アジア最大級の国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)が昨年に続き、 世界を目指す若手映画監督の支援を目的として、世界で活躍中する大友啓史監督を講師として招いた第1回目のワークショップが10月14日(土)に開催されました。 

今回のワークショップに選定された20名の参加者は、「世界」をテーマとした事前課題を元にプレゼンテーションを大友監督に向けて実施。

大友啓史監督

大友監督による個別のフィードバックの機会を設ける事で、監督と参加者の密なセッションとなりました。参加者は決められた時間内で、熱心にプレゼンテーションや質問を行い、大友監督も、参加者の熱意に応えるように熱心にアドバイスを各々に返しました。

また、今回はワークショップに加え、大友監督による「世界とは、世界と戦うとは」をテーマに講義があり、さらに、様々な世界で活躍する3名の特別ゲストを招き、"戦う世界の多様化、戦い方"について学ぶトークショーを実施しました。

「世界とは、世界で戦うとは」の講義では、大友監督から、全体のフィードバックと共に、「どんな尺であろうとも、映像を制作し、届けることは大変な労力のいること。作品は創って終わりではない。そこからもう一歩、観てもらう人に届ける作業も始まる。自分の作品を他者に見てもらうことはすごくパワーがいる。だからこそ、そこに込めた熱意、自分が作品を通して訴えたいことを伝えるための能力を、色々な形で磨いてください。」と話がありました。

【講師プロフィール】
■大友啓史(映画監督)
1966年生まれ、岩手県盛岡市出身。慶應義塾大学卒。NHK入局後、97年からLAに留学。2年間、 ハリウッドで脚本や演出を学ぶ。「ハゲタカ」「白洲次郎」「龍馬伝」などを演出し、イタリア賞始め国内外での受賞多数。NHK在籍時の2009年に映画『ハゲタカ』で映画監督デビュー。2011年4月NHK退局、株式会社大友啓史事務所を設立。ワーナーブラザースと3本の監督契約を結ぶ。『るろうに剣心』(12年)、『プラチナデータ』(13年)に続き、 『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14年)が世界64か国2地域で上映、国内ではその年公開の邦画No.1ヒットを記録。昨年は『秘密 THE TOP SECRET』(8月公開)、『ミュージアム』(11月公開)、今年は将棋を題材にした青春映画『3月のライオン』二部作(3、4月公開)と話題作が立て続けに劇場公開された。

続いて、世界とは、という話では「世界という舞台は、今は、webがあるため日常的に開かれており、いつでも発信出来る土壌が整っている。世界も日本も基本的に器は変わらなくなりつつある」一方で、「それでも、日本の映像作品は、もう一歩クオリティーが足りてないと言われることも少なくない、何が足りてないかというところを皆さんにも研究して欲しい。」と投げかけていました。

その足りない部分を解決する一つのポイントとして、
「見てくれる人に、最後まで楽しんでもらえるかどうかを考えるクールな目線を持つことも重要。表現したいという熱意を持つ作り手としての目線との2つの人格を持つことが必要なのではないか。」と話しました。

その後のゲストを迎えたトークショーでは、
多数のテレビコマーシャル、ショートフィルムを手掛けるとともに、2017年に公開となった映画『東京喰種トーキョーグール』を制作した萩原健太郎監督。

クリエイティブな活動を支援するクラウドファンディングサイト「Motion Gallery」を主宰している大高健志氏。

Huluにおけるオリジナルコンテンツ発信事業を立ち上げ、プロデュースを行う町田有也氏。
という各分野の第一線の方々が登壇しました。

町田有也氏(左)大高健志氏(中央)萩原健太郎監督(右)

3人は活躍されている各界のフィールドから、大友監督とトークを繰り広げ、萩原さんはCM監督と長編映画監督の目線から、「当たり前のことだが、何をやりたいのか?何を撮りたいのか?を自分の中に持つことが大切。そして、そのやりたいことを追求し、仲間や輪を作り、さらに、各所に売り込みに行って欲しい」と作り手にとっての「こだわりの大切さ」を強調しました。

大高氏は「世間に受けるかどうかを考えずに、自分がやりたいと狂信的な熱意を持って作品を作って、走りぬけて欲しい。今の情報があふれる時代だからこそ、その熱意が世の中の人に届く、見たい作品だと選択されるポイントとなる。」

町田氏はプロデューサーの目線から「作り続けるためにはというところを問い続けて、作りたい企画はあっても、お金がないと作れないため、常に自分の中にもう一人のプロデューサーの人格を作って、自問自答を繰り返し、作り続けられるための蓄えを残す事が重要ではないか。」と各自の立場から”世界”で戦うための貴重な意見を聞くことができました。

【ゲストプロフィール】
■萩原健太郎(映画監督)
1980年生まれ、東京都出身。2007年に Art Center College of Design(ロサンゼルス)映画学部卒業後、  日本に帰国。THE DIRECTORES GUILD に参加し、ソフトバンク、TOYOTA、コカコーラをはじめ多数のTV-CM、MV、ショートフィルムの演出を手がける。初長編脚本「Spectacled Tiger」が、米サンダンス映画祭にて優秀な脚本に送られるサンダンスNHK賞を日本人で初めて受賞。2017年3月 NHK BS にて、プレミアムよるドラマ「嘘なんてひとつもないの」がオンエア。 2017年7月 初長編映画監督作品「東京喰種トーキョーグール」が公開。
■大高健志(Motion Gallery代表 / popcorn共同代表)
早稲田大学政治経済学部卒業後、外資系コンサルティングファームに入社、戦略コンサルタントとして、主に通信・ メディア業界において、事業戦略立案、新規事業立ち上げ支援等のプロジェクトに携わる。 その後、東京藝術大学 大学院に進学し映画製作を学ぶ中で、クリエィティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、2011年に 日本での先駆けとしてクラウドファンディングプラットフォーム『MotionGallery』(https:motion-gallery.net/)を立ち上げ。以来15億円を超えるプロジェクトの資金調達~実現をサポート。2017年には、だれでも映画館をつくることができるマイクロシアタープラットフォーム『popcorn』(https:popcorn.theater/)をスタート。
■町田有也(HJホールディングス株式会社 プロデューサー)
日本テレビグループの動画配信サービス「Hulu フールー」を運営するHJホールディングス株式会社に勤務。編成部や カスタマーマネジメント部を経て、オリジナル作品を制作するコンテンツ制作部でアニメーションを中心にプロデュース業務を担当。主な企画作品は神山健治監督作品『エンシェンと魔法のタブレット』、櫻木優平監督作品『ソウタイセカイ』、アカデミー賞にもノミネートされたトンコハウス作品『ダム・キーパー』を原作とした、エリック・オー監督作品『ピッグ 丘の上のダム・キーパー』など。前職はカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)本部で特撮・アニメーションジャンルのマーチャンダイザーや、販促企画を行う。また、TBSとCCC、2社の共同出資で設立されたTCエンタテインメント株式 会社で、映像ソフトの企画・製作などに関わる。

最後に、次回の12月16日(土)に実施される第2回目のワークショップへの課題が発表され、参加者は15分以内の映像作品を作ってくるという課題となり、大友監督からは「形は問わないから私達とコミュニケーション出来る15分の映像を用意して欲しい。次回も本気のコミュニケーションをしましょう。」と締めくくりました。

LEXUS SHORT FILMSは「未来を担う新進気鋭のクリエイターを支援」するという目的のもと、2013年に発足。世界中から選ばれた意欲的なクリエイターと共に、ショートフィルムを制作。国際舞台で披露するチャンスを得られる若手支援プログラム。

詳しくは下記サイト