2011年にスタートし、アートや映画など文化性が高い購入型のクラウドファンディングとしては日本の草分けとなったモーションギャラリー。
今では、様々なカルチャーを支える役目を持ち、毎日のように新たなファンディングがスタートし、最も人気の高いクラウドファンディングの一つとして定着していることはご存知だろう。

そして、設立7年目を迎えようとしているこの時期、モーションギャラリーは新たな構想を発表した。その名も「MOTION GALLERY STUDIO」そして新たな自主レーベルだ。

ここでは、脚本に落とし込んでいないアイデアレベルの映像の構想や、歴史的に重要だが書籍化しにくい書物や写真集などを実際に制作できるというかつてないシステムだという。

今までの資金のサポートというクラウドファンディングの役割だけでなく、この「MOTION GALLERY STUDIO」では、実際に作品を生み出していく作業が加わったことで、新たな創造性を持った作品が生まれるかもしれない画期的なものとなる。

この度シネフィルでは、映画界を中心にカルチャー全般の流れに新しい風を吹き込み続けているモーションギャラリー代表の大高健志さんにインタビューを試みた。

大高健志さん

★大高さんはなぜクラウドファンデングをスタートさせていったかをまずお聞きしたいんですがー

きっかけとなったのは一旦社会人になった後、東京藝大に入って、映画製作を学んだんですが、実際プロとして活躍する現場の方々と触れ合う中などと触れ合う中で、特に作家性を重視した作品を生み出していくには、やはり資金を調達する難しさなどを感じ、新たな資金調達の流れを作れないだろうかというところからスタートしました。

それは、映画の限らず現代アートからアニメーション、演劇に至るまで同じことで、事業性を証明しなくては行けない資金調達の形だけでは成立が難しい。表現者が生み出す作品に共感する人たちからの、前もった応援をできないかというところが設立の主旨でした。

--事業性とか、ビジネス性だけを追い求める場合は、投資とか融資の仕組みが既にありますが、文化性とか社会性とかコミュニティへの貢献などに価値を見出していく表現の場合には、もっとスムーズにお金を回して”幸せな関係”を作ることがこれから必要かなと思ったところです。

★特徴としているのは、他のクラウドファンディング以上に、文化を前面に出しながらも社会とのリンクが強いようなの仕方なんですがー

そうですね。本当にヨーゼフ・ボイスが言っているような”社会自体を1人1人の日々の活動から再構築していこう”という意思のあるプロジェクト。
それが表現活動の限らず、一つ一つが誕生させて社会に実際アウトプットさせていくことで、社会がより良い場所になっていくしそういう人を応援して、増やしていきたいと思っています。

★ベンチャーとしては、モーションギャラリーをやり続けて思ったことはー

立ち上げてよかったことは、素晴らしいプロジェクトが今まで2000件以上ここから生まれてきているんですが、それらに対して生み出す一端を担えることに関われたことです。
その作品が公開されたり、発表された時は本当に嬉しいですし、それがかなり大きなモチベーションになっています。

難しい点は、初めから分かっていたことですがそんなに、利益が大きいビジネスじゃ無い点ですかね(笑)。
でも、やはりプレゼンターに1円でも多くお金をお渡ししたいという初心を忘れずに、国内最安値の手数料は変えずに運営し続けて行きます。

★今回の「MOTION GALLERY STUDIO」の発表ではサポートする側から発信する制作側になっていこうという流れは理由はー

二つの動きがたまたまタイミング的に重なった理由が大きいんですが、一つには先ほども話したように、「MOTION GALLERY」は単にお金集めをするサイトとしてはじめた訳では無いので、実際に作るというところまでのフェーズまでもサポートしていく事で、より深くクリエイティブに深く関わって行きたいと思っています。

これは今までにも無い新しい試みですし、これまではできないことが、アイデアから実現化していくー。
そういうことができる状況なり環境が生まれるのは面白い事になるのではと思っています。

そのアイデアを汲み取ってものづくりまでできるようになると、そもそも最初からやろうとしていた循環というか、世の中がよりクリエイティブになる起点になるのではないだろうかということです。

もう一つには、誰でも自分達の映画館を作れるpopcorn(ポップコーン)を立ち上げた事も関わって居ます。
「MOTION GALLERY STUDIO」を立ち上げても、そこから生まれたものの単に作りぱなしという状況だけだと無責任になるので、それだけではこういう動きにはならなかったんですが、僕らがもう一方で立ち上げているpopcornという上映サービスが有ることで、劇場公開にかかわらずここで上映する作品としてのものづくりをすればしっかりと作品の出口も確保できますし、現実になり得るわけです。
popcornとしても、劇場公開に向いている作品とはまた違う新しいジャンルの作品をオリジナルで製作できる様になる。

出口も環境を整ったので、タイミングがちょうどきたかなということが大きいです。

★新しい映画の発信場所であり発表の場でしょうか?

popcornは、映画の多様性を日本全国に広め、そしてみんなで楽しむ場になっていくと考えています。
基本的にpopcornは、映画館がなくなってしまいつつあるローカルに映画を届けられる仕組みとして立ち上げました。
今、「マス」という存在が薄まりつつあり、コミュニティやクラスタは様々な形で分散しつつあります。其のような、地理的にも規模的にも分散するコミュニティにしっかりと映画を届け、不特定多数と一緒に作品を見るという映画の楽しみ方を広げて行きたいです。

その中で、劇場の規模では難しいけども、popcornでは盛り上がる様な、ローカル発な作品が出てくると、面白い現象になるかなと思ってもいますね。
映画文化の裾野を広げる役割を持つと貢献できるのかなと思っているんです。

★スタジオとは?レーベルとは?

今までアイデアや脚本だけではできなかった映像の企画が可能になるシステムです。
ミュージックビデオ、ドキュメンタリー、劇映画、企業VPなども含め実際映像を作ろうとする様々なこと--。

実際にかかるお金のサポートをクラウドファンデゥングで行うと同時に、映像全般に対してロケーションからキャスティングなども含め手配できることになります。

立ち上げ準備をしている出版のレーベルでは、やはり大きな出版に向かないけれど、歴史的に価値のある作品集とか写真集などが出版できるような状況をサポートしていくつもりなんです。

★日本の映画界について一言

大作と自主映画的なインディペントの2極化だけになっている中で、チャレンジングで映画史を塗り替える様な作品が多く生まれて来たミドルバジェットの作品が、昔のようにもっと製作しやすい状況ができてくればと思っています。

また、「新感染」を観ても思いましたが、もっと日本でも新人・若手監督に大きいバジェットの作品へ挑戦できるような機会がより増えていけばと思ったりもしました。

★では、現在これだけ浸透してきたクラウドファンディングについてお聞かせください。

クラウドファンディングについてはよりソリッドに考えていきたいと思っています。
まだ社会での本来の定義が浸透していない気がします。
一方であまりに安易に始める方と、あまりに保守的に考えて嫌悪感を持っている人がいて--そもそも、既存のファンからお金を巻き上げるような使い方ではなく、本来、クラウドファンディングは共感を伝え、増やすことで、”ファンの循環”の起爆剤であるべき仕組みだと思っています。自由な環境で製作者と寄り添いサポートする形ですね。

クラウドファンディングの定義をちゃんと広げて伝えていきたい。
覚悟のない人が適当なあぶく銭を集める手段でもなければ、アーティストが自分のファンからお金を巻き上げることでもないです。もっとクリエイティブな活動--。
お金を出す人も一種のクリエイターであって、巻き込まれていくあるいは巻き込んでいく豊かな社会づくりのための中心となる仕組みになってほしいと思います。

今日はありがとうございました。

新たな、システムとして生まれた「MOTION GALLERY STUDIO」。
21世紀の表現者がより自由な環境で作品を生み出すことができ、発表することができる。
今までにないクリエイティヴな循環がここから生まれてくるのではないだろうか?

『MOTION GALLERY』 にできること動画

『MOTION GALLERY』 にできること

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「MOTION GALLERY STUDIO」&「popcorn」第一弾作品
『建築をあきらめる。(仮)』

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MotionGallery STUDIOでは、第一作目「建築を、あきらめる(仮)」に続き、映画にかぎらず様々な映像制作のアイデアを募集しております。
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アイデアだけで映像ができ、出版ができる「MOTION GALLERY STUDIO」

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ベースとなる資金を集めるクラウドファンディング「モーションギャラリー」