【記者会見】
Q:この映画の魅力、暴力に懐疑心がテーマだと思うのですが、一方で暴力描写が魅力的にも描かれているようにも思いました。その両義性がこの映画の面白いところだと思いますが、監督はどのようにお考えですか?
監督:『野火』はひたすら戦争の恐ろしさ、暴力を見せてうんざりだと思わせる作品でした。今度の映画はそうゆうわけではありませんが、僕の演じた役は今までの時代劇では、むしろ拍手喝采を送りたくなるような人物です。でもこの映画では、いい人として見終えるかどうかはかなり疑問があります。そうではないと思っています。そこは大事なところで、今までの時代劇とかヒロインには懐疑的な疑問を皮肉的に投げかけています。相手をやっつけて立ち上がるシーンは、自分で編集していても「ヨッシャー!」という気持ちになるんですが、多分お客さんもそういう気持ちになると思います。そういう気持ちで見てる人に段々と刃が突き刺さってくるような、そんな映画にできればと思っています。
Q:キャストの2人にお聞きします。これまで塚本監督の作品をご覧になって、どんな監督だと思っていましたか?実際にお仕事をしてどんな印象をお持ちになりましたか?
蒼井:役者を志す前に、すでに芸能事務所には所属していたのですが、私の家では映画を全く観ずに、クラシックバレエやクラシックコンサートなどにしか関わることができなかったので、お金がないのにお小遣いをためて、近所のレンタルビデオ屋さんでかたっぱしから映画を観ていました。『双生児』がその中の1本で、岩井俊二監督の『ピクニック』、坂本順治監督の『顔』、そして塚本監督『双生児』、この三本で私は自分が知らないこんにも面白い世界があったんだと、心が震えました。映画の世界に憧れを抱くことができました。塚本監督とお仕事ができるとは思いもしなかったです。音楽室に飾られているバッハの絵と変わらないくらい遠い存在で、日本映画界にいても、ものすごく遠い存在だったので、今回お話いただいてすごく怯みました。
■レッド・カーペットRed Carpet
■17:00より 公式上映 Official Screening
場所:SALA GRANDE
参加者:塚本晋也監督、池松壮亮、蒼井優、前田隆成
公式上映
朝から降っていた雨が奇跡的にあがり、公式上映前のレッド・カーペットがスタートした。まずヴェネチア国際映画祭初参加となった池松壮亮が車から降りると待ち構えていた観客たちから歓声がわき、続く車両でヒロイン・蒼井優がピンクベージュ色の柔らかいドレスで華やかに登場、その後塚本晋也監督と新人俳優前田隆成が到着すると喝采がより大きくなった。会場前に詰めかけた多くの塚本ファンたちから「ツカモトー」と声をかけられると監督はサインや写真撮影に丁寧に答え、蒼井優の写真を持参しサインをお願いする外国人のファンも見られた。
満席となったメイン会場「SALA GRANDE」に、4人が入場すると大きな拍手が湧き起こり、監督・キャストの名前が読み上げられ、その後約1000人の観客と一緒に『斬、』を鑑賞。上映後、エンドロールが始まると大きな拍手が湧き起こり、約5分間にも及ぶスタンディングオベーションで熱烈に歓迎され、退場するまで拍手が鳴り止まないほどの盛り上がりをみせた。
塚本の熱い想いに応えるべく、文武両道で才気あふれる浪人を、渾身の力で演じたのは池松壮亮。昨年に主演した『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』は高い評価を受け、今年も『万引き家族』、『君が君で君だ』、『散り椿』など話題作への出演が続いている。浪人の隣人である農家の娘を演じるのは『彼女がその名を知らない鳥たち』や山田洋次作品で活躍し、日本アカデミー賞に4度輝いた演技派女優の蒼井優。
不穏な時代に精一杯生きる農家の娘を凛とした美しさで体現している。共に本作で初めて塚本作品への参加を果たした池松と蒼井のぶつかり合うような演技合戦も圧巻だ。