今年、節目の第70回目を迎えるカンヌ映画祭。

この連載では、毎年5月に催される世界最高峰の映画祭の昨年の模様をまとめてレポート!

この映画祭の魅力をお伝えします。

第69回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2016】21

イランの『ザ・セールスマン』が、脚本賞(アスガル・ファルハディ)と男優賞(シャハブ・ホセイニ)を受賞!

コンペ出品作の掉尾を飾り、21日(土)に正式上映された『ザ・セールスマン』が、男優賞と脚本賞の2賞を獲得した。男優賞のシャハブ・ホセイニは、授賞式で天を仰ぎながら「神様がこの機会を与えてくれ、天国にいる父親も寄り添ってくれた」と述べた上で、審査員団、監督と撮影チーム、妻役のタラネ・アリシュスティを始めとする共演者、そして母親に謝意を伝えた。

受賞者会見:脚本賞のアスガル・ファルハディ監督(左)と男優賞のシャハブ・ホセイニ Photo by Yoko KIKKA

受賞者会見:男優賞のシャハブ・ホセイニ Photo by Yoko KIKKA

一方、脚本賞を得たアスガル・ファルハディ監督は「もう一つ賞を貰えるとは……。世界に認められて嬉しく思います。母国の人々にも喜んでもらえ、誇りに思います」とコメントした後、「カンヌ映画祭前、テヘランの劇場でこの映画の映像チェックをしたのですが、空き時間があったので撮影監督と“何か映画を観よう”ということになりました。で、観たのは、奇しくも『マッドマックス』でした」と発言。カメラを切り替えられたジョージ・ミラー審査委員長のコソバユ顔が印象的であった。

女優賞はジャクリン・ホセ『マ・ローザ』(フィリピン)が獲得!

受賞者会見:女優賞のジャクリン・ホセ Photo by Yoko KIKKA

女優賞は、18日(水)に正式上映されたフィリピン映画『マ・ローザ』で、清濁併せ飲む肝っ玉の据わった“母親”を熱演したジャクリン・ホセが受賞。
監督のブリランテ・メンドーサと本作で共演した愛娘のアンディ・アイゲンマンを伴って登壇したジャクリン・ホセは、大感激の面持ちで「とても驚いています」と述べ、監督の方を向いて「彼のアドバイスに従っただけなんです。フィリピンの皆さんに賞を捧げます」と感謝の意を伝え、愛娘と抱擁した。

『アメリカン・ハニー』で3度目の審査員賞に輝いたイギリスの女性監督アンドレア・アーノルド!

受賞者会見:左から短編パルムドールのフアンホ・ヒメネス監督、女優賞のジャクリン・ホセ、審査員賞のアンドレア・アーノルド監督 Photo by Yoko KIKKA

審査員賞は15日(日)に正式上映された『アメリカン・ハニー』。英国の俊英アンドレア・アーノルド監督にとり、2006年の『レッド・ロード』、2009年の『フィッシュ・タンク』に続いての“審査員賞”受賞だ。
主演女優のサシャ・レーンら関係者6名と共に壇上に上がったアンドレア・アーノルド監督は、ハシャギながら「ダンスしたい気分よ! 5時間前にはノンビリ“お茶”してたのよ。受賞はチームワークの結晶だわ。みんな、映画を観て頂戴ね!」とコメントし、満面の笑みを浮かべた。

河瀬直美監督が審査員長を務めた短編部門のパルムドールは『タイムコード』が受賞!

〈第69回カンヌ映画祭〉短編コンペティション部門受賞結果
☆パルムドール:『タイムコード』フアンホ・ヒメネス監督(スペイン)
☆スペシャル・メンション:『ザ・ガール・フー・ダンスド・ウィズ・ザ・デヴィル』ホアオ・パウロ・ミランダ・マリア監督監督(ブラジル)

また、オフィシャル部門、併行部門の垣根を越えて、監督処女作を対象とする“カメラドール”(新人監督賞)は、モロッコ人の両親を持つフランスのウダ・ベニヤミナ監督が、“監督週間”に出品した『ディヴァン』で獲得した。この賞の審査員はフランスのカトリーヌ・コルシニ監督(審査委員長)以下、総勢5名が務めている。

受賞者会見:カメラドールのウダ・ベニヤミナ監督 Photo by Yoko KIKKA

受賞者会見:カメラドール受賞作『ディヴァン』のスタッフ&キャスト Photo by Yoko KIKKA

そして、高等技術院(CST)が技術スタッフを対象にして選出する“ヴァルカン賞”は、韓国のパク・チャヌク監督の『ザ・ハンドメイデン』の美術監督を務めたリュ・ソンヒに贈られた他、併行部門の“批評家週間”と“監督週間”でも、それぞれ独自に各賞を授与している。
(記事構成:Y. KIKKA)

吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
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