今年、節目の第70回目を迎えるカンヌ映画祭。

この連載では、毎年5月に催される世界最高峰の映画祭の昨年の模様をまとめてレポート!

この映画祭の魅力をお伝えします

第69回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2016】1

本日は、第69回カンヌ国際映画祭の開催を明日に控えた5月10日の火曜日(現地時間)。
今年も時間を有効に使える9日の夜便で日本を発ち(パリ滞在は空港でのトランジットのみ)、ニース空港に10日の朝(8:45am)に到着する便を選択。到着後、タクシーでカンヌ駅近くにある宿へと向い、荷ほどきもソコソコに映画祭のメイン会場パレ・デ・フェスティバルへと向う。

公式プログラムを始めとする諸々の映画祭資料とIDバッジ(カテゴリー別にランク付けされ、コレがないと何処にも出入りできない)を受け取るためだが、世界中から集う報道陣の多くは前のりでカンヌ入りするため、メイン会場パレ・デ・フェスティバルの地階にある受取場所は午前中から大混雑、長蛇の列となっていた。
それにフランスとベルギーで相次いで発生した凶悪テロの影響でセキュリティ・チェックが一段と厳しくなった上、武装した迷彩服姿の軍人が市内をパトロールしており、何やら物々しい雰囲気である。

映画祭特製オリジナル・バッグと公式プログラム、IDバッチ Photo by Yoko KIKKA

IDバッジを受け取った後、まだエスカレーターも作動していないメイン会場の階段を駆け上がり、3階に設置されているプレスBOXをチェックしに。これは、プレス(ジャーナリスト)向けの出品作資料が、毎日どっさりと投入される“私書箱”みたいなもので、各個人専用のモノがあてがわれるのだが、当然ながらその数には限りがある。カンヌには毎年、4000人以上のプレスが参加しているが、プレスBOXの数はその半分ほど。BOXのないプレスは一々資料を貰いにいかなければならないから、その手間と労力の差は大きい。

今年の映画祭公式ポスターの図柄は、ジャン=リュック・ゴダール監督が『軽蔑』でロケ撮影した場面写真をフィーチャー!

メインの上映会場グラン・テアトル・リュミエール Photo by Yoko KIKKA

毎年、注目されるカンヌ映画祭の公式ポスターの洗練された図柄だが、今年はヌーヴェルヴァーグの旗手、ジャン=リュック・ゴダール監督が、アルベルト・モラヴィアの同名小説をブリジット・バルドー&ミシェル・ピコリの共演で映画化した長編6作目の『軽蔑』(1963年)の場面写真をフィーチャー。このミステリアスなデザインの建造物は、イタリアの作家クルツィオ・マラパルテが自ら設計し、カプリ島の断崖に建てた別荘(マラパルテ邸)で、絶壁に彫り込まれた長い階段を上っていくミシェル・ピコリの後ろ姿を印象的かつスタイリッシュに捉えたショットが起用されている。

パレ・デ・フェスティバルの正面入口 Photo by Yoko KIKKA

今年の長編コンペティション部門の出品数は21本、ビッグネームから新顔まで多彩な顔ぶれが並んだラインナップ!

さて、映画祭の華といえば、何といっても“長編コンペティション”部門。昨年より2本多く選出された今年は、過去の最高賞受賞監督3人、英国のケン・ローチ(2006年『麦の穂を揺らす風』)、ルーマニアのクリスティアン・ムンジウ(2007年『4ヶ月、3週と2日』)、ベルギーのジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟(1999年『ロゼッタ』と2005年『ある子供』)を始め、ブリュノ・デュモン、パク・チャヌク、ジム・ジャームッシュ、ペドロ・アルモドヴァル、ニコラス・ウィンディング・レフン、アンドレア・アーノルドといったカンヌの常連監督、そして昨年は同部門の審査員を務めたグザヴィエ・ドラン等々、名だたる実力派監督に加え、“ある視点”部門からの昇格組らがひしめきあっている。

残念ながら、今年の日本映画の選出は1本もなく(ジム・ジャームッシュの『パターソン』には永瀬正敏が友情出演!)、昨年は『海街diary』でコンペに参戦した是枝裕和監督の最新作『海よりもまだ深く』と、カンヌ初出品となる深田晃司監督の『淵に立つ』の2本は、映画祭公式部門の第2カテゴリーの“ある視点”部門での上映となった。

邦画の旧作では溝口健二監督の『雨月物語』(1953年公開)の4Kデジタル復元版と瀬尾光世監督のアニメーション映画『桃太郎 海の神兵』(1945年公開)のデジタル復元版が“カンヌ・クラシック”部門で上映される予定だが、特筆すべきは河瀬直美監督が、“短編コンペティション”部門および“シネフォンダシオン”部門(学生作品を対象にした部門)で、日本人初の審査員長に就任したことであろう。
(記事構成:Y. KIKKA)

吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
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