川崎市市民ミュージアムでは、国産アニメーション100周年を記念して、企画展《にっぽんアニメーションことはじめ ~「動く漫画」のパイオニアたち~》との連携企画として、貴重な初期短編アニメーション含め、劇場用アニメーション史上の傑作を選りすぐって上映いたします。

スクリーンで鮮やかに蘇るアニメーションの美しさと奥深い歴史をお楽しみいただけます。

会期は10月14日~11月26日。10月22日には、現在発見されている最古のアニメーション映画『なまくら刀』(1917)の弁士・伴奏付き上映ならびに講演会を行ないます。
また、11月12日には、『銀河鉄道の夜』上映後に杉井ギサブロー監督をお招きしてのトークショーも開催されます。

100年の時空を超えたアニメを観る、貴重な機会となります。

■上映プログラム:全10プログラム(※長編8プログラム+短編集2プログラム)

• 『くもとちゅうりっぷ』+『桃太郎 海の神兵』
• 『パンダコパンダ』+『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』 ~親子で楽しめるアニメーション~
• 『幻魔大戦』
• 『少年ケニヤ』
• 『カムイの剣』
• 『銀河鉄道の夜』
• 『紫式部 源氏物語』
• 『千年女優』
• コマ撮りアニメーション短編集《岡本忠成と川本喜八郎》 ~親子で楽しめるアニメーション~
• 初期短編集《蘇ったアニメーション》
~「蘇ったフィルムたち~東京国立近代美術館フィルムセンター復元作品特集」より

■上映作品詳細

【プログラム・1】

『くもとちゅうりっぷ』

1943/モノクロ/35mm/16分/脚本・演出・撮影:政岡憲三/原作:横山美智子/音楽:弘田龍太郎/動画:桑田良太郎、熊川正雄/製作:松竹動画研究所/東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

日本アニメーションの近代化に貢献し「日本のアニメーションの父」と称される政岡憲三の代表作。音楽やセリフを録音してから作画をあわせるプレスコ方式によって、16分間2万枚の動画枚数を用いて作られたセルアニメーション。てんとう虫がクモに狙われるが、チューリップに助けられるという童話をミュージカル・タッチで演出。

『桃太郎 海の神兵』

1945(2016デジタル復元版)/モノクロ/DCP/74分/演出・脚本:瀬尾光世/影絵:政岡憲三/構成:熊木喜一郎/音楽監督:古関裕而/作詩:サトウハチロー/製作:松竹株式会社

日本初の長編アニメーション映画であり、日本のアニメーションの原点ともいえる傑作。第二次世界大戦末期に海軍省の依頼で製作された国策映画として、落下傘部隊の活躍を桃太郎と動物たちのキャラクターによりミュージカル仕立てで描く。
セル画5万枚の滑らかな動きと、叙情性と童心に満ちたファンタジックな魅力は、当時16歳だった手塚治虫がアニメーション製作を志す原動力となった。

上映日時:10.21(土)14:00※上映後15:40~トーク「『桃太郎 海の神兵』デジタル復元について」★ゲスト:水戸遼平氏(株式会社IMAGICA)
10.22(日)11:30、11.11(土)11:30

【プログラム・2】~親子で楽しめるアニメーション~

『パンダコパンダ』

1972/カラー/35mm/35分/原案・脚本・画面設定:宮崎駿/演出:高畑勲/作画監督:大塚康生、小田部羊一/美術監督:福田尚郎/撮影監督:清水達正/音楽:佐藤允彦/制作:東京ムービー(現 トムス・エンタテインメント)/制作協力:Aプロダクション/声の出演:杉山佳寿子、熊倉一雄、太田淑子、山田康雄、瀬能礼子、峰恵研、和田文雄

東宝の子供向け映画プログラム《東宝チャンピオンまつり》で公開された中編。スタジオジブリ以前の高畑勲と宮崎駿による作品として、後年の『となりのトトロ』やジブリ作品の原型ともいえる。
竹やぶの一軒家に住む少女ミミ子は、不思議なパンダの親子・コパンダのパンちゃんとその親のパパンダと家族になって楽しく暮らす。

『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』

1973/カラー/35mm/39分/脚本・美術設定・画面構成:宮崎駿/作画監督:大塚康生、小田部羊一/美術監督:小林七郎/撮影監督:清水達正/音楽:佐藤允彦/制作:東京ムービー(現 トムス・エンタテインメント)/制作協力:Aプロダクション/声の出演:杉山佳寿子、熊倉一雄、丸山裕子、太田淑子、山田康雄、和田文夫、安原義人

『パンダコパンダ』の続編であり、後半の水没した町を舞台にしたファンタスティックな描写が素晴らしい名作。パンダ親子と愉快に暮らすミミ子の家にトラの子供・トラちゃんが現われ、そして町にサーカスがやって来る。大雨で洪水になり町は水の中に沈んでしまうが、ミミ子たちは屋根に登って楽しくピクニックする。

上映日時:10.14(土)11:30、10.15(日)14:00、10.21(土)11:30

【プログラム・3】

『幻魔大戦』

1983/カラー/DCP/131分/監督:りん・たろう/原作:平井和正、石森章太郎/脚本:桂千穂、内藤誠、真崎守/キャラクターデザイン:大友克洋/作画監督:野田卓雄/美術監督:椋尾篁/美術:男鹿和雄、窪田忠雄/撮影:八巻磐/編集:田中修/アニメーション制作:マッドハウス/音楽: 青木望/音楽監督: キース・エマーソン/製作:角川春樹事務所(現 角川映画)/声の出演:古谷徹、小山茉美、池田昌子、潘恵子、塩沢兼人、原田知世、佐藤正治、穂積隆信、永井一郎、滝口順平、美輪明宏、白石加代子、江守徹

平井和正原作、石森章太郎作画のマンガおよび平井和正自身によりノベライズされた大長編小説を原作として、角川アニメーション第1作として製作されたSF超大作。
暗黒の支配者・幻魔から銀河系を守るため、宇宙意識体フロイの指令を受けたルナ姫は、世界各地の超能力(サイオニクス)戦士を集結させて決戦に挑む。東映動画、虫プロダクションを経てフリーのアニメーション演出家として活躍し、初めて劇場用長編アニメーション演出を手掛けた『銀河鉄道999』(1979)をヒットさせた、りん・たろうを監督に起用。また、漫画家として活動していた大友克洋がキャラクターデザインに参加し、大友のアニメーションのキャリアの出発点となった。
日本映画年間興行収入第8位の大ヒットを記録した。

上映日時:10.29(日)14:00、11.19(日)14:00、11.25(土)14:00

【プログラム・4】

『少年ケニヤ』

1984/カラー/35mm/109分/監督:大林宣彦/共同監督:今沢哲男/原作:山川惣治/脚本:桂千穂、内藤誠、剣持亘/作画監督:我妻宏/美術監督:田中資幸/撮影監督:福井政利/音楽:宇崎竜童/編集:花井正明、大林宣彦/製作:角川春樹事務所(現 角川映画)、東映動画/声の出演:高柳良一、原田知世、大塚周夫、井上真樹夫、増山江威子、永井一郎、八奈見乗児、塩沢兼人、内海賢二、柴田秀勝

実写映画を中心に活動してきた大林信彦が監督に起用された角川アニメーション第2作。
実験的な手法が取り入れられた野心作として、セルアニメの様々な技法が用いられている。原作は、1950年代に新聞に連載された山川惣治による冒険小説で、50年代から60年代にかけて、ラジオドラマ化、テレビドラマ化、漫画化が行われた。舞台は1941年アフリカ、ケニヤに駐在していた日本人商社マンの父と生き別れになったワタル少年は、野獣や部族のいる密林でたくましく成長し、父を探し続ける。さらに、奥地の原爆製造工場や恐竜が生息する未知の世界で、奇想天外な冒険が繰り広げられる。

上映日時:11. 11(土)14:00、11.19(日)11:30

【プログラム・5】

『カムイの剣』

1985/カラー/DCP/142分/監督:りん・たろう/原作:矢野徹/脚本:真崎守/キャラクターデザイン:村野守美/作画監督:野田卓雄/美術監督:椋尾篁/美術:男鹿和雄、窪田忠雄/撮影監督:八巻磐/編集:田中修/音楽監督:宇崎竜童、林英哲/製作:角川春樹事務所(現 角川映画)/声の出演:真田広之、石田弦太郎、小山茉美、池田昌子、堀江美都子、山本百合子、永井一郎

大ヒットした『幻魔大戦』に続いて製作された、りん・たろう監督による角川アニメーション作品。幕末を舞台に忍者が活躍する伝奇小説をダイナミックにアニメーション化。忍術が繰り広げられる戦闘シーンはじめ、アクション演出に新機軸を打ち出した。親殺しの汚名を着せられた次郎は、天海和尚のもと忍者修行に励む。
そして、次郎の持つ亡き実父の短刀「カムイの剣」に秘められた海賊キャプテン・キッドの財宝の謎を巡って、争いが巻き起こる。下北半島、蝦夷、江戸、ロシア、アメリカ、伊賀、函館……各地を駆け巡り、多数のキャラクターが登場する壮大なスケールの作品。

上映日時:10.28(土)14:00、11.26(日)14:00

【プログラム・6】

『銀河鉄道の夜』

1985/カラー/35mm/107分/監督:杉井ギサブロー/原作:宮澤賢治/原案:ますむらひろし/脚本:別役実//アニメーション監督:前田庸生/美術:馬郡美保子/設定デザイン:児玉喬夫/作画:江口摩吏介、猿山二郎/撮影:小山信夫/編集:古川雅士/音響:田代敦巳/音楽:細野晴臣/製作プロダクション:グループ・タック、ヘラルド・エース/製作:朝日新聞社、テレビ朝日、日本ヘラルド映画グループ/声の出演:田中真弓、坂本千夏、堀絢子、一城みゆ希、島村佳江、槐柳二、八代駿、新村礼子、大塚周夫、納谷悟朗、金田龍之介、常田富士男

朝日新聞社とテレビ朝日が初めて劇場用映画に出資するプロジェクトとして製作され、劇場用長編アニメーションの新境地を開いた。東映動画、虫プロダクション、グループ・タックという変遷を辿ったベテラン・杉井ギサブローのもと、卓越したスタッフ陣が才能を発揮し、また、当時20代だった江口摩吏介をキャラクターデザイン・作画監督に抜擢した。宮沢賢治原作の同名小説を猫のキャラクターによって漫画化したますむらひろし作品をベースに、ファンタジックな映像を打ち出した。
少年が生と死の境目を垣間見る不思議な冒険物語を叙情あふれる美しいアニメーションで描き、日本アニメーション映画史上たぐい稀な観念的でスケールの大きい作品世界で魅了する不滅の傑作。
毎日映画コンクール大藤信郎賞受賞作品。

上映日時:10.29(日)11:30、11.12(日)14:00★上映後16:00~トーク ゲスト:杉井ギサブロー監督/聞き手:原口正宏(アニメーション研究家)、11.18(土)11:30

【プログラム・7】

『紫式部 源氏物語』

1987/カラー/35mm/110分/監督:杉井ギサブロー/脚本:筒井ともみ/キャラクター原案:林静一/アニメーション監督:前田庸生/作画監督・キャラクターデザイン:名倉靖博/美術監督・衣装色彩デザイン:馬郡美保子/設定デザイン:児玉喬夫/撮影監督:杉村重郎/編集:古川雅士/音響監督:田代敦巳/音楽:細野晴臣/製作プロダクション:グループ・タック、ヘラルド・エース/製作:朝日新聞社、テレビ朝日、日本ヘラルド映画グループ/声の出演:風間杜夫、梶三和子、田島令子、風吹ジュン、萩尾みどり、横山めぐみ、野沢那智、常田富士男、大原麗子、矢崎滋、津嘉山正種

『銀河鉄道の夜』に続いて、朝日新聞創刊100周年・テレビ朝日開局30周年・日本ヘラルド映画創立30周年記念したプロジェクトとして製作された作品。
日本古典文学の名作『源氏物語』から光源氏の青年期を大胆に脚色し、格調高く洗練されたタッチでアニメーション化。平安貴族の世界を映像化するため綿密な時代考証がなされ、人物たちの動きを描写するため、実際に当時の衣装をまとって演じたライブアクションを撮影したビデオをもとに作画が行われた。平安の建築物を活かした空間演出、妖艶な男女の横顔が効果的な画面構成、桜の花の幻想的な美しさが相まって、「もののあわれ」を見事に表現した。

上映日時:10.28(土)11:30、11.12(日)11:30

【プログラム・8】

『千年女優』

2001/カラー/35mm/87分/原案・監督:今敏/演出:松尾衡/脚本:村井さだゆき、今敏/キャラクターデザイン:本田雄、今敏/作画監督:本田雄、井上俊之、濱洲英喜、小西賢一、古屋勝悟/美術監督:池信孝/色彩設計:橋本賢/撮影監督:白井久男/音響監督:三間雅文/音楽:平沢進/制作:ジェンコ、マッドハウス/製作:千年女優製作委員会/声の出演:荘司美代子、小山茉美、折笠富美子、飯塚昭三、津田匠子、鈴置洋孝、京田尚子、徳丸完、片岡富枝、石森達幸、佐藤政道、小野坂昌也、山寺宏一、津嘉山正種

『PERFECT BLUE』の今敏のオリジナルストーリーによる劇場用長編アニメーション2作目。かつて一世を風靡して引退した伝説の大女優・藤原千代子は、インタビューに答えて自らの人生を語り始める。彼女の生い立ちと秘めた恋の思い出、そして出演した映画の劇中エピソードが混然一体となった波乱万丈の物語が展開される。アニメーションならではの豊饒なイメージと重層的なストーリーテリングによって、千年を越えて愛する人を追い求め続ける壮大なロマンスが描かれる。第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門にて『千と千尋の神隠し』と並んで大賞を受賞、第33回シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞するなど、国内外で高い評価を獲得し、ドリームワークスにより世界配給もされた。

上映日時:11.18(土)14:00、11.25(土)11:30、11.26(日)11:30

【プログラム・9】~親子で楽しめるアニメーション~

コマ撮りアニメーション短編集《岡本忠成と川本喜八郎》 
※短編4作品上映(合計88分)

―岡本忠成作品―
小さな五つのお話 (1974/16mm/20分)
りすのパナシ (1978/16mm/22分)

おこんじょうるり (1982/16mm/27分)

―川本喜八郎作品―
4、道成寺(1976/16mm/19分)

人形や毛糸・紙などを用いて、コマごとに少しずつ動かして撮影することによって、動いているように見せるコマ撮りアニメーション(ストップモーション・アニメーション)。日本を代表する作家・岡本忠成と川本喜八郎の名作から、さまざまな技法で作られた短編をセレクション。まるで美術工芸品が動き出したような、魔法のような映像世界をお楽しみください。
上映日時:10.14(土)14:00、10.15(日)11:30

【プログラム・10】

初期短編集《蘇ったアニメーション》 (合計約39分)6作品上映
~「蘇ったフィルムたち~東京国立近代美術館フィルムセンター復元作品特集」より
※東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

【前半3作品・★弁士+伴奏つき上映】弁士:片岡一郎/ピアノ伴奏:上屋安由美

1)なまくら刀(塙凹内名刀之巻) [デジタル復元版・再染色版] 

1917年/作画:幸内純一/35mm/無声/染色/1:1.33/約4 分[20fps上映]

2)浦島太郎 [デジタル復元版・再染色版] 
1918年頃/作者不詳/35mm/無声/染色/1:1.33/約1 分36秒[20fps上映]
3)漫画 瘤取り
1929年/監督:青地忠三・作画:村田安司/35mm/無声/染色/1:1.33/約12 分36秒[20fps上映]

【後半3作品・音声版にて上映】
4)黒ニャゴ [デジタル復元版]  
1929年/作画:大藤信郎/35mm/3分[24fps]/モノクロ
5)茶目子の一日 [デジタル復元版]
1931年/監督:西倉喜代治/35mm/7分[24fps]/モノクロ
6)幽霊船(YUUREISEN)[デジタル復元版・三色分解光学合成]
1956年/監督:大藤信郎/35㎜/11分[24fps]/カラー

上映日時:10/22(日)14:00~上映 /15:00~講演

※上映後に講演あり(15:00~) ※講演のみの入場は無料
講演「アニメーション史を訪ねた男、100年を語る」
ゲスト:山口且訓(アニメーション研究家)、聞き手:原口正宏(アニメーション研究家)

国産アニメーション100周年を記念して、現在発見されている最古のアニメーション映画『なまくら刀』(1917)などの初期短編作品の弁士・伴奏付き上映ならびに講演会を行ないます。

【出演者プロフィール】
弁士:片岡一郎
2002年、澤登翠に入門。国内外で活動。公演を行った国は米、独、伊、仏、中をはじめとして16ヵ国。2016年に活動写真弁士として戦後初の歌舞伎座出演を果たした。これまで公演した無声映画は約350本。無声映画フィルム発掘にも取り組んでおり『Our Pet』『私のパパさんママが好き』等のロストフィルムを発見した。
ピアノ伴奏:上屋安由美
愛知県名古屋市出身。桐朋学園大学作曲科卒業、同大学研究科修了。2012年より無声映画の楽士としても活動。2015年ポルデノーネ無声映画祭、2016年北京国際映画祭、東京国際映画祭、2017年タイ無声映画祭などに出演。

主催:川崎市市民ミュージアム、東京国立近代美術館フィルムセンター、一般社団法人コミュニティシネマセンター/
協力:松本夏樹、映像文化製作者連盟 
〇《蘇ったフィルムたち》の企画は、フィルムの上映環境を確保するための「Fシネマプロジェクト」の一環として、コミュニティシネマセンターの会員館を中心に全国で実施するものです。