梅雨明けとともにこの夏、是非観て頂きたい名画が遂に大阪にやってまいりました。
皆様は《バベルの塔》をご存知ですか?
なんだかジブリ映画「天空の城 ラピュタ」みたいだったり、イタリアのピサの斜塔のようだったりしますね。
ですが、実はピーテル・ブリューゲル1世が描いた《バベルの塔》は、旧約聖書「バベルの塔」の物語をもとに描かれた壮大なスケールのファンタジー(創造世界)だったのです。
天まで届く塔を建てたいと願う人々の野心が神の怒りに触れ、遂に塔が完成することはありませんでしたが、塔の建設に携わる人々や、工事中の重機、周りの風景や、港、船など、細部まで精密、繊細に描かれています。

絵画はそれまで教会の宗教画や、王侯貴族の記念碑的な肖像画などが主流でしたが、ブリューゲルは農民の働く姿や、庶民の日常生活を描きました。
この《バベルの塔》でもブリューゲルは、天に届く塔を力強く築き上げる人々を描き、神への冒とくとは言え、大いなる挑戦に挑む人間の姿を描こうとしたのかもしれません。
《バベルの塔》は、今回、オランダを代表する美術館のひとつボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館(通称ボイマンス美術館)より24年ぶりに来日しました。

今回の展覧会では、ブリューゲルの作品をはじめ、16世紀ネーデルラント(現在のベルギーとオランダにまたがる地方)美術を中心とする名品、約90点が紹介されています。
なかでも《快楽の園》で有名なオランダを代表する、奇想天外の画家ヒエロニムス・ボスの《放浪者(行商人)》と《聖クリストフォロス》は日本初公開となり、見どころ満載です。
皆様、是非、この機会に国立国際美術館でご鑑賞ください。

ブリューゲルの傑作 「バベルの塔」

旧約聖書「バベルの塔」の物語
かつて世界中の人々は同じ言葉を使って同じように話していました。シンアルという地に住み着いた
人々は、れんがとタール(しっくいやアスファルトなど諸説ある)で天まで届く塔を建て、町を有名にしようと試みました。しかしその野心は神の怒りに触れ、神は人々の言葉を一つではなく、互いの言語が聞き分けられないようにバラバラにし、混乱させました。神は人々を全地に散らし、塔は完成しませんでした。この町の名はバベルと呼ばれました。

ピーテル・ブリューゲル1世は「バベルの塔」の物語をもとに絵画を描きましたが、ボイマンス美術館の館長 シャーレル・エックス氏は次のように述べています。「ブリューゲルは神の怒りより、むしろ人々の挑戦のほうを選びました。」

わずか縦59.9センチ、横74.6センチの《バベルの塔》に、約1400人の人々が描かれていて、わずか1~3ミリの人間を、ブリューゲルは繊細に描いています。
塔の上層部の細い足場の上で働く人々や、白い粉にまみれた労働者達や、塔での生活が垣間見える洗濯物など、細部までこだわって描かれ、観る人の想像力を掻き立てます。
まさに、細密描写が得意なブリューゲルだからこそ成しえた超絶技巧です。
また、ブリューゲルは、地平線まで見渡すパノラマを背景に巨大な塔を画面いっぱいに配置しました。このことにより更なるスケール感が演出されているのです。

ピーテル・ブリューゲル1世 「バベルの塔」 1568年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヨハネス・ウィーリクス 「ピーテル・ブリューゲル1世の肖像」(部分) 1600年出版 エングレーヴィング
Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ブリューゲルの鋭い観察眼と写実性

伝説の「バベルの塔」を前例に無いかたちで描いた巨匠ブリューゲルには、細密に描くための鋭い観察力がありました。

ブリューゲルは、聖書の物語だけでなく、農村で働く人々の暮らしを積極的に描き、「農民の画家」とも呼ばれました。
16世紀の人々の風俗が詳細に、写実的に描かれています。
ブリューゲル以前に活躍したネーデルラントの画家たちは作品の主題である物語を画面手前で展開させつつ、背景には広大なパノラマ風景を描いていました。
ブリューゲルもこの伝統を受け継ぎ《バベルの塔》をはじめ様々な作品で、遥か遠くを見渡すような壮大な光景を描く技術を発揮しています。

ピーテル・ブリューゲル1世、彫版:フランス・ハイス 「アントウェルペンのシント・ヨーリス門前のスケート滑り」 1558年頃
エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ピーテル・ブリューゲル1世 「野ウサギ狩り」 1560年 エッチング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

農民の日常を描いた先駆者 ヒエロニムス・ボス

それまでの教会や聖書の宗教絵画から、人々の日常を描く風俗画の先駆けとなったのが、ヒエロニムス・ボスです。

《放浪者(行商人)》では、行商の旅人の一場面を描いていますが、背景の家には抱き合う男女が描かれ、娼館であることがうかがえます。貧しい身なりの旅人は娼館に立ち寄りたいという欲望を持っているのか?それともただ通り過ぎようとしているだけなのか?或いは既に立ち寄ってしまったことを後悔しているのかもしれません。
旅人の持ち物や、服装などから、貧しくて、放浪しているというストーリーが読み解けます。
建物の屋根に突き刺さった花瓶や、鳩小屋、白鳥の看板などは、そこが娼館であることを暗示しています。
これらの暗示的要素はボスの作品の特徴のひとつです。
誘惑に揺れる人間が迫られる『人生の選択』という象徴的意義を持った作品です。

《聖クリストフォロス》という作品でもボスならではの謎めいたモチーフが、ふんだんに用いられています。
中央の巨人が子どもを背負って危険な川を渡っています。子どもがだんだん重くなるので、巨人が子どもに理由を尋ねると、子どもは「世界と世界の創造者をともに背負ったから」と答えました。
そこで巨人は、実は子どもがキリストである事を知ります。
以来、巨人は「クリストフォロス(キリストを担ぐもの)」と名乗ったというキリスト教の聖人伝をもとに描かれました。
巨人が持つ杖に生命が宿り、小さな葉が生えているのは、子どもがキリストであることを示しています。熊が猟師に殺され、木に吊るされているのは悪魔を打ち破ったことの象徴です。
水差しの形をした樹の上の住居や、廃墟の怪物も見られます。

ヒエロニムス・ボス 「放浪者(行商人)」 1500年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヒエロニムス・ボス 「聖クリストフォロス」 1500年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands(Koenigs Collection)

ヘンドリック・ホンディウス1世 「ヒエロニムス・ボスの肖像」(部分) 1610年 エングレーヴィング
Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

巨匠 ボス・リバイバル

ボスの死後も作品の人気は衰えることなく、数多くの画家がボス作品を模倣しました。
《聖アントニウスの誘惑》はボスが描いた傑作を忠実にコピーした逸品です。

ブリューゲルもボスのモチーフを使って構成された《大きな魚は小さな魚を食う》という版画を制作しました。足の生えた魚や空飛ぶ魚などは、明らかにボスのスタイルを模倣したものです。
「大きな魚は小さな魚を食う」とは、「小さな民衆は大きな権力に飲み込まれてしまう」という諺です。奇想天外なボス風のモンスターが、ネーデルラントの多くの画家に用いられました。

ヒエロニムス・ボスに基づく 「聖アントニウスの誘惑」 1540年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ピーテル・ブリューゲル1世、彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン 「大きな魚は小さな魚を食う」 1557年
エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ボスとブリューゲルを取り巻くネーデルラントの美術

ほとんどが作者匿名であるネーデルラントの彫刻は、絵画に比べてそれほど知られていませんが、実際には、質の高い木彫を作る名匠たちが国内外の教会からの需要に応えていました。
そのような彫刻家が製作した祭壇にボスが描いた宗教画が組み込まれることもありました。

中世の時代にはキリスト教の布教のために絵画が用いられ、キリストには小さな髭をつける、などの
約束事がありましたが、ネーデルラントの画家たちは次第に自分たちの表現を追い求めて描くようになりました。
16世紀に入ると、北ネーデルラントのホラント地方でも、ルカス・ファン・レイデンという卓抜した版画の技術と人物の感情表現に優れた油彩画法を兼ね備えた画家が現れ、遠くイタリアまでもその名声が届きました。16世紀に聖書や聖人の物語を描いていた画家達に変化が起き、庶民の日常生活や風景を描くようになりました。この変化の流れは、ボスやブリューゲルに繋がっていったのです。 ヨァヒム・パティニールは、風景を描いた先駆的な画家の1人です。パティニールの宗教画の中では聖書の登場人物はとても小さく、力強い風景描写の中に埋もれるかのように描かれています。

アルント・ファン・ズヴォレ(推定) 「四大ラテン教父(聖アウグスティヌス、聖アンブロシウス、聖ヒエロニムス、聖グレゴリウス)」 1480年 オーク材 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ディーリク・バウツ 「キリストの頭部」 1470年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ルカス・ファン・レイデン 「ヨセフの衣服を見せるポテパルの妻」 1512年頃 油彩、板
Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヨアヒム・パティニール 「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」 1520年頃 油彩、板
Loan Netherlands Cultural Heritage Agency,Rijswijk/Amersfoort, on loan to MuseumBVB, Rotterdam, the Netherland

今回の展覧会では、16世紀ネーデルラントの巨匠、ボスとブリューゲルの魅惑のファンタジーの世界がご覧いただけると思います。
壮大なスケールでありながら、細部まで緻密に描かれた伝説の「バベルの塔」、漫画家の大友克洋氏が描く塔内部も話題となっています。

東京藝術大学による「バベルの塔」巨大複製画や、CG映像もお楽しみいただけます。
また、現存する油彩画が、ボスは約25点、ブリューゲルは、約40点と、わずかで、貴重であるにも関わらず、ボイマンス美術館のご協力のもと、今回の展覧会が開催されました。
是非、この機会にご堪能ください。

展覧会グッズも充実

ブリューゲル『バベルの塔』展にあわせ、「バベル盛り」メニューが続々登場

バベル炒飯 (四川料理 御馥)

聳え立つバベル盛り ローストビーフカレー丼(THE STRIPE CAFE by TORABAN)

バベルロッシーニ(BOOCHiC)

バベル盛り」メニュー提供店舗 ※抜粋
◇THE STRIPE CAFE by TORABAN
◇ダイビル本館:BOOCHiC(ブーチック)
◇中之島ダイビル:四川料理 御馥(イーフー)/地酒居酒屋 常あん
◇中之島フェスティバルタワー:FESTIVAL KITCHEN
◇中之島フェスティバルタワーウエスト:サン・マルシェ

展覧会概要

会期:2017年7月18日(火)~ 10月15日(日)
会場:国立国際美術館 〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-2-55

開館時間 :10:00 ~17:00、金曜日、土曜日は21:00まで(入場は閉館の30分前まで)

休館日:月曜日 ※ただし、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開館

主催:国立国際美術館、朝日新聞社、朝日放送、BS朝日

後援:オランダ王国大使館、オランダ政府観光局、ベルギー・フランダース政府観光局

協賛:ダイキン工業、大日本印刷、トヨタ自動車、みずほ銀行、三井物産、
   京阪ホールディングス、住友電設、大和ハウス工業、竹中工務店

特別協力:東京藝術大学COI拠点

協力:KLMオランダ航空、日本貨物航空、ダイキン工業現代美術振興財団

お問合わせ:国立国際美術館 06-6447-4680(代)

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展@大阪 cinefilチケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展@大阪 cinefilチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。
☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2017年9月17日 24:00 日曜日
記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
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