一本の日本映画が公開され話題を呼んでいる。

その作品は、シネフィルでも何度かご紹介した時代劇エンターテイメント『仁光の受難』。

バンクーバー国際映画祭でワールドプレミア上映が決定するや否や、無名の新人監督の作品にもかかわらず大評判となり、その後も釜山国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭などに続々出品が決定。
日本では、2016年フィルメックスで上映されここでも話題を呼んだ作品です。

© TRICYCLE FILM

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僧侶が煩悩と戦うという作品は、誰よりも実直なのに煩悩に翻弄される僧侶と、刀に魅入られ人斬りとなった侍、そして男の精気を吸い取る妖怪(あやかし)が邂逅する摩訶不思議な世界を、実写とアニメーションを融合させるなど、映像の現場で培った様々な技術を駆使して一遍の魅力的な妖怪譚として昇華させています。

そして、ついに日本でも逆輸入した形で9月23日より角川シネマ新宿で公開がスタートしましたー

シネフィルでは、今作を撮った若手監督・庭月野議啓(にわつきののりひろ)氏に、公開にあたりいくつかの質問を投げかけました。

監督にとって長編のデビューとなる本作はクラウドファンディングなども募りながら4年の歳月をかけて完成された作品。
今作を作ろうと思ったきっかけ、海外映画祭へ発表の経緯、そして公開にあたっての心境、今後の抱負などを答えていただいています。

ぜひ、お読みくださいー

シネフィル質問状!

なぜ映画監督になったのですか?

子供の頃から物語を作るのが好きで、漫画を描こうとしてみたり、ゲームを作ろうとしてみたり、小説を書こうとしてみたりしていました。
その中で、唯一、作品を完成できたのが「映画」だったんです。

物語を作ることが私のライフワークで、その手段として一番適していたのが映画だったという感じです。同時に人生で初めてめちゃくちゃ人に褒められたのも映画でした。
そこから映画を撮り続けているうちに…という感じです(笑)

この映画を作られた理由はー

前作に『イチゴジャム』という短編映画があります。
それでPFFアワードを始めとする様々なインディーズ映画祭に入選したんですが、やはり予算の都合上、インディーズ映画は必然的に「現代劇」が多くなるんですよね。映画祭でたくさんの現代劇映画を見て、時代劇や未来SFも観たいなぁと思ったんです。
何とか工夫してインディーズ時代劇を撮れないかなと。

京極夏彦先生の妖怪小説を愛読していたということもあって、怪談風に作ってみるといいかもと。
どうせならしっかりとした長篇を作ろうと。
時代劇なら海外にもウケそうだ、海外の映画祭を目指そうと。
そういう発想でプロットを進めて行きました。

映画祭はバンクーバーが最初だと思うのですが、海外映画祭で上映された経緯は?

映画が完成して、さっそく有名な海外映画祭の公式ページから応募を始めました。
最初はずっと入選の手応えがなくて、でも徐々に手応えがなさ過ぎることに疑問を感じてきたんです。「何か自分は的外れなことをしているのかもしれない」と。それで、PFFの荒木啓子ディレクターに相談したんです。PFFの入選作品は海外映画祭にも出品されているので。

映画祭って公募から全ての作品が決まるわけじゃないんですよね。
例えば映画祭のプログラマー(作品選出者)が世界各国を回って発掘してきた面白い作品も映画祭で上映されるわけです。なので、このプログラマーに直接作品を見せる機会を得られれば、映画祭に入選する可能性も高まるんですね。
そこで荒木さんに紹介して頂いたのは川喜多記念映画文化財団でした。昔から海外のプログラマーに日本映画を紹介し続けてきた、歴史ある、日本映画と海外映画祭の架け橋のような団体です。
そこで作品を預かって頂き、海外のプログラマーに作品を見て頂くことができ、そこからすぐバンクーバーと釜山から映画祭に招待してもらえました。

その後の海外映画祭へ出品が続いた経緯を教えてください

釜山では自費で映画祭の全期間滞在しました。
これには目的があって、海外のセールスエージェントを見つけたいという狙いでした。
映画祭期間中にいくつかのエージェント会社と商談して、Asian Shadows という会社と契約を結べました。そこからは、海外エージェントの主導で、何もせずとも映画祭が決まっていきました。
エージェントが映画祭に売り込んでくれたんです。そういう枠も映画祭にはあるということでしょうか。

東京フィルメックス出品は、どうして?

海外を目指すという目標はありましたが、やはり日本映画で、私も日本人ですので、国内の大きな映画祭に出るということも目標のひとつでした。東京フィルメックスは、映画ファンの注目度が高く、アジアの若手監督を応援しようという情熱に溢れた映画祭です。

ただ『仁光の受難』は作風的にフィルメックスに合わないかも…と思いながら、思い切って応募したのですが、大変気に入って下さり、コンペティション部門で上映してもらえました。

映画祭が終わった後も、ずっと応援して頂いて、フィルメックスがなかったら今回の劇場公開も実現してなかったかもしれません。

初めての劇場公開にあたってー

1年間、国内外の映画祭に多く参加して来ましたが、やはり映画祭はまだまだ(一般のお客さんに開かれてはいるけど)映画人・映画ファンの祭典という気がします。
「映画祭」とはまた別に「劇場公開」を待ってくれていた人たちがこんなにいたんだという感動がありました。
それと同時に、ようやく長篇デビューできたという実感が湧きました。一緒に作品を作ってくれたスタッフ・キャストにも、観に来てくれたお客さんにも、感謝しかありません。

現在の心境をお聞かせください

舞台挨拶でも言いましたが、劇場公開は目指していたゴールであると共に、スタートでもあります。ここから『仁光の受難』をできるだけ多くの人たちに届けるように努力して行かなくてはなりません。まだまだこれからだと、気を引き締めているところです。

今後、もしくは次回作の構想はありますか?

ミステリー小説が好きなので、ミステリーを撮りたいという欲求は強いです。
そういう企画を進めていますが、なかなかハードルが高いですね(笑) でもどんなジャンルになっても『仁光の受難』でお見せしたような視覚的な楽しさを追求した作品を作りたいです。

次は4年も5年もかけず、できるだけ早くお披露目できたらとも思います。

ありがとうございました

庭月野議啓(にわつきののりひろ)
1981年生まれ。北九州出身。九州芸術工科大学在学中に映画を撮り始め、九州大学芸術工学府卒業と同時に上京し、フリーランス・ディレクターとして活動を始める。実写ドラマだけでなく、ミュージックビデオやアニメーションなど多様な作品の演出を手がけ、2010年には短編映画『イチゴジャム』がPFFアワードを始めとする様々な映画祭に入選。初のアニメ監督作であるショートアニメシリーズ『オニズシ』(2016)でも非常に高い評価を得ている。この度4年の歳月をかけて完成させた自主制作時代劇『仁光の受難』(2016)は、自身の初の劇場公開長編映画となる。

世界の映画祭で爆笑&喝采!庭月野議啓監督『仁光の受難』予告編

世界の映画祭で爆笑&喝采!庭月野議啓監督『仁光の受難』予告編

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【STORY】
謹厳実直な仁光(にんこう)という名の僧侶がいた。仁光は他の誰よりも修行に励む僧侶の鑑だったが、そんな彼にも悩みがあった。 それは、女に異常にモテること― 町の若い娘から、熟れた女房、枯れ果てた老女にいたるまで、仁光に夢中になり群がってくるのだった。ある日の逢魔ヶ刻(おうまがどき)、仁光は不思議な少女に出逢い、その魔性を開花させてしまう。周囲を惑わす自らの不徳を恥じ己を見つめ直すための旅に出た仁光は、 道中知り合った浪人・勘蔵と共に山を越え、とある寒村にたどり着く。そこでは村人たちが、男の精気を吸い取って殺すという妖怪(あやかし)・山女(やまおんな)に頭を悩ませていた。仁光と勘蔵は山女の退治を頼まれるが、仁光は―


辻岡正人 若林美保 岩橋ヒデタカ 有元由妃乃     
監督・脚本・編集・VFX・アニメーション : 庭月野議啓
プロデューサー:庭月野議啓 竹本勝幸  
撮影:オカザキタカユキ 山本俊一郎  
照明:竹本勝幸  
録音:広瀬蓉子 槍谷篤史  
3DCG:横原大和  
グレーディング:タキユウスケ
照明助手:稲葉俊充  
製作進行:湯越慶太 寺田昌司 松藤伸治 宇田川雄大  
衣装・ヘアメイク:和泉理子 染川祐佳里 春原実佳 井上友岐 堺宏美  
音楽:オフィス樋口 尺八演奏:神永大輔  
助監督:増田秀郎 目羅嘉也  
配給:ポニーキャニオン ninko-movie.com
2016/日本/カラー/デジタル/70分/PG-12 
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角川シネマ新宿 絶賛公開中!