いじめ、スクールカースト、家庭環境の格差‐‐大人は子どもたちの世界にどう関わるべきなのか?
新学期はじめの今だからこそ、映画「わたしたち」を観ていじめについて考えよう!

【荻上チキ(評論家/ NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事)×ユン・ガウン(監督)】
映画『わたしたち』試写会トークイベントレポート

【日時】 9月6日(水)  
【場所】 シネアーツ試写室
【登壇者】
 荻上チキ
(評論家、TBSラジオ『Session-22』/ NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事)
 ユン・ガウン(監督)

◆「いじめ」をテーマにした映画の成り立ち

ユン・ガウン監督:この物語はわたしの個人的経験が元になっています。小学校の頃、心から大好きな友だちがいたのですが、やがてお互いに裏切り合い、傷付けあう関係になってしまった。その事がずっと私の心の傷として残っていて、大人になった今でも引きずっています。そして成長するにつれ、私と同じようなケースで悩んでいる人がたくさんいる事を知りました。そこで、この辛く激しい経験を映画にしたいと思い、製作をスタートしました。

(左より)荻上チキ(評論家/ NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事)×ユン・ガウン(監督)

◆荻上チキさんの質問:「韓国で「いじめ」という日本語がそのまま使われているって本当ですか!?」

ユン・ガウン監督:わたしが子供の頃は「いじめ」という日本語をそのまま使っていました。一人のターゲットを決めて、その子を何人も寄ってたかって仲間外れにする状況を指しています。そうした現象がたくさん起きるようになってきて、ここ最近10~20年の間に韓国語の「ワンタ」という言葉が使われるようになりました。今はいじめ問題というときに、「ワンタ問題」という風に使います。今は子供たちの間でも「ワンタ」という言葉はよく使われますし、映画の中でも使っています。

◆映画『わたしたち』で描かれるいじめの状況について~日韓でのいじめ事情の違いと共通点

荻上チキさん:日本のいじめは、小学校の中高学年が最も多くて、暴力というよりは陰口、無視、嫌なあだ名をつける、嫌な役を押し付けるなどのケースですね。休み時間などの先生がいない時間帯にいじめが起きる事が多いです。映画『わたしたち』の中で描かれているいじめ描写は、こんなにも日本と同じなのか、こんなにも自分の経験と同じなのかと感じるくらい、わたしたちが既視感ある学校空間が描かれている。暴力によるいじめが多い欧米と違って、東アジアのいじめは特徴が似通っていますね。

ユン・ガウン監督:日本の映画やドラマが好きでよく見ますが、日本と韓国はよく似ているなと感じます。集団を大切にする東アジアの文化においては、集団の中であまり目立ちたくない、目立つとターゲットにされるという、そんな理由もよく似ていると思います。この文化圏にいるからこそ醸し出す雰囲気、集団特有の関係性や行動性なども共通点が多いのではないでしょうか。この映画を作った当初は、これは私だけの個人的な体験で、周りの人に分かってもらえないかもと不安もありましたが、韓国で公開した時に、私もこんないじめ経験があった、辛い思いをしたと言ってくれる人がたくさんいて、そして日本で上映した時にも、同じような経験をしたと言ってくれる日本の方がいらっしゃいました。この映画には、人間社会であればどこでも起きうる事、人間であれば誰でも感じるような事が描かれています。皆さんが共感して下さる姿を観て、私だけの辛い体験ではなかったと、心が慰められました。

◆荻上チキさんが語る映画『わたしたち』の見どころ

この作品は子どもたちの表情がとても豊かで、子どもたちにしか表現できない世界観を映し出しています。ただ啓蒙的な映画ではなく、様々な美しい表現、シーンがあり、子どもたちの表情の豊かさに魅了されます。いじめにしても、誰かが悪人として意図的に何かを行ったというのではなく、些細なすれ違いの連鎖で起きてしまう事が、子どもたちの目線の動きといった表情の一瞬で表現されている。その瞬間瞬間をぜひ見落とさないで欲しい。この映画に込められた様々な社会的なメッセージも含めて、いろいろなところに持ち帰っていただける作品です。個人的に「先生サイテー、弟最高!」という感想があります(笑)。きっと皆さん、同じ感想を持つと思いますので、ぜひ楽しみに映画をご覧ください。

映画『わたしたち』 
友だちになれる、何度でも。“いじめ”という目に見えない悪魔に、少女たちはどう向き合うのか--。
『オアシス』『シークレット・サンシャイン』名匠イ・チャンドンが認めた若き女性監督が描く"なかよし"二人の成長物語-
人生で初めて経験する友情、裏切り、嫉妬、すべての感情に戸惑い葛藤する子どもたちの姿を生き生きと鮮烈に映し出す本作『わたしたち』。
誰もが通り過ぎてきた子どもたちの世界を通して、いじめやスクールカースト、家庭環境の格差など、現代が抱える社会問題を盛り込みながら、他者との繋がりの中で生きる「わたしたち」の関係について問いかける本作は、第66回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門ノミネートなど数々の国際映画祭に招請、「世界中の人々が出会うべき傑作(ズリーン国際映画祭)」と絶賛。子どもたちの表情と表情を追うだけで濃密でドラマチックな展開のを見せる、比類なき傑作の誕生!

◆是枝裕和監督から本作『わたしたち』への応援コメントを頂きました↓
「主人公の少女ソンから目が離せなかった。ファーストカットからずっとだ。 彼女の戸惑い、友情への期待、そして、落胆。
どんな些細な表情の変化も見逃すまい、と、監督は強靭な覚悟で寄り添った。 大好きな作品。」

名匠イ・チャンドン監督が企画!韓国の俊英ユン・ガウン監督『わたしたち』予告

youtu.be

監督・脚本:ユン・ガウン  
企画:イ・チャンドン
出演:チェ・スイン、ソル・へイン、イ・ソヨン、カン・ミンジュン、チャン・ヘジン
2015年|韓国映画|カラー|94分|1.85:1|DCP
(C)2015 CJ E&M CORPORATION and ATO Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
提供:マンシーズエンターテインメント 
配給:マジックアワー、マンシーズエンターテインメント

9月23日(土・祝)よりYEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー