1976年7月15日にドイツのハノーバーで生まれたダイアン・クルーガーは、バレリーナを目指し、ロンドンのロイヤル・バレエ・スクールで学んでいたが、怪我のために断念。ドイツ&とパリでファッションモデルとして活動する傍ら、パリの有名な俳優学校ル・クール・フローランで演技を学び、同校の優秀な生徒に与えられるクラッセ・リプレ賞を受賞する。

2002年、ジャン=ピエール・ルー監督の「ザ・ターゲット」でスクリーンデビューを飾り、前年に結婚したフランスの人気俳優ギヨーム・カネ(2006年に離婚)の長編初監督作「僕のアイドル」(映画祭上映)でカネと共演した彼女は、翌2003年には『ミシェル・ヴァイヨン』に出演。同年のカンヌ国際映画祭で将来有望な俳優や女優に贈られるショパール・トロフィーを受賞した。

2004年、ブラッド・ピット主演の歴史スペクタクル『トロイ』(ウォルフガング・ペーターゼン監督)の絶世の美女・王妃ヘレン役に大抜擢されてハリウッドに進出するや、同じ年にニコラス・ケイジ主演、ジョン・タートルトーブ監督の『ナショナル・トレジャー』、『ホワイト・ライズ 』『ナルコ』と立て続けに話題作に出演し、国際的なブレイクを果たす。

以降、その際立った美貌と流暢に操れるフランス語と英語を武器にして、ハリウッドとヨーロッパを股にかけて活躍。2007年にはカンヌ国際映画祭の開会式&閉会式の司会、2008年にはベルリン国際映画祭の審査員を務めており、2009年に出演したクエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』では、全米映画俳優組合賞助演女優賞にノミネートされている。

その他の主な出演作は、『戦場のアリア』(05年)、『敬愛なるベートーヴェン』(06年)、『マンデラの名もなき看守』(07年)、『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』(07年)、『すべて彼女のために』(08年)、『ミスター・ノーバディ』(09年)、『アンノウン』(11年)、『マリー・アントワネットに別れをつげて』(12年)、『バツイチは恋のはじまり』(12年)、『パパが遺した物語』(15年)など。

そして、意外にも母国語であるドイツ語での演技を初めて披露し、カンヌ国際映画祭女優賞に輝いた最新作が、4月14日に公開される『女は二度決断する』だ。監督は、『愛より強く』(04年)でベルリン国際映画祭金熊賞、『そして、私たちは愛に帰る』(07年)でカンヌ国際映画祭脚本賞、『ソウル・キッチン』(09年)でのヴェネチア国際映画祭審査員特別賞と、世界三大映画祭での受賞歴を誇るドイツの名匠ファティ・アキン。

実際に起きたネオナチの連続爆破テロから着想を得た本作は、ドイツ北部のハンブルクを舞台に、人種差別テロでトルコ移民の夫と一人息子を奪われたドイツ人女性カティヤの苦悩と、彼女が絶望の中で下す決断を描いたサスペンスフルな復讐劇で、突然の悲劇に見舞われ、気丈ながらもやつれ果てていくヒロインをダイアン・クルーガーが大熱演。自身がトルコ移民二世であるファティ・アキン監督が共同脚本も務めた渾身作である。

『女は二度決断する』がワールドプレミアされた昨年のカンヌ国際映画祭(5月26日:現地時間)の公式記者会見には、ファティ・アキン監督とプロデューサー2名、カティヤ役のダイアン・クルーガーと弁護士役のデニス・モシットが登壇。そして夫役のヌーマン・アチャルとスタッフたちが記者席の最前列に陣取り、会見を見守った。

カンヌでワールドプレミアされた『女は二度決断する』の公式記者会見(5/26:現地時間)
Photo by Yoko KIKKA

だが、その公式記者会見は、つい3日前の22日に発生したマンチェスターのテロ事件の衝撃が醒めやらぬ中で行われたため、“報復”についての問いを発した英国BBCの記者を始め、テロ関連に結び付けた欧州記者の質問が続いてしまったが、ファティ・アキン監督は本作について「リベンジ物というよりも家族映画」として楽観的に捉えたいとコメントしている。

そして映画祭最終日の授賞式(5月28日:現地時間)に、エレガントな装いで登壇したダイアン・クルーガーは、感激の面持ちで映画祭ディレクターと審査員団に謝意を伝え、「カンヌにはとても思い入れがあるの」と述べた後、客席で彼女の受賞に小躍りしているファティ・アキン監督に対して“マイ・ブラザー”と呼びかけ、「私を信じてくれてありがとう。私の内なる強さを引き出してくれたこの映画は一生の宝物です」と感謝し、テロの被害者に心を寄せている旨を告げた。

ドイツ語映画に初出演したダイアン・クルーガー Photo by Yoko KIKKA

授与された盾を手に受賞者会見に臨むダイアン・クルーガー Photo by Yoko KIKKA

カンヌの会見(左よりダイアン・クルーガー、ファティ・アキン監督、デニス・モシット)
Photo by Yoko KIKKA

受賞の喜びを語るダイアン・クルーガー Photo by Yoko KIKKA

そして今年の3月、ダイアン・クルーガーは自信作『女は二度決断する』のプロモーションを行うべく11年ぶりに来日! 体を張った気迫あふれる演技で新境地を開いた本作は、彼女にとって、まさしく代表作となるに違いない。
(Text by Yoko KIKKA)

吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
シネフィルでは「フォトギャラリー」と気になるシネマトピックをお届け!

ファティ・アキン監督最新作『女は二度決断する』予告

日本のファンへのダイアン・クルーガーのコメント入り『女は二度決断する』予告

youtu.be

監督:ファティ・アキン
出演:ダイアン・クルーガー、デニス・モシット、ヨハネス・クリシュ、ヌーマン・アチャル、ウルリッヒ・トゥクール
2017/ドイツ/106 分
提供:ビターズ・エンド、WOWOW、朝日新聞社
配給:ビターズ・エンド
©2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathé Production,corazón international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment GmbH

4/14(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町 新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー!