この度、イスラエルで行われたナチスの親衛隊(SS)中佐アドルフ・アイヒマンの裁判を克明に映し出したドキュメンタリー映画『スペシャリスト』(原題:UN SPÉCIALISTE)が公開されることが決定致しました。2017 年 4 月 29 日より、新宿 K’s cinema ほか全国順次公開となります。

巨悪の犯罪行為から浮かび上がる「悪の凡庸さ」

戦後 70 年を過ぎたいま、アドルフ・アイヒマンや「アイヒマン裁判」をめぐり、『ハンナ・アーレント』(12)、『顔のないヒトラーたち』(14)、『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』(15)、『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』(16)といった数々の秀作が相次いで劇場公開され ている。
これらアイヒマンの周辺を描いた作品群のなかで最も注目すべき映画が、本作『スペシャリスト ~自覚なき殺戮者~』だ。ナチス・ドイツの歯車として与えられた命令を従順にこなし、いつの間にかホロコースト (ユダヤ人大虐殺)に加担した男の姿を冷徹な視点で再構築したこの映画 は、21 世紀の今、あらためて「個人はどうあるべきか」という鋭い問いかけを見るものに突き付けてくる。

1961 年 4月 11日イェルサレムで始まった裁判は、イスラエル政府の意向で裁判の一部始終が撮影・録音され、その内容は全世界 37 カ国で放映されたと言われている。イェルサレムに保管された、アメリカの取材チームが記録したヴィデオ素材に初めてアクセスを試みたのが、本作の作り手たちである。
ハンナ・アーレントの裁判傍聴記『イェルサレムのアイヒマン悪の陳腐さについての報告』に感銘を受けた、“国境なき医師団”元総裁のロニー・ブローマン と、イスラエル映画界の“反体制派”の 1 人と言われる映像作家エイアル・シヴァンは、約 350 時間に及ぶ映像素材の内容をもとに、約 2時間の映画に再構成。
映画は、“専門家(スペシャリスト)”としてのアイヒマンの技術的能力と専門知識を浮かび上がらせる一方で、防弾ガラスに囲まれた被告人席で口びるをゆがめ 「自分は上司の命令に従っただけ」とひたすら主張する小役人の肖像を、無慈悲なまでのリアリズムで映し 出す。ハンナ・アーレントが説いた“悪の凡庸さ”の実像を鮮烈に暴いた衝撃作である。

アイヒマンの裁判ドキュメント『スペシャリスト 〜自覚なき殺戮者〜』予告

youtu.be

製作:エイアル・シヴァン、アーメル・ラボリー
監督:エイアル・シヴァン
脚本:エイアル・シヴァン、ロニー・ブローマン
編集:オドレ イ・モリオン
音響:ニコラ・ベッケル、ジャン=ミシェル・レヴィ、クリシュナ・レヴィ、イヴ・ローベル、ベアトリス・ティリエ
1999 年/イスラエル=フランス=ドイツ=オーストリア=ベルギー/123 分/モノクロ(一部カラー)/
字幕翻訳:渋谷哲也
提供:マーメイドフィルム
配給:コピアポア・フィルム
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