映画「見栄を張る」 藤村明世監督 インタビュー

第12回CO2東京上映展にて満席御礼で話題の作品『見栄を張る』、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016にて国内作品に贈られるSKIPシティアワードも受賞しています。監督の藤村明世さんにインタビューをさせて頂きました!

藤村明世(フジムラアキヨ)

1990年東京都生まれ、東京都在住。明治学院大学文学部芸術学科にて映画学を専攻。
大学時代に通っていた、映画学校NCWで撮った『彼は月へ行った』が、第36回ぴあフィルムフェスティバルや仙台短篇映画祭2014、第6回下北沢映画祭などに入選し、評価される。
大学卒業後、東宝系の商業映画の制作部や助監督を経て、再び映画監督の道を志す。
4本目の監督作品である『見栄を張る』は、CO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)の助成作品であり、初の長編映画となる。本作でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016長編コンペティション部門にてSKIPシティアワードを受賞。


よろしくお願い致します。CO2(*1)企画にて本作を撮られたということですが、藤村監督のそれまでの経歴をお聞きしたいです。前作はぴあフィルムフェスティバルにてノミネートされているとか。

大学では映画の理論を学んでいました。同時並行のダブルスクールという形で、ニューシネマワークショップという専門学校にて映画制作を学ぶようになりました。そこで実習制作というもの、大学でいうところの卒業制作があって、クラス20人の脚本の中で選ばれ、撮影できた作品、それがぴあフィルムフェスティバルにてノミネートされました。

なるほど。もっと遡って、映画監督になりたいと思われたキッカケはなんだったのでしょう。

映画は好きで、幼稚園の頃から観ていました。映画イコールでている人だったので、小学校のときは女優さんになりたいと思っていて、児童劇団に通いました。中学生くらいのときに撮影現場に参加した際に、同じ部屋に沢尻エリカさんがいて、こういう人がカメラの前に立つ人だと思って…諦めました(笑)その児童劇団で、女性の方が指導してくれていて、その演出家の方が格好良くて、そんな映画への関わり方もいいなと思うようになりました。

ひとつのターニングポイントですね。

あとは、それも中学時代に岩井俊二監督の『リリィシュシュのすべて』を初めて観て、映画監督への憧れを強めました。

20代の監督にとって岩井俊二監督の存在は大きいですよね。他にも何か影響を受けた作品はありますか。

熊沢尚人監督の『虹の女神』という作品です。大学入学前に観たのですが、大学に行ったら絶対に映画をつくろうと思ったキッカケの作品です。

本作映画『見栄を張る』に関してですが、題名が凄く印象に残っています。着想はどのようなところだったのでしょうか。

見栄を張るって変な言葉だと思いませんか。

確かに。少し変わっていますね。

でも、誰もが持つ普遍的な感情ですよね。そんな“感情”に切り込むような題名が凄く面白いと思いました。

本作には「泣き屋」というサクラのように葬儀に参列し泣くという仕事というものがでてくると思いますが、この題材を決めたのが最初なのですか。

「見栄を張る」というタイトルよりも「泣き屋」という着想が先にありました。涙に関する題名にもしようかと思ったんですけど、それだとあまりにもコテコテだなって思って。近いけど、そこまで近すぎない距離感のタイトルをつけられたらいいなと思って、主人公の性格が決まってきたときに、『見栄を張る』にたどり着きました。

脚本がしっかりしている印象を受けました。どれくらい書き直したのですか。

ずっと9月の半ばに決まって、12月にクランクインしなくちゃいけなかったんですね。3カ月で全部やらないといけなかったのですが、11月の頭までプロットしか書いていなくて。

それは大変ですね。

あと1ヶ月半でクランクインだとなったときから何度も書いて・・・20稿くらいまでになりました。助監督が、初めてご一緒した方だったのですが、夜まで付き合ってくれたことを印象深く覚えています。初めてだったので嫌われてもいいやというくらい思いっきり遠慮せずできたことも今では良かったなと思いますね。

出身は東京ということですが、田舎の描写は何かを基にされているのですか。

東京出身なので実家に帰ること自体であったり、実家に帰ってその地元で元彼に会ったりすることに魅力を感じていて、それを書いた脚本を美術の人にみせたんです。そうしたら、「東京出身でしょ」って見透かされました。「こんなにキラキラしてないから」って言われて、大学の友達に話を聞いて、親戚関係が面倒くさいとか、狭いコミュニティの中ですぐにでも東京に出たかったといった良い部分も悪い部分も含めて聞いてから、書き直しましたね。

藤村監督が演出において特にこれに気を付けているということがあれば教えてください。

もちろん作品によって違いますが、今回はキャラクターが一本繋がっている、全部に理由があることを気を付けました。2時間しか描かれませんが、登場人物のその前後を考えるのがすごく好きで、それを基に演出することが好きですね。現場で盛り上がって、そのキャラクターがしないようなことをさせてしまいそうなこともありましたが、そこはブレーキをかけていました。あとは、撮り順が違うなかでも表情をしっかり魅せたかったので、そこは主演の久保さんと何度も話し合いをしましたね。久保さんは凄く任せてくれて、頼ってくれて、やりやすかったです。

前作では子役が主人公、今作も子役がキーになっていますね。何か理由があるのですか。

自分が忘れたものがそこにある気がして、憧れがあるんだと思います。だから、私の映画のなかにいてほしいと思うんだと思います。

忘れたものを気付かせる存在ということですね。次回作などもそこは気になりますね。次の作品の構想や今後の展望を教えてください。

本作はとりあえず一本つくってリングに立とうという気持ちでつくりました。より大きな作品をつくることができたら嬉しいです。やったことないことをやってみたいですね。いっぱいあるやりたいことのなかの一つは海外での映画制作です!

それでは、最後にこれから作品を観る方へのメッセージをお願い致します。

久保さんの最初の顔と最後の顔が変わっていくところを観てほしいです。夢を追っている人、何に向かっているのかわからなくなってしまった人に届けたいです。

ありがとうございました!

*1 シネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)は2004年度から大阪を映像文化の創造・発信拠点とする事を目指しつつ、映像制作者の人材発掘を行うため、全国から劇映画企画を募集し、選出されたものに助成金や制作協力という形でバックアップを行っている。完成作品の権利を制作者のものとしており、劇場公開や国内外の映画祭出品など、その後も自由な拡がりをみせることができるようになっている。

▼次回上映は高崎にて!チェックしてみてください!

[ 高崎映画祭、 監督たちの現在—進取果敢な人々—枠での上映 ]

4月6日(木)11時〜@シネマテークたかさき
4月7日(金)19時〜@高崎シティギャラリー

映画『見栄を張る』(Eriko, Pretended) 予告編 Trailer

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