竹橋の東京国立近代美術館2F:ギャラリー4において2月12日(日)まで、『瑛九1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす』が開催されています。

瑛九(えいきゅう、本名:杉田秀夫、1911-1960)は1936年にフォト・デッサン集『眠りの理由』で鮮烈なデビューを飾り、その後さまざまな技法を駆使しながら独自のイメージを探求した芸術家です。
東京国立近代美術館は近年、彼の評伝を著した友人の画家、山田光春の旧蔵していた作品と資料を収蔵しました。本展は、その中から約50点の初公開作品、書簡などの関連資料に加え、以前から所蔵している作品もまじえて、「レアル(リアル)」を求めて苦闘するデビュー前後の瑛九の実像を紹介しています。

『眠りの理由』より、1936年、ゼラチン・シルバー・プリント、東京国立近代美術館蔵

展示風景
photo©cinefil

展示風景
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タイトルの「1935-1937」は瑛九が24~26歳だった、デビュー前後の3年間をさします。
近年新たに収蔵したフォト・デッサンやコラージュ など当時の作品約50点と、友人への手紙を中心とした多様な資料を初公開し、若き芸術家の苦悩と葛藤を、作品とたたきつけるような言葉の両面から追体験いただきます。
また、日本の前衛美術が活況を呈した時代に書かれた瑛九の手紙は、戦前の前衛アートシーンを語るドキュメント資料としても貴重なものです。今回その約60通をカタログに翻刻掲載という形で一挙公開します。

《赤い輪》1954年、油彩・キャンバス、東京国立近代美術館蔵

《れいめい》1957年、油彩・キャンバス、東京国立近代美術館蔵

さらにエッチングやリトグラフなど戦後の版画作品、油彩による晩年の点描作品など10点も展示。計60数点のミニ回顧展として、知る人ぞ知る瑛九の全体像に触れる絶好の機会です。戦前、戦後の日本の前衛美術のなかで、岡本太郎などとともに重要なアーティストのひとりである瑛九。その真摯な制作姿勢が、当時まだ若かった細江英公(写真家)、池田満寿夫(版画家)、河原温(現代美術家)などに多大な影響を与えた功績も見逃せません。

瑛九は、理性の光がとどかない心の闇の中で手探りするかのように、彼にとってのほんとうの「レアル」を追い求めました。

《午後(虫の不在)》1958年、油彩・キャンバス、東京国立近代美術館蔵

展示風景
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今回の展示はギャラリー4というコンパクトな場所でもあり、シンプルな会場構成で落ち着いて見ることができます。
ぜひ、若き日の瑛九の世界に浸りきりましょう。

開催概要

会場:東京国立近代美術館 2F ギャラリー4
開館時間:10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00)
     *入館は閉館30分前まで
休館日: 月曜
観覧料: 一般430(220)円
     大学生130(70)円
    *( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
*高校生以下および18歳未満、65歳以上、キャンパスメンバーズ、「MOMATパスポート」をお持ちの方、友の会・賛助会会員、MOMAT支援サークルパートナー企業(同伴者1名迄。シルバー会員は本人のみ)、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
*それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、会員証、障害者手帳等をご提示ください。
*本展の観覧料で、入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご観覧いただけます。

無料観覧日:2月5日(日)
    *本展および所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)のみ
主催:東京国立近代美術館
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル 8:00~22:00)