大河ドラマ「毛利元就」や、NHK 連続ドラマ小説「ひらり」など、数々の作品の脚本を手がけヒット作を世に 送り出してきた、内館牧子原作によるベストセラー小説「終わった人」が東映配給にて映画化されることが発表されました。

主演は、大手銀行のエリートコースを外され、子会社へ出向となりそのまま定年を迎え、世間から「終わった人」と思われるようになった主人公・田代壮介役に舘ひろし。
かつての輝きを失った夫と向き合えない美容師の頑固妻・千草役を黒木瞳が演じます。

本作のメガホンを取るのは、『リング』、『仄暗い水の底から』など日本ホラーの名匠・中田秀夫。今回は初のコメディ映画に挑戦となり、実はメロドラマが好きだと言う中田監督自らが、原作に惚れ込み企画。
本作を「本当に撮りたかった作品」と語り、登場人物の人情・愛情があふれる暖かい空気感と、シニカルな喜劇が絶妙にマッチした作品となります。

原作の舘が演じる田代は、エリート街道から転落し、仕事に未練を残したまま定年を迎え、「ジジィ扱いすんな!」と、ダサくもがむしゃらにもがく、どこか憎めない男性。
黒木が演じるその妻・千草は、そんな夫に呆れ、相手にすらしないが、実はしっかりその様子を気にかけている頑固でも心優しい女性。

この心理描写の多い夫婦関係を、中田監督はハートフルな大人の上質コメディに描き上げていいきま
す。

中田秀夫監督と舘ひろし、黒木瞳

4 月に一部シーンのみ撮影した、主演の舘ひろし、ヒロインの黒木瞳、監督の中田秀夫、原作者の内館牧子からのコメントが到着しました。

■舘ひろし コメント

30年間演じた“刑事”を定年退職してから“再就職先”を探していました。
今度の“職場”はハーレーに乗ってショットガンを打つシーンとは無縁です。主演として関わる映画は『終わった人』 というかなり辛辣なタイトルですが、定年退職した私がコミカルに見えて、笑えて、最後にジーンとくる映画になると思います。どうやって人生を終わっていくかは、誰にとってもいずれ訪れる時に向かって、誰とも違う自分なりの時の過ごし方を見つけていくことだと思ってます。 私自身は、この物語を“再挑戦”と定義して演じます。ですから、実際に、もうかなり歳ですが、いやこの歳になっ たからこその、新しい“舘ひろし”をご覧いただけるのではないでしょうか。

中田監督とは初めてのお仕事、内館牧子さんの原作映画は二度目、黒木瞳さんとは三度目の共演、縁ある方々に囲まれ、とても良い作品になる手応えがあります。撮影が待ち遠しいです。

舘ひろし

《舘ひろし プロフィール》
1950 年 3 月 31 日、愛知県出身。76 年に東映映画『暴力教室』で俳優デビュー。その後 82 年に出演したドラマ「西部警察」(79〜/EX)をきっかけに 83年に石原プロモーションに入社。近年は神田正輝とW主演の「クロスロード」(16/NHK BS プレミアム)に出演し、現在放送中の続編、「クロスロード〜声なきに聞き形なきに見よ〜」でも主演を続投している。内館氏のタッグは、映画『義務と演技』から 20年ぶり 2作目。黒木氏とは「刑事貴族」(90/NTV)、「新宿鮫 II 屍蘭」(96/NHK)「無影燈」(96/TX ドラマスペシャル)に続き4作目、20 年ぶりの共演。また、中田監督とは初の作品である。

■黒木瞳 コメント

中田秀夫監督とは三作品目の映画となります。
しかも今回はホラーではない。定年を迎えた夫とその妻のサバイバル。考えてみれば、ああ、これもれっきとした夫婦のホラー話かもしれないなと興奮して撮影初日を迎えました。
青春朱夏、そして白秋の年代となった夫婦を、舘ひろしさんと共に演じることができるなんて最高に嬉しいです。
舘さんとは20代の頃からご一緒しているので、安心感は半端ないです。その懐に飛び込み撮影に臨みたいと思います。監督自ら原作に惚れ込まれ映画化になったと伺っております。「撮影がないときは、“終わった人”みたいな生活をしているんです」と話されるお茶目な監督と、キュートな舘ひろしさん、期待に胸がいっぱいです。

黒木瞳

《黒木瞳 プロフィール》
1960 年 10 月 5 日、福岡県出身。宝塚歌劇団月組のトップ娘役を務め、退団後、86年に東映映画『化身』で映画初主演。近年では舞台「京の螢火」(17/明治座)に出演、映画『フェリシーと夢のトゥーシューズ』(17)で声優を務めるなど、その活躍ぶりは留まることを知らない。テレビ版「義務と演技」(96/TBS)で内館氏とタッグを組んでおり、今作は 20 年ぶり 2 作目。舘とは 20 年ぶりの共演。また、中田監督とは『仄暗い水の底から』(02)、『怪談』(07)に続く3作目のタッグ。

■中田秀夫 コメント

「ホラー映画の中田」が何故『終わった人』の映画化を熱望したか?それは、「一目惚れ」だった。「定年って生前葬だな」の冒頭の一行、花束を持った何か言いたげな主人公の装画に完全にヤラレた。私がそれらに「ピンと来る」年齢に達したからか?だが実は、この主人公は「終わった」後も、社会で必要とされ、仕事で戦うことを熱望し、懸命に足掻く。その姿にも惚れた。
映画化に当たっては、第二のキャリアで出会う、様々な相貌の人たちとのドタバタ喜劇感、お互い一筋縄ではいかない主人公夫妻のリアルな愛情関係に重心を置いた。(この愛情にも大きな亀裂が走るのだが・・・)今、参照のため洋画のロマンティック・コメディを見続けている。テンポ良い面白おかしさが「気持ちは若くて柔らか」である『終わった人』の「生命線」だと思う。
惚れ込んだ内館さんの原作を基に、脚本の根本さんたちとは議論を尽くした。初タッグを組ませていただく舘さん、三本目の黒木さんたちと共に、観客の皆さんが「そうだ!」と膝を打つ「人間喜劇」を紡いでいきたい。

《中田秀夫監督 プロフィール》
1961 年 7 月 19 日、岡山県出身。「本当にあった怖い話」(92/EX)で監督デビュー。『女優霊』(96)、『リング』(98)、 『仄暗い水の底から』(02)と、日本映画界に「ホラー」旋風を巻き起こし、『ザ・リング2』(05)ではハリウッドデビューも果たす。ホラー専門の監督と思われがちだが、本作を「本当に撮りたかった作品」と語り、自ら原作に惚れ 込んで企画した。近年では『ホワイトリリー』(16)で 28 年ぶりにロマンポルノに携わり、現在放送中の「屋根裏の恋人」(東海テレビ/17)でも監督を務めている。 舘とは今回初の作品であり、黒木とは『仄暗い水の底から』(02)、『怪談』(07)に続く 3 作品目となる。

■内館牧子 コメント

「中田秀夫監督が、この原作をぜひ撮りたいとおっしゃっています」
こう連絡があった時、からかわれているのかと思った。卓越したホラー作品で世界を魅了している中田監督が、まさか『終わった人』を!? 本当のことだと知り、 これは予測ができない面白さになるとドキドキした。同時に「シナリオは私が書くべきではない。オール中田組で」 と考えたのは当然である。
その後、主人公は舘ひろしさん、その妻は黒木瞳さんとうかがい、もう早くも横綱相撲で勝ったと思った。私はお二人とは、過去に仕事をご一緒しており、原作をさらにふくらませて下さる力量を実感させられている。
監督、脚本、スタッフ、キャストのベストメンバーが、日本の原風景を残す盛岡と、生き馬の目を抜く東京を舞台に、「人は終わらないものだ」という頼もしさをお届けできるのは間違いない。

内館牧子「終わった人」(講談社刊)

《内館牧子 プロフィール》
1948 年 9 月 10 日、秋田県出身。会社員を経て、1988 年脚本家デビュー。女性ならではの鋭い目線で作品を手掛ける。 「ひらり」(NHK/93)、「毛利元就」(NHK/97)などの脚本を手掛け、1995 年に日本作詩大賞を受賞。著書は 70 冊を超え、幅広い分野で活躍している。武蔵野美術大学客員教授、ノースアジア大学客員教授、東北大学相撲部総監督を務めており、その活動は執筆に留まらない。舘とは、映画『義務と演技』から 20年ぶり 2 作目であり、黒木とはまた、 テレビ版「義務と演技」(96/TBS)でタッグを組み、今作は 20 年ぶり 2 作目となる。

ストーリー
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられ、そのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方 に暮れた。妻は夫との旅行などに乗り気では ない。「まだ俺は成仏していない。どんな仕事でもいいから働きたい」 と職探しをするが、取り立てて特技もない定年後の男に職などそうない。妻や娘は「恋で もしたら」などとけしかけ るが、気になる女性がいたところで、そう思い通りになるものでもない。 だが、ある人物との出会いが、彼の運命の 歯車を回す──。

『終わった人』 
■キャスト:舘ひろし 黒木瞳 ほか
■原作:内館牧子「終わった人」(講談社刊)
■監督:中田秀夫
■配給:東映

2018年 夏公開