数多く映画化されてきたが、映像化不可能と言われ続けた「苦悩」が映画化されたのは今回が初めてとなります。
ジャン=リュック・ゴダールやクシシュトフ・キシェロフスキ等の助監督を務めたエマニュエル・フィンケル監督は、光と影、言葉と沈黙、街の雑踏と音楽を織りなし、本作を完成させました。

日本公開を先駆け本作をいち早く鑑賞した作家や文学者、映画監督等の言葉に携わるプロフェッショナルからも絶賛のコメントが寄せられています。

<コメント一覧>

◆堀江敏幸(作家)

デュラスの小説では、人ではなく言葉が口を閉ざす。この映画にあふれているのも、口を閉ざした言葉たちだ。

◆金原ひとみ(作家)

完全なる乖離、完全なる観察者、見つめるその視線だけが彼女の生。
こんなにも無垢で壮絶な生き方があるだろうか。

◆小野正嗣(作家)

愛する者の帰還を信じ、待つこと——
しかし、それは決して受動的な行為ではない。
希望、疑念、怒り、そして言葉にされえない苦悩と優しさで、画面が静かに震えている。

◆村上香住子(エッセイスト)

生きて、愛して、苦悩する。不安の中で愛するひとを待ち、
愛の芽生えに流される女心。揺れる大人の愛の珠玉作。

◆鹿島茂(フランス文学者・作家)

「待つことの不安」というデュラスの本質の見事な映像化!

◆行定勲(映画監督)

愛する人の長き不在に苦悩するマルグリット・デュラスを通し、最前線ではない戦場に生きる人間の苦しさと切実さが生々しく描かれている。狂おしく張り詰めたデュラスの感情は、女性の本質を露わにし美しくも愚かである。

 第44回セザール賞は、2月22日(現地時間)にて発表となります。

『あなたはまだ帰ってこない 』予告編

マルグリット・デュラスの自伝的原作を映画化『あなたはまだ帰ってこない 』予告編

youtu.be

【ストーリー】 
1944年、ナチス占領下のフランス。若く優秀な作家マルグリット(メラニー・ティエリー)は、夫のロベール・アンテルム(エマニュエル・ブルデュー)とともにレジスタンス運動のメンバーとして活動していた。ある日、夫がゲシュタポに逮捕される。マルグリットは夫を取り戻すためにゲシュタポの手先のラビエ(ブノワ・マジメル)の力を借り、恐ろしい危険に身を投じることを決意する。愛する夫の長く耐えがたい不在はパリの解放後も続き、心も体もぼろぼろになりながら夫の帰りを待つマルグリットだったが…。 フランスの小説家マルグリット・デュラスの若き日の、愛と苦悩を綴った原作を基に描く壮大な愛の物語――。

監督・脚本:
エマニュエル・フィンケル

出演:メラニー・ティエリー『ザ・ダンサー』『海の上のピアニスト』、ブノワ・マジメル『ピアニスト』、バンジャマン・ビオレ『パーソナル・ショッパー』

グレゴワール・ルプランス=ランゲ『キリマンジャロの雪』、エマニュエル・ブルデュー

原作:マルグリット・デュラス「苦悩」
原題:La Douleur  
2017年/フランス・ベルギー・スイス/フランス語/126分/ビスタ  
配給:ハーク

2月22日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開!