新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国で大ヒット中の映画『エンドレス・ポエトリー』の公開を記念し、11 月 29 日(水)の渋谷アップリンクでは、映画・美術評論家の 滝本誠さんと映画評論家・特殊翻訳家の柳下毅一郎さんが登壇、熱いトークが繰り広げられました。

【イベント概要】
■日時:2017 年 11 月 29 日(水)
■会場:アップリンク渋谷 (東京都渋谷区宇田川町 37-18 トツネビル 1F)
■ゲスト:滝本誠(映画・美術評論家)、 柳下毅一郎(映画評論家・特殊翻訳家)

アレハンドロ・ホドロフスキー監督の最新作『エンドレス・ポエトリー』の公開記念イベントが 29 日、アップリンク渋谷で行なわれ、ゲストに映画・美術評論家の滝本誠氏と映画評論家・特殊翻訳家の 柳下毅一郎氏が登壇。「ホドロフキーの世界」について熱く語った。

本作は、ホドロフスキー監督自身の青春時代を描いた自伝的映画。青年期の葛藤や父との確執、初恋や友情を瑞々しく描いた作品。

左より滝本誠(映画・美術評論家)、 柳下毅一郎(映画評論家・特殊翻訳家)

ホドロフスキーによる、半世紀にわたるタロット研究の集大成『タロットの宇宙』(国書刊行会刊)に
解説をよせている滝本氏は、劇中のタロットのシーンで登場する2枚のカード 【15 番・悪魔】【17
番・星】の指す意味を「悪魔のカードは無意識の力、情熱、創造性を意味し、星のカードは“世界の中で行動すること、自分の場所を見つけること”を指します。それは映画の示す大きなテーマを意味し、映画の中でも明解に表現している。本当に素晴らしいですよね」とタロットの解説を交えながら本作を称賛。

一方、柳下氏は「ホドロフスキーの一番ヘンで面白いところは、普通の因果関係ではあり得ないことをやってのけること。よくホドロフスキー本人が“過去を変えることで、現在を変える”と言っていますが、本来変えられるはずのないものを、変えられるという融通無碍なものがホドロフスキーにはあって、しかも本人も信じているのも面白い。映画を観ていても“何が起こっているんだ!”っていう部分ですよね」とホドロフスキーの本質に言及。

今回の初来日で、移住したいほど日本を気に入ったというアダンについて滝本氏は「日本でいう(し)
という言葉には、詩と死という両方の意味がある。きっとアダンは誰かとのやりとりでこのことを知
り、それに驚いんたんじゃないかな。こういった話や日本で感じたインスピレーションが父親のホドロフスキーに届けられ回っていくんですよ」と説明した。

また、『リアリティのダンス』(文遊社刊)を読んだ時に深く感動したという柳下氏は「『エル・ト
ポ』や『ホーリー・マウンテン』を観ていた時は分からなかったが、(この自伝の映画化である)『リ
アリティのダンス』『エンドレス・ポエトリー』という作品はもはや涅槃。本来映画というのは、監
督、演出、俳優、ストーリー、脚色があって、というのが普通ですが、ホドロフスキーの映画はそういうことではない。自分の人生の体験と映画、舞台、詩が同じで、全てが一つになっている。まさに、ホドロフスキーが言う“人生を変えることで映画を変える、映画を作ることが自分の人生を変える”が自然に彼の中でつながっている」と述懐する。

2014 年ホドロフスキー来日時に対談した滝本氏「3年前にホドロフスキーにタロットリーディングを してもらった時に言われた事が、その後どんどん実現していっている。まるでホドロフスキーの手の上 で転がされているよう(笑)この歳になって、自分の中に何か燃え上がる魂みたいなものが出てきて、 それは間違いなくホドロフスキーから得たもの」とホドロフスキーから受けたパワーを自身の体験と交えて語った。

滝本誠(映画・美術評論家)、 柳下毅一郎(映画評論家・特殊翻訳家)

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【プロフィール】
滝本誠(たきもと・まこと)
1949 年京都生まれ。映画・美術評論家。著書に『きれいな猟奇―映画のアウトサイド』(平凡社)、 『渋く、薄汚れ。―ノワール・ジャンルの快楽』(フィルムアート社)、解説担当書にホドロフスキ― 『タロットの宇宙』(国書刊行会)がある。最新刊は『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』(幻戯書 房)。

柳下毅一郎(やなした・きいちろう)
1963 年大阪生まれ。映画評論家・特殊翻訳家。著書に『皆殺し映画通信』(カンゼン)、『新世紀読 書大全書評 1990-2010』(洋泉社)、訳書に『J・G・バラード短編全集』(東京創元社)、キャサリン・ ダン『異形の愛』(河出書房新社)などがある。有料映画ブログ〈柳下毅一郎の皆殺し映画通信〉

エンドレス・ポエトリー本予告

ホドロフスキー監督の魂の自叙伝『エンドレス・ポエトリー』予告

youtu.be

監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
撮影: クリストファー・ドイル
出演:アダン・ホドロフスキー/パメラ・フローレス/ブロンティス・ホドロフスキー/レアンドロ・ターブ、イェレミアス・ハースコヴィッツ
配給:アップリンク
(2016年/フランス、チリ、日本/128分/スペイン語/1:1.85/5.1ch/DCP)
(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE
photo:(C)Pascale Montandon-Jodorowsky

新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷
ほか全国で大ヒット中