「モダン」とは詩人ボードレールの「モデルニテ(現代性)」という言葉から始まったものだ。
ボードレールによれば「モデルニテ」の定義とは、「一時的で、うつろい易いやすく、偶発的で、これらが芸術の半分をなし、他の半分が、永遠なもの、不易なものである」と。
(もちろんこの場合、L.カラックス『汚れた血』の挿入歌であるD.ボウイの『Modern Love』と解釈するのが正解であろうが、、、)
劇中登場する三つの世界は、通常はけっして交わらずパラレルワールドとして存在している。
しかし、そのうつろいやすい薄膜的な世界に裂目が生じ、互いに干渉してしまったならば、、、そのときはじめて永遠性というものを獲得できるのかもしれない。
惑星は定められた速度と軌道を保っている。人工衛星も同様である。
しかし、その速度と軌道が重なったときに「ランデブー」が起きる。
ふたりの人間の速度と軌道が重なったときに(=ランデブー状態)、「恋愛」という科学現象が生ずるとするならば、人間もまたある種の惑星であり、本来は「孤独な惑星」なのかもしれない。
うつろいやすい「恋愛」のランデブー状態や絶頂を永遠に留めるその方法とは、、、現代における永遠性の問題を真正面から捉えた力作である。
ヴィヴィアン佐藤(ドァグクイーン/美術家)
ヴィヴィアン佐藤 略歴
美術家、文筆家、非建築家、映画批評家、ドラァグクイーン、プロモーター。ジャンルを横断していき独自の見解で何事をも分析。自身の作品制作発表のみならず、「同時代性」をキーワードに映画や演劇など独自の芸術論で批評/プロモーション活動も展開。 野宮真貴、故山口小夜子、故野田凪、古澤巌など個性派のアーティストとの仕事も多い。2011年からVANTANバンタンデザイン研究所で教鞭をもつ。各種大学機関でも講義多数。
映画『モダン・ラブ』予告
[STORY]
「起きてないことはすべて、起こり得るってことだから。気づいてないだけで」
東京、現在。
NASAが太陽系内に生命体が存在する可能性のある新惑星・エマノンを発見したと発表。
衝撃的なニュースは世界中を駆け巡り、新惑星ブームが到来する。しかし人々の盛り上がりと裏腹に、異常気象が頻発するようになる。
旅行代理店でアルバイトをしながら、大学で理論物理学を専攻している大学院生・ミカ(稲村梓)は、5年前に失踪してしまった恋人・テル(高橋卓郎)のことが忘れられない。
彼女は一見普通の大学院生だが、出会い系アプリで男を漁り孤独を埋めつつ、妄想でテルと会話している。そんなミカの様子を、親友のゲイ・シゲ(芳野正朝)や、研究室の先輩・高山(佐藤睦)は心配している。
ある日、ミカは発作的に既視感を覚えるようになり、もう一人の自分と出会ってしまう。
互いに驚く二人のミカだが、どうすればいいかわからない。テルの親友・バード(今村怜央)に相談しに行くと、さらにもう一人のミカが現れ、それぞれが本来は違う世界線に存在するミカだということがわかる。パラレルワールドが交錯してしまっているのは、エマノンの影響かもしれない、とバードは語る。
テルが失踪した世界のミカ、テルと出会い恋が始まる世界のミカ、そしてテルが既に死んでいる世界のミカ。三人はそれぞれの人生を変える選択を迫られる…。
「ここではないどこか、行けるところまで行ってみたい」
キャスト
稲村梓、高橋卓郎
芳野正朝、今村怜央、佐藤睦、ヤン・イメリック、川瀬陽太、町山博彦、
大木雄高、園部貴一、草野康太
脚本・監督:福島拓哉
プロデューサー:本井貞成、岩本光弘、福島拓哉
撮影監督:木村和行 撮影:難波俊三、川口紘 照明:高橋拓
サウンドディレクター:田中秀樹 美術:安藤秀俊、菊地実幸
衣装:森美幸、増渕麻衣 ヘアメイク:榎本愛子 VFX:菊地実幸、助監督:渡辺イチ
制作主任:板部文 音楽:トルコ石、河原弘幸(floating mosque)
協賛:メディックメディア、PARIBAR
宣伝・配給:P-kraft 宣伝協力:Tokyo New Cinema
製作:P-kraft、ラフター
2018年 / 115min / カラー / 4K/ 日本語、英語、スペイン語