「パリ万博でのとある日本人との出会いによって、彼女は大きく変わりました」
アイリーン・グレイと日本の意外な繋がりが明かされる

<ジェニファー・ゴフ氏ご登壇  早稲田大学特別講義 実施のご報告>

近代建築の巨匠ル・コルビュジエと、彼が生涯で唯一才能を羨んだと言われる女性建築家アイリーン・グレイの間に隠された波乱万丈のストーリーを美しき映像で描く極上のドラマ『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』が、10/14(土)よりBunkamuraル・シネマ他にて全国順次公開いたします。

映画でのアイリーン・グレイ
『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』より
© 2014 EG Film Productions / Saga Film © Julian Lennon 2014. All rights reserved.

南仏の海辺に立つ、建築史上に残る傑作<E.1027>。
そこはアイリーンが手がけながらも、長らくル・コルビュジエの作とされてきました。
本作は、歴史の闇に埋もれてきた幻の邸宅<E.1027>の謎を紐解き、ル・コルビュジエとアイリーンの知られざる愛憎のドラマを浮かび上がらせます。

映画でのル・コルビュジエ
『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』より
© 2014 EG Film Productions / Saga Film © Julian Lennon 2014. All rights reserved.

このたび、アイリーン故郷であるアイルランドから、世界的なアイリーン・グレイ研究者である、アイルランド国立博物館キュレーターのジェニファー・ゴフさんが来日。

日本の私学として最初の建築教育機関である早稲田大学理工学部建築学科で、ジェニファーさんを招いての特別トークイベントを開催いたしました。

【イベント概要】
日時:9月28日(木)16:30~18:00
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス
登壇者:ジェニファー・ゴフ

日本の私学として最初の建築教育機関である早稲田大学理工学部建築学科で開かれた講演には、世界有数のアイリーン・グレイ研究者として知られるジェニファー・ゴフ氏の話を聞くために、多くの学生が詰めかけた。

早稲田大学授業風景
講義するジェニファー・ゴフさん

講演が始まると、ジェニファー氏は「私が知っている日本語は“こんにちは”だけですが、日本に、そしてこの場所に来られてとても嬉しいです」と笑顔で挨拶。

「パリとロンドンで学んだアーティストであり、“インテリア”という概念そのものを変えたと言われるインテリア・デザイナーであり、写真家でもあり、そして、モダニズム建築の母でもある」と、アイリーン・グレイが持つ多様な側面を紹介し、アイリーンの人生と彼女の作品を細かに振り返っていった。

1978年にアイルランドに生まれ、フランスでキャリアを築いたアイリーン。
講演の中では、アイリーンと日本の意外なつながりが明かされた。アイリーンは、ロンドンで過ごした学生時代、よく授業をサボっては美術館に行っていた。
特に、アルバート博物館(現ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)で日本の漆器の展示を大変気に入っていたとされ、日本の漆器についての本も持っていた。そこから既に、彼女は日本の文化、美術に神秘的な魅力を感じていたのだろう。
ロンドンのリバティで日本の家具を見つけた時には、そのシンプルなスタイルと、強さがありながらも純粋で自然と調和したデザインに大きな感銘を受けたという。

そして、アイリーンは1900年にパリ万博で日本人の漆職人、菅原精造に出会う。
すぐに意気投合した二人は篤い友情を築き、彼女は菅原から漆器造りについて多くを学び、彼女もまた、それを人に伝授していった。アイリーンは自ら漆を使った作品を多数つくり、中には青い漆を使用した作品もあった。どうやって漆で鮮やかな青色を出すのか、誰もがその青色に魅了されながらも、アイリーンの他には誰もその方法が分からなかった。
しかしそれは「秘密のレシピ」とされ、何と、アイリーンは死ぬまで誰にも明かさなかったのだ。

漆を使ったアイリーンの家具『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』より
© 2014 EG Film Productions / Saga Film © Julian Lennon 2014. All rights reserved.

その後、講演では映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』の舞台となるアイリーンの名作建築<E.1027>の革新性についても詳しい話がなされ、学生からは「アイリーンにとって、家を建てることは、インテリアやカーペット、絵画を作ることと同じだったのでしょうか?」という質問も飛んだ。
ジェニファー氏は「というよりも、彼女にとっては、<全ての要素をまとめあげる、統合する>ということが家を作るということだったのでしょう」と答え、アイリーンにとって建築とは何だったのかを語った。

 また、大の旅行好きで、あらゆる国に旅をしたというアイリーンだが、現時点では彼女が日本に来ていたという記録は残っていない。
ジェニファー氏は、「アイリーンは絶対に日本に来たかっただろう」と言い、こう続けた。「今は、“アイリーン・グレイは日本に来たことがない”ということになっています。ですが、皆さんが研究をしていくうちに、アイリーンが日本に来ていたという新しい事実が見つかるかもしれません。ぜひ、皆さんにもアイリーン・グレイの魅力をもっと知っていただき、研究をしていただけたら嬉しいですね」。
こうして、ジェニファー氏の学生たちに研究の希望を託す温かい言葉によって、講義は幕を閉じた。

ジェニファー・ゴフ Jeniffer Goff プロフィール
ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで文化政策、芸術学の博士号を取得。国内で大学講師やギャラリーのキュレーターを務め、2007年よりアイルランド国立博物館のキュレーターとして活動。世界有数のアイリーン・グレイ研究の専門家であり、同館ではアイリーン・グレイのコレクションを担当している。2014年に出版された研究書「Eileen Grey Her Work and Her World」がアイルランドの権威ある文学賞アイリッシュ・ブック・アワードにノミネートされ、アイリーン以外にも、様々な芸術家の研究論文を発表している。

二人の天才の愛と嫉妬-『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』予告編

二人の天才の愛と嫉妬-『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』予告編

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【STORY】
モダニズム華やかなりし1920年代、のちの近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、気鋭の家具デザイナーとして活躍していたアイリーン・グレイに出会う。彼女は恋人である建築評論家のジャン・バドヴィッチとコンビを組み、建築デビュー作である海辺のヴィラ<E.1027>を手掛けていた。陽光煌めく南フランスのカップ=マルタンに完成したその家はル・コルビュジエが提唱してきた「近代建築の5原則」を具現化し、モダニズムの記念碑といえる完成度の高い傑作として生みだされた。当初はアイリーンに惹かれ絶賛していたル・コルビュジエだが、称賛の想いは徐々に嫉妬へと変化していく。そして1938年、事件は起こる。ル・コルビュジエは、アイリーンの不在時に何の断わりもなく、邸内に卑猥なフレスコ画を描いてしまう。これを知った彼女はル・コルビュジエの行為を「野蛮な行為」として糾弾し、彼らの亀裂は決定的なものになった。その後、大戦とともに、<E.1027>は人々から忘れられ、打ち捨てられてしまう。戦後、すっかり荒れ果てた物件は、競売にかけられる。海運王アリストテレス・オナシスも参加したこの物件を買い戻すために奔走したのは、他でもない――ル・コルビュジエだった。

【監督・脚本】メアリー・マクガキアン 
【音楽】ブライアン・バーン 
【撮影】ステファン・フォン・ビョルン
【美術】エマ・プッチ
【出演】オーラ・ブラディ / ヴァンサン・ペレーズ / ドミニク・ピノン / アラニス・モリセット

2015年 / ベルギー・アイルランド / 英語 / 108分 / カラー / シネスコ / 5.1ch / 原題:THE PRICE OF DESIRE
配給:トランスフォーマー/提供:トランスフォーマー+シネマライズ 
© 2014 EG Film Productions / Saga Film © Julian Lennon 2014. All rights reserved.
後援:アイルランド大使館、ベルギー大使館、スイス大使館 協力:国立西洋美術館、hhstyle

10/14(土)Bunkamuraル・シネマほか、全国順次公開