今年、節目の第70回目を迎えるカンヌ映画祭。

この連載では、毎年5月に催される世界最高峰の映画祭の昨年の模様をまとめてレポート!

この映画祭の魅力をお伝えします。

第69回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2016】15

快晴ながら強風が吹き荒れた映画祭10日目の20日(金)。 “コンペティション”部門ではアメリカのショーン・ペン監督の『ザ・ラスト・フェイス』とデンマークのニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ザ・ネオン・デーモン』が正式上映され、“ある視点”部門には3作品が登場。

また、併行部門の“監督週間”は、本日で開幕。明日21日の同部門は、ニコラス・ケイジとウィレム・デフォーが共演したポール・シュレイダー監督のクロージング作『ドッグ・イート・ドッグ』と受賞作のリピート上映に充てられている。

『ザ・ネオン・デーモン』は、ロスの欲望渦巻くモデル業界を舞台にした過激なサスペンス・スリラー!

コペンハーゲン生まれで、デンマークとアメリカを行き来して育った異才ニコラス・ウィンディング・レフン監督がハリウッド進出作『ドライヴ』でカンヌのコンペに初参戦し、監督賞を受賞したのが2011年。

ニコラス・ウィンディング・レフン監督 Photo by Yoko KIKKA

2013年の『オンリー・ゴッド』に続き、彼が脚本も兼ねて監督した『ザ・ネオン・デーモン』(デンマーク・フランス・アメリカ合作)は3度目のコンペ作で、色彩コントラストの強い独特な映像美を炸裂させ、スタイリッシュな音楽で彩ったサスペンス・スリラーだ。主演はダコタ・ファニングの妹として知られる子役出身の米国人女優エル・ファニング。

トップモデルを夢見て故郷の田舎町からロサンジェルスに出てきた16歳のジェシー(エル・ファニング)。人を惹きつける天性の魅力を持つ彼女は、すぐに一流デザイナーや有名カメラマンの目に留まり、順調なキャリアを歩み始める。ライバルたちは嫉妬心から彼女を引きずり降ろそうとするが、メイクアップアーティストのルビー(ジェナ・マローン)と親しくなったジェシーは、やがて自身の中に眠っていた異常なまでの野心に目覚めていき……。

モーテルで働く男役でキアヌ・リーヴスが登場する他、アビー・リー、クリスティーナ・ヘンドリックス、ベラ・ヒースコートらが共演。“死姦”を始めグロテスクかつエグいシーンがあるためか、昨夜のプレス試写は騒然とし、賛否両論が巻き起こった過激作だ。

夜の正式上映に先立ち、11時から行われた『ザ・ネオン・デーモン』の公式記者会見にはニコラス・ウィンディング・レフン監督、編集者のマシュー・ニューマン作曲家のクリフ・マルティネス、プロデューサーのレネ・ボルグラム、そして主演女優のエル・ファニングが可憐なレースのドレス姿で登壇した。

『ザ・ネオン・デーモン』の記者会見 Photo by Yoko KIKKA

エル・ファニング Photo by Yoko KIKKA

エル・ファニング Photo by Yoko KIKKA

ブライアン・デ・パルマ監督が好きで、影響を受けたというニコラス・ウィンディング・レフン監督は、本作のテーマは「デス&ビューティ」と即答。そして「色が重要なので、編集者との作業では拘り抜いた」とコメント。

一方、今なお両親と同居中で、高校を卒業したばかりだというエル・ファニングは、「高校のプロムを欠席してカンヌに来たんだけど、とっても楽しい。来たかいがあるわ!」とコメント。映画で演じたヒロイン(実に化粧映えがする女優だ!)とは打って変わり、そのあどけない表情と素直な好感度大の発言、そして無邪気な笑顔で会見場を大いに和ませていた。

カンヌ市長がジャーナリストと長編コンペの審査員メンバーを招待する恒例の“プレス・ランチ”が開催!

今年も世界中から映画祭に集ったジャーナリストと、長編コンペティション部門の審査員団をカンヌ市の市長が昼食に招待し、屋外で南仏の伝統料理を饗する“プレス・ランチ”が開催された。

プレス・ランチ:右から右からジョージ・ミラー、ヴァレリア・ゴリノ Photo by Yoko KIKKA

“プレス・ランチ”の会場は、市内を一望できる旧市街地の高台にあるカストル博物館前の広場。毎年、地方色豊かな伝統衣装に身を包んだ市民たちが立ち並んで音楽を奏でる中、カンヌ市長自らが参加者を会場入り口でお出迎えするアットホームな雰囲気の催しで、長テーブルがずらりと並ぶ様は壮観ですらある。

プレス・ランチ:マッツ・ミケルセン Photo by Yoko KIKKA

プレス・ランチ:ドナルド・サザーランド Photo by Yoko KIKKA

メイン料理は魚のタラとゆで野菜のアリオリ(マヨネーズ&ニンニクのソース)添えというプロヴァンス地方の伝統料理。ロゼと白のワインは飲み放題だし、前菜やデザート&コーヒーまでもが振る舞われる。その上、お土産として映画祭のラベルが張られた特製オリーヴ・オイルが配られるという太っ腹なイベントで、ハードスケジュールをこなさねばならぬ報道陣にとっては、一息つける楽しい場になっている。

また、この催しには長編コンペティション部門の審査員たちも招かれており、ランチに参加した報道陣に対して写真撮影タイムも設けられるので、審査員たちのカジュアルなサマー・ファッションを捉えられる貴重な場でもある。今回もカンヌ市長が審査員たちを満面の笑みで出迎え、審査員たちもリラックスしたムードで談笑していた。
(記事構成:Y. KIKKA)

吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
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