第 69 回カンヌ国際映画祭でフィリピン映画界に三大映画祭で初めての主演女優賞をもたらした『ローサは密告された』が絶賛公開中です!

先週末 8/12 より上映が始まった関西では満席の回が出るなど、この「ヤバさ」を目撃したい映画ファンが劇場に殺到ー

©Sari-Sari Store 2016

フィリピ ンの麻薬撲滅戦争の裏側を見るかのような本作に、公開後には、「ものすごくリアル」「スクリーンの 向こうで街自体が息づいているかのよう」「フィリピン警察のやらかし具合は酷いなんてもんじゃな い」「とても力強い映画で、観応えあり」と熱量たっぷりの感想が SNS に並んでいます!

その『ロー サは密告された』に映画評論家・柳下毅一郎さんとデザイナーで映画ライターでもある高橋ヨシキさ んが唸った!このおふたりによる熱量高いトークイベントを開催いたしました。

本作は、第 69回カンヌ国際映画祭で、クリステン・スチュワート、シャーリーズ・セロン、イザベル・ ユペ ールらを抑えて、ローサを演じるジャクリン・ホセにフィリピン初の主演女優賞をもたらした。

監督は、45 歳のデビュー作「マニラ・デイドリーム」で 2005 年ロカルノ映画祭ビデオ・コンペ部門金豹賞を受賞し、 「第3黄金期」と呼ばれるフィリピン映画界を牽引しているブリランテ・メンドーサ。
世界三大映画祭のコンペ常連であり、カンヌ国際映画祭監督賞のほか、世界中で 50 を超える賞を獲得し、タランティーノやショーン・ペンがその才能を絶賛するなど各国の映画人から高い評価 を得ている。

今回、ご登壇いただいたのは、「衝撃的な一本」「(メンドーサ監督の名を知らない日本人も)この傑作でそれも大きく変わるかもしれない」と評した映画評論家・柳下毅一郎さんと「スクリーンの背後に広がる世界の手触りに圧倒される」「(登場人物たちの)問答無用の実在感」と評したデザイナーであり、映画ライターの高橋ヨシキさん。
本作の映画的強度・衝撃をあますことなく語っていただきました。

【イベント概要】
日時:8 月 20 日(日)16:00 の回上映終了後(上映時間 110 分)
トークイベント 17:50~18:20
場所:シアター・イメージフォーラム(渋谷区渋谷2丁目10−2)
登壇者:柳下毅一郎さん(映画評論家)×高橋ヨシキさん(デザイナー、映画ライター)

ナチス政権を彷彿?!トランプ、安倍ちゃんより面白いんじゃ?

本作の感想を聞かれ、熱量いっぱいに語り始めたふたり。
柳下「フィリピンのニュースは、いま一番気にしていて。先週、フィリピンが“大虐殺週間”だったそうで、80 人ぐらい殺されてるんですよね、不謹慎な言葉ですけれど、流れてくるニュースがぶっ飛んでてスゴイ。そんなフィリピンの状況を追ってるので、映画を観た時、「やっぱり!」と思えた」

高橋「ドキュメンタリーのように撮られていることから“フィリピンの現実”を突きつけ られた。とにかくフィリピン、大変なことになってますからね。あと説明過多な映画 が苦手なのだけれど、本作は不親切なぐらい語らないのも良かったですね」

左より 高橋ヨシキさん(デザイナー、映画ライター) 柳下毅一郎さん(映画評論家)

柳下「ドゥテルテが去年、大統領に就任して、いまの世の中は安倍ちゃんやトランプ政権で「不景気が人を殺す」だとか比喩されるけど、ドゥテルテはホントに殺してるって時点で、フィリピンはやばい。「犯罪は一掃 しました!」って、そりゃ殺してるんだもん、一掃できるよね(笑)」

高橋「ナチス政権が「事件は減りました」って言ってたのと同じ状況だよね(笑)あれ、ナチスの犯罪は数えないから」超一級の撮影・キャストの演技に唸った! 高橋「僕は三半規管が弱いんで「すっごくいい映画だな」と思いながらカメラワークに酔いました。警察の裏に入ってまた出てきて、土地や部屋が一連として繋がっている感じが臨場感があっていい」

柳下「芝居もおそらく大きな段取りした決めてないと思うんですよね。麻薬がバレるシーンは、アドリブなのに、俳優たちの対応力でドラマが作られてることを感じた。役者の技量すごいですよ」

高橋「警察が踏み込んできたときに、ものすごくまごまごしてるんですよね、あれが普通のドラマじゃなかなか見れない演技で、もの凄くリアルでしたね」

柳下「ドキュメンタリー的で、出ている人も素人っぽくて、カメラを振り回すように撮られている。ピンボケもあるし、ほんとにドキュメンタリ ーを観ているかのよう。でもそれが全部“狙い”なのだから技術はめちゃくちゃ高度」

高橋「必要なものは絶対映っているからね」

柳下「主演のおばちゃんもその場にいた人でしょ?っていうほどにリアルだよね」

実はバンドの KISS 好き?!ローサが着る T シャツの意味は...

高橋「(バンドの)KISS の T シャツもいい味だしてるよね。旦那さんがポロシャツを着ているから余計に目立って。日本でも、何でその T シャツきてるの?!ってい う人いますよね」

柳下「大阪のおばちゃんが猛禽類の T シャツきているのとおんなじだよね (笑)」

高橋「とかいって、めちゃくちゃローサが KISS が好きだったらどうしよう、と思った んだけど(笑)これが別のバンドとかだったら別の意味とか考えちゃうけど、 KISS の何もない感じがいいよね」

柳下「確かにクイーンでだとダメだよね。この狙ってもできないような、異様なリアリティがいいと思った」

麻薬戦争は全世界的に敗北宣言!もはや麻薬は根絶やし不可能! 衝撃的な現実が描かれる本作。「『カルテル・ランド』や『皆殺しのバラッド』とか麻薬映画が多いんですが、麻薬はどうしたら根絶やすことが出来るんでしょうね?」という話題に
「それは“無理”という結論が出ました」と高橋さんから衝撃的な言葉が。

左より 高橋ヨシキさん(デザイナー、映画ライター) 柳下毅一郎さん(映画評論家)

高橋「世界で撲滅戦争を続けていましたが、ここ 30 年で一個も成果があがらず、協議会が公式の声明をだしたんですよ。それに続く形で、アメリカなどが宣言して。全世界的に麻薬の“撲滅戦争”に敗北宣言をしてます。フィリピンは、ドゥテルテが全部殺したら解決するつもりかもしれないけれど、麻薬は撲滅できないことは世界的に認められました。麻薬によって引き起こさ れる犯罪より、麻薬が手に入らないことによって引き起こされる犯罪のほうがヒドイということになってしまったんです」

柳下「つまりは禁酒法と同じ原理。アルカポネなどのマフィアが力をつけたように、 組織が、より一層の力を増してしまうだけなんだよね。力を削ぐにはある程度合法化するしかない、という流れに向かっています」

高橋「日本で流通しているシャブは北朝鮮からきてるんじゃないですか?万景峰号で...」

柳下「万景峰号ではこないよ!対馬のあたりで海に落としてやってんだよ...(笑)日本人がシャブを広めたから、フィリピンでもシャブ っていう名前で広まっているんだよね。迷惑かけて申し訳ないね」

フィリピンの鬼才ブリランテ・メンドーサ監督『ローサは密告された』予告

youtu.be

監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス
2016/フィリピン/110 分 ©Sari-Sari Store 2016
配給:ビターズ・エンド

シアター・イメージフォーラムほか大ヒット上映中!