山口県先行公開で、2万5000 人以上の動員を記録し佐々部清監督が自らプロデュースまで手がけた『八重子のハミング』がついに5月6日より東京有楽町スバル座ほか、全国ロードショー公開されます。
本作は『チルソクの夏』『日輪の遺産』『ツレがうつになりまして。』など数多くの話題作や『半落ち』では日本アカデミー賞最優秀作品賞などを受賞してきた名匠佐々部清が原作に惚れ込み、自らリスクを背負ってまで製作に踏み切った、渾身の一作となります。
四度のガンの手術から生還した夫が、アルツハイマー病を発症した妻に寄り添って介護を続ける12 年間を描いた、夫婦の純愛と家族の愛情にあふれた物語です。
シネフィルでは、今回の映画公開にあたって、佐々部清監督にインタビューいたしました。
監督の熱いメッセージをお伝えします。
佐々部清監督インタビュー
(C)Team『八重子のハミング』
――本作では、監督がプロデューサーも兼ねられているんですよね。
これは大手映画会社の出資のない状態で作り上げた、言わば自主映画ならぬ“自主的映画” です。
僕は、大手映画会社への意地もあり、この作品をどうしても映画化したかった。しかし、映画会社からの出資がないということは、今の日本の映画界ではこの作品を作ることができないということです。つまり、自分たちで資金を集めるところから始めなければいけませんでした。なかなかうまくいかず一度は諦めかけましたが、『群青色の、とおり道』で知り合った若いプロデューサーの野村展代と山口にいるもう一人のプロデューサー西村祐一に協力を得て、完成させることができました。
上映実現には、『チルソクの夏』『カーテンコ ール』『四日間の奇蹟』『出口のない海』という 4 本の映画を撮影してきた山口県を中心に、 多くの方にお力添えを頂きました。映画が生んでくれた、縁と信頼で出来上がった作品です。
――撮影でこだわったところはありますか?
僕がこだわったのは、八重子さんが好きだった場所を撮ろうということ。
映画を撮る前に、 原作者の陽信孝さんに、オープニングに映る田床山や、二人が連れ添って歩いた藍場川のほとりなど、八重子さんが好きだった場所を全部案内して回ってもらったんです。
萩には名所もたくさんありますが、観光的な部分ではなく、実際にそこで暮らした八重子さんが好きだった風景を撮ろうと思いました。
(C)Team『八重子のハミング』
(C)Team『八重子のハミング』
――年代によって、感じることが違う作品だと感じました。
老年の純愛を描いた作品なので、誠吾や八重子さんと同じシニア層の人は「あんなにも人を愛することができるのか」と考えたり、文音が演じる娘の千鶴子と同じ世代の人は「親を大切にしよう」と思ったりするかもしれません。たかが映画だけど、されど映画。
家族や国のことを大切に考える人が、この映画を観に来てくれたらと思っています。
――最後に、監督が作品にこめた想いをお聞かせください。
僕は映画を撮る際、助監督時代に高倉健さんに言われた「何を撮るかじゃなくて、何のために撮るか」という言葉をいつも意識しています。この作品に登場するような夫婦の関係の話ではありませんが、僕自身も亡くなった母親が認知症になり、子どものことすらわからなくなるのを目の当たりにしました。今に日本は、もっと高齢化社会になります。
そういう社会にちゃんと目を向けた上で、“普通”のことを“普通”に感じてほしい。
きっと身近なところに愛の物語はいっぱいあるんです。映画を通して、それを自分の身近なところで感じてもらえたらと思います。
きっと“怒り”には限界があるけど“やさしさ”には限界はない・・・が実感できるはずです。
佐々部清監督
監督・脚本
佐々部 清(Kiyoshi Sasabe)
1958 年、山口県下関市出身。 明治大学文学部演劇科専攻、横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)を卒業後、フリ ーの助監督を経て、2002 年『陽はまた昇る』で監督デビュー。以降、映画『チルソクの夏』 (日本映画監督協会新人賞)、『半落ち』(日本アカデミー賞最優秀作品賞)、『四日間の奇蹟』、 『カーテンコール』、『出口のない海』、『夕凪の街 桜の国』、『結婚しようよ』、『三本木農業 高校、馬術部』、『日輪の遺産』、『ツレがうつになりまして。』、『六月燈の三姉妹』、『東京難民』、『群青色の、とおり道』、『ゾウを撫でる』、『種まく旅人~夢のつぎ木~』など監督作 品多数。他に、TV ドラマ『心の砕ける音』(WOWOW)、『告知せず』(テレビ朝日開局 50 周年 スペシャル/芸術祭参加作品)、『看取りの医者』(TBS 月曜ゴールデン)、『波の塔』(テレビ 朝日)、『痕跡や』(テレビ東京)、『本日は、お日柄もよく』(WOWOW)、舞台『黒部の太陽』 の演出なども手掛ける。
映画『八重子のハミング』特報映像
youtu.be監督・脚本:佐々部 清
原作:陽 信孝「八重子のハミング」(小学館)
出演:升毅 高橋洋子
文音 中村優一 安倍萌生 辻伊吹 二宮慶多 上月左知子
月影瞳 朝加真由美 井上順 梅沢富美男
製作:Team『八重子のハミング』シネムーブ/北斗/オフィス en
配給:アークエンタテインメント
エンディング曲:谷村新司「いい日旅立ち」(avex io/DAO) 劇中曲:谷村新司「昴」(avex io/DAO)
(C)Team『八重子のハミング』
5 月 6 日(土)有楽町スバル座ほか、全国ロードショー
2016年の湯布院映画祭でも『八重子のハミング』を熱く語っていた佐々部監督