“怪物的映画作家”と呼ばれ、と呼ばれ、ヴェネツィア、ベルリン、カンヌをはじめ世界の映画祭を次々と制覇してきたラヴ・ディアス。
2016年2月のベルリン国際映画祭で、前作『痛ましき謎への子守唄』が銀熊賞を受賞、続く同年9月のヴェネツィア国際映画祭で最新作『立ち去った女』が金獅子賞に輝き、同じ監督が、同じ年に世界三大映画祭の2つを制覇する快挙を成し遂げた。いま世界が最も注目する映画監督の一人である。

本作の舞台となるのは、奇しくも本年度ヴェネツィア国際映画祭のクロージングを飾る北野武監督が、『HANABI』で金獅子賞を獲った1997年。
光と闇、善と悪、罪と赦し。人間の本質を炙り出す、美しき復讐のドラマ
殺人の罪で30年間投獄された無実の女。真の黒幕は、彼女のかつての恋人だった。
女は、自分を陥れた男を追って孤独な復讐の旅に出るー。
映画『ショーシャンクの空に』の原点となった、ロシアの文豪レフ・トルストイの短編に着想を得た本作。
フィリピン現代史を背景に、哲学、宗教、寓話的要素、そして豊かな詩情を織り込み、憎しみと赦しの間で揺れ動くヒロインの心情と善と悪を合わせ持つ人間の本質をじっくり描き出すヒューマンドラマとなっている。

平均で5~6時間、時に9時間に達する作品を生み出すなど、観客の度肝を抜く「長尺」で有名なラヴ・ディアス。
そのとてつもない長さにも関わらず、観客はディアス独特のリズムがもたらす“魔術的魅力”に引き込まれ、メリル・ストリープ、サム・メンデスなどハリウッドの映画人らも巻き込んだ《ラヴ・ディアス中毒》が世界中で増え続けている。
本作は3時間48分の長さではあるが、「ラヴ・ディアス作品にしては奇跡的な短さ」と話題になるほど。比較的観やすい上映時間で、ラヴ・ディアス入門編としてもぜひお薦めしたい一本。
この愉しみを知ったら、もう普通の長さでは物足りないかもしれない。


予告編に先駆け公開される特報では、ラヴ・ディアス作品の最大の特徴であり、「最高に美しい」と世界が絶賛する《ワンシーン・ワンカット》の場面を4つのバージョンで公開。
復讐の旅に出たヒロインの道のりが徐々に明かされていく。

“怪物的映画作家”ラヴ・ディアス『立ち去った女』特報「女は帰ってきた編』

“怪物的映画作家”ラヴ・ディアス『立ち去った女』特報「女は復讐を誓う」編

女は何処に向かうのか。-至福

“怪物的映画作家”ラヴ・ディアス『立ち去った女』特報「女は何処に向かうのか」編

『立ち去った女』公式サイト:http://www.magichour.co.jp/thewoman/




【STORY】
殺人の罪で、30年もの間投獄された無実の女ホラシア(チャロ・サントス・コンシオ)。真の黒幕は、彼女のかつての恋人ロドリゴ(マイケル・デ・メサ)だった。
出所したホラシアは、自分を陥れた男を追って、孤独な復讐の旅に出る。彼女の前に現れたのは、アヒルの卵売りの男、物乞いの女、そして心と身体に傷を抱えた謎の“女”(ジョン・ロイド・クルズ)。困っている者、弱い者たちに優しく手を差し伸べ、惜しみない愛を注ぐホラシア。そんな彼女を慕う者たちの助けで、復讐すべき男との距離は徐々に縮まっていく…。

監督・脚本・編集・撮影:ラヴ・ディアス
出演:チャロ・サントス・コンシオ、ジョン・ロイド・クルズ、マイケル・デ・メサ
2016/フィリピン/タガログ語/モノクロ/228分/1.85:1/DCP 原題:Ang Babaeng Humayo/英題:The Woman Who Left 日本語字幕:細田治和
配給・宣伝:マジックアワー