アルゼンチン出身の現代アーティスト、レアンドロ・エルリッヒの過去最大規模となる個展「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」が、11月18日に森美術館でスタートしました。日本では金沢21世紀美術館に恒久設置された《スイミング・プール》の作家としても知られています。

内覧会に登場したレアンドロ・エルリッヒ本人。
photo©cinefil:ms

鑑賞者が実際に作品の一部として参加できる体験型の大型インスタレーションをはじめとする44点の作品が紹介され、その8割が日本初公開です。エルリッヒの四半世紀にわたる活動の全容を紹介する、世界でも過去最大規模の個展です。作品を通してわたしたちは、見るという行為の曖昧さを自覚し、惰性や習慣、既成概念や常識などを取り払い、曇りのない目で物事を「見る」ことで、新しい世界が立ち現われてくることを、身をもって体験することになるでしょう。


《眺め》 The View 1997/2017
12 チャンネル・ビデオ・インスタレーション、プロジェクター 12 channel video installation, projector
サイズ可変| Dimensions variable
各約10 分(ループ) approx. 10 min. each (loop)
photo©cinefil:ms

《眺め》 The View 部分の拡大。
photo©cinefil:ms

一連の「雲」が並ぶ部屋。
photo©cinefil:ms

《雲(日本)》The Cloud (Japan) 2016
高透過ガラス、セラミック・インク、木材、照明 Ultra clear glass, ceramic ink, wood, light 199.5 × 205 × 81 cm
作家蔵| Collection of the Artist
Courtesy: Sean Kelly Gallery and Art Front Gallery
photo©cinefil:ms

《雲(フランス)》The Cloud (France) 2016
高透過ガラス、セラミック・インク、木材、照明 Ultra clear glass, ceramic ink, wood, light 199.5 × 160 × 81 cm
作家蔵| Collection of the Artist
Courtesy: Sean Kelly Gallery and Art Front Gallery
photo©cinefil:ms

《雲(日本)》を横から見たところ。
photo©cinefil:ms

写真撮影が可能!“インスタ映え” する大規模で建築的なインスタレーション作品

エルリッヒの作品の中でも特に人気がある「建物」シリーズが、本展にも登場します。これは、観客が床に置かれた建物のファサード(壁面)に寝転がって思い思いのポーズをとると、鏡の効果で、まるで重力に逆らったようなアクロバティックな体勢で、壁や窓枠にしがみついているかのような光景が生まれる、大規模な体験型インスタレーション作品です。作品の一部になった自分自身の不思議な姿を、写真に撮って楽しむこともできます。

《建物》のインスタレーション。大人気です。
photo©cinefil:ms

見慣れた風景に僅かでも認識の“ずれ”が生じると、人は突如として違和感を覚えます。エルリッヒの作品は、私たちが当たり前のこととして疑いもせずに受け止めている現実の中に、不思議で奇妙な空間を提示することで、私たちに「現実」とは何かを再考する機会を与えます。展覧会を通して、習慣や既成概念がいかに私たちの認識に影響を与えているかに気付くことで、鑑賞後の世界も今までとは違って見えることでしょう。

面白いのが、インスタレーション作品の記録写真と、その作品検討の模型が並置されているところ。建築模型とも違う不思議な模型のつくり込みが、実作品の違和感を想像させます。

《スイミング・プール [記録写真]》 Documentation Photography of The Swimming Pool 2014
インクジェットプリント| Inkjet print 85.3 × 60.3 cm
写真:木奥恵三| Photo: Kioku Keizo
画像提供:金沢21 世紀美術館
Photo Courtesy: 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa
photo©cinefil:ms

《スイミング・プール[模型]》 The Swimming Pool [model] 1999
プラスチック、高透過アクリル Plastic, clear textured acrylic 25.2 × 46 × 25.2 cm
作家蔵| Collection of the Artist
photo©cinefil:ms

《根こそぎ引っ張られてⅡ》 Pulled by the Roots II 2015
インクジェットプリント| Inkjet print 66.5 × 85.3 cm
Courtesy: Sean Kelly Gallery and Art Front Gallery
photo©cinefil:ms

《根こそぎ引っ張られて[模型]》 Pulled by the Roots [model] 2015
鋳造樹脂、鋳造ブロンズ、アクリル、プリント Cast resin, cast bronze, acrylic, print 70 × 34 × 34 cm
作家蔵| Collection of the Artist
photo©cinefil:ms

作品の背後に込められた、社会的メッセージと批評性

老若男女、誰もが楽しめるエルリッヒの作品ですが、その背景には社会的メッセージが込められています。《シンボルの民主化》は、ブエノスアイレスの街の中心にそびえるオベリスクをテーマにしていますが、権力の象徴である建造物を一般市民に開放したプロジェクトとして話題になりました。また、本展のための新作《教室》は、廃墟化した教室に自分の姿が亡霊のように映り込む作品で、日本が抱える少子化や過疎化などの問題を示唆し、観客にその未来像を考えさせます。

《教室》 The Classroom 2017
木材、窓、机、椅子、ドア、ガラス、照明 Wood, window, desk, chair, door, glass, light  1220 × 550 × 430 cm
photo©cinefil:ms

日本初公開の《試着室》。
まるで迷路のような体験型のインスタレーションです。試着室の中に入ると、前方と左右に姿見が。しかし自分の姿は映っておらず、代わりにどこまでも試着室が続いています。試着室を彷徨う中で、自分が鏡の外と内のどちらにいるのか、自己と他者の区別さえも曖昧になっていきます。内覧会では鑑賞者が鉢合わせしながら、彷徨っていました。

《試着室》 Changing Rooms 2008
パネル、フレーム、鏡、スツール、カーテン、照明 Panel, frame, mirror, stool, curtain, light
サイズ可変| Dimensions variable
Courtesy: Luciana Brito Galeria
photo©cinefil:ms

《試着室》の内観
photo©cinefil:ms

《試着室》の内観
photo©cinefil:ms

概要

レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル
会期:2017年11月18日(土)〜2018年4月1日(日) ※会期中無休
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53F
開館時間:10:00〜22:00 (最終入館 21:30)
※火曜日のみ、17:00まで(最終入館 16:30)
料金:一般 1,800円、学生(高校・大学生) 1,200円、子供(4歳ー中学生) 600円、シニア(65歳以上) 1,500円

主催:森美術館
後援:アルゼンチン共和国大使館
協賛:株式会社大林組、トヨタ自動車株式会社、株式会社コーエーテクモホールディングス、TRUNK(HOTEL)
制作協力:YKK AP株式会社
協力:シャンパーニュ ポメリー
企画:椿 玲子(森美術館キュレーター)

【問い合わせ先】
TEL:03-5777-8600

関連プログラム

https://www.mori.art.museum/jp/learning/keyword/cat114/index.html

レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル cinefil チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアルcinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2018年1月7日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。