『世界を変えなかった不確かな罪』公開直前!監督&出演者が語る本作の魅力

12月9日(土)より、新宿K’s cinemaにて劇場公開される『世界を変えなかった不確かな罪』の奥田裕介監督、寉岡萌希さん、紗都希さん、松永有紗さんに本作の魅力、撮影の裏話をたっぷりと語っていただきました。

ほぼ1年ぶりに会う一同。
奥田監督が用意してきたメイキングビデオをみんなで観た後、座談会がはじまりました。

■撮影で最も印象に残ったこと

奥田:久しぶりですね。撮影してから、もう1年経つんですね。久しぶりの映像を観て、いかがでした?

一同:懐かしい!ようやく、公開ですね。

奥田:で、今回、cinefilさんでこういった機会をいただき、みんなで座談会をさせて頂くんですけど・・・・・

紗都希:監督、仕切り、上手くない(笑)

奥田:本当に苦手です・・・えー、じゃあ、まず、撮影で印象に残ったことを自分から話しますね。
自分は、あるシーンの撮影中、自分の経験が重なってしまって「スタート」の声がかけられなくて助監督に言ってもらったっていう思い出があります。
初めての経験だったからパピコ(紗都希)が何を感じて行動するのか、わからなくなっちゃって・・・。
紗都希さんに「ごめん、このシーン撮るのやっぱり怖かった。わからなくなっちゃったんだけどパピコはどう感じると思う?」って聞いたら、紗都希さんも「わからない!」って(笑)

紗都希:ああ、あのシーン・・・自分の大切な人が目の前で辛いことになった時ですよね。私も頭で考えたり、芝居しようとすると、なんだかわかんなくなっちゃって。感情に任せようとしたり。

奥田:なぜこういうシーンを書いたのか?とか脚本の話しはたくさんしてたので、自分と紗都希さんの「わからない」をそのままぶつけて、本番で出てくる紗都希さんの感情に任せようと。で、結果としてすごくいいシーンになりました。

寉岡:そのシーン、私は出演してないんだけど、撮影前からすごい緊張感だったから現場を見学しにいきました。「戦ってるな」ってすごく感じました。

松永:私が一番印象に残ったシーンは、感情をつねに隠してる菜摘(松永有紗)が、はじめて自分の気持ちで歩いたり走ったり、感情が動き始めたシーンですね。その日撮影ができるかどうかって感じだったけど、現場に着いて空を・・

紗都希:あ、それ以上はダメ。後は映画を観てから・・
一同:(笑)

ピノ役|寉岡萌希さん

寉岡:私は一番最後のシーンが印象に残っています。何回やっても監督のOKが出なくて・・・

奥田:14テイクくらい。

紗都希:現場もシーンとなっちゃって(笑)

奥田:あのシーンは寉岡さんの中で答えがある演技をしてもらいたくなくて、迷ったままのピノ(寉岡萌希)を撮るために、何度も何度も悩んでいただきました。

寉岡:苦しかった~(笑)

奥田:苦しんで迷ってくれたからこそ、言葉では表せない表情を撮ることができました。

松永:監督って結構、意地悪ですよね。(笑)

パピコ役|紗都希さん

紗都希:私、実は、鳥がすごい苦手で。でもそのシーンで鳥に触らなくちゃいけなくて絶対、無理~と思ってたんですけど。(寉岡)萌希さんが監督に何度もNG出されてもがんばっている姿を見て、「鳥、触れません」とか絶対言えないなって思いました(笑)

奥田:最初は悲鳴あげてたのに、10テイク超えたあたりから、抱えてましたもんね、鳥。

紗都希:私もこんなんじゃダメだって思って。鳥、触れるようにすっごいがんばりました。


奥田:歌はどうでした?

松永:あの歌、難しいですよね。原曲聴いたとき、「ええ!、これ歌うの?!」って。撮影期間中、ずっと聴いていました。

紗都希:私、カタカナにして紙に書いて覚えてました。

奥田:3人とも歌いましたもんね、「SUMMER TIME」

寉岡:OK出たとき本当に安心しました。14テイクなったらどうしようかと(笑)

紗都希:私、安中の工場がすっごい印象的でしたね。
夜、ライトアップされている工場の下で撮影して、ホテル戻って、また朝から撮影で工場が見えて。本当にこの町に囚われた私の役、パピコみたいに感じてしまって。

奥田:安中は10年くらい前から「いつかこの町で映画を撮ろう」と思っていました。町の真ん中に国道が走ってて、そのとなりをなぞるように川が流れていて、町のどこにいっても工場と目が合う感じがとても惹き付けられました。

■「不確かなもの」を手探り状態で探る撮影現場

奥田裕介監督

奥田:3人の役は、それぞれが自分に似ているな、っていうか、自分の持っている側面なのかな、って思ってます。
ピノは、後悔を“罪”と捉えて抱えているのに、自分自身では行動を起こせず、誰かの積極的な行動に引っ張られてしまうし、パピコは人当たり良く明るくふるまったりして影の部分を隠しているし、ナツミの他人との距離の置き方とか他人を観察していたりとか、自分の分身のような気がするんです。
役についてはどう思います?

寉岡:私、ピノは思ったより暗くないなって。台本読んだ時はすっごい暗いなあって思ったんですけど、演じているなかで、そんなに重くなく背負わなくてもいいんだなって思えました。
演じているどれが、ピノなのか、常に現場で探っていました。

紗都希:私もパピコを常に探してました。現場行ってその空気や風景で気がつくこともあって、現場で選択肢が増えたっていうか。他の人のお芝居につられて暗くなってしまうとすぐ監督に「パピコ、上げて上げて」って言われてました。

菜摘役|松永有紗さん

奥田:松永さん、役は難しかった?

松永:そうですね、普段の自分とは全く違った役なので。暗いっていうか。真逆なので。

一同:うんうん。

松永:どこまで、自分が閉じこもっていいのか、役のつくりかたは考えました。

奥田:(松永さんは)本番前に目をつむったり、壁のほう向いて一人の時間を作ったりしてたよね。

松永:自分と真逆な菜摘になるために本番前は特に意識してました。

■「不確かな罪」

奥田:ちなみに・・・・不確かな罪って何だと思いますか?

紗都希:監督、仕切り、下手~(笑)

奥田:はい、じゃあ寉岡さん(笑)

寉岡:この映画に出演して、不確かな罪って日常においてもいろいろあるなって感じました。

松永:普段、生きているなかで不確かな罪って誰でも犯していそうですよね。犯罪じゃないんだろうけど・・・。

紗都希:罪を罪って気がつく人って、やさしい人なんだろうなって。傷つけようと思わなくても言葉で人を傷つけちゃうことってあるじゃないですか。確固たる「罪」でなくても、それに気がついた時に罪悪感を感じたり、振り返ることのできる「不確かな罪」を感じる人って、やさしい人なのかなって。
監督はどうですか?

寉岡:監督、仕切られてますよ(笑)

奥田:(笑)・・・脚本を書いてるときから「罰を受けない罪」は苦しいなって思ってました。善意やちょっとした過ちから誰かを傷つけてしまったとして、その過ちを本人が罪だと思っても、社会的な罰を受けることはないから、そこには不確かな・・

紗都希:あ、それ以上はダメ。後は映画を観てから・・

『世界を変えなかった不確かな罪』 予告編

映画|世界を変えなかった不確かな罪|予告編

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後記
終始、笑顔の中で進んだ時間。
現場の雰囲気もよかったのだろうな、ということが感じられる座談会でした。
監督を含めキャストも悩みながらつくったという『世界を変えなかった不確かな罪』の中にある「不確かなもの」をぜひ、劇場で感じてください。

撮影:安達英莉


世界を変えなかった不確かな罪|奥田裕介監督|日本|2017年|101分|ガチンコ・フィルム

2017年12月9日(土)~12月22日(金)新宿K’s cinemaにて劇場公開