シネフィル新連載「映画にまつわる○○」#10 舞台演出 谷健二

早いもので10回目。
10といえば、背番号10にこだわり現役を続けるプロサッカー選手を描いた映画『U-31』、
劇場での公開は終わってしまったのですが、来年にむけていろいろと仕込み中です。

さて本題、今回は舞台演出についてあれこれと。

はじめて舞台演出したのが昨年の5月(主宰舞台:VOTE)。
映画の合間に舞台でも、と思ったのがきっかけです。
それまで舞台といったら知り合いのものにちらほら行くぐらい、年間にすると数本みていたぐらいなので、ほとんど何もわからないままにはじめてみました。

作品をつくること、演出すること、は映画と一緒なのでと気軽に構えていたら、大変なことに、といいたいところですが、経験豊かな役者さんやスタッフさんたちの助けもあり、なにかとスムーズにすすんだように思えました。

唯一、困ったことといえば言葉。

マチネ・ソワレ(昼・夜公演)にはじまり、M0(エムゼロ、開演時の音楽)や舞監(舞台監督)など、映画では聞くことのない言葉が日々飛び交い苦労しました。
途中からは、多少知ったかぶりしながらなんとかこなしましたが、中には怪しんでいるメンバーもいたので、この際そっとしておきましょう。

さて本題、映画監督からみた舞台演出の魅力?

と聞かれると、はじめに思い浮かぶのは、役者さんの成長を目の前で見れること。

一部では『映画は監督のもの、舞台は役者のもの』

という言われ方をしますが、その通りだと感じました。結局、最終的に矢面に立つのは誰かってことです。
飲食店に例えれば味つけをするのは誰かと考えればわかりやすいかと。かえってややこしいですかね(笑)

(言い訳になっちゃいますが..)映画だとお金や時間的な制約から、役者さんに対してできることが限られます。
また、撮影方法や編集なんかでうまくごまかせることもでき、映画を通して成長させるというより、
その時点でその役者さんが持っているポテンシャルをうまく引き出すことが重要であり、そこが現場で一番気を遣うポイントだったりします。

それに比べると、舞台は短くても1か月近く稽古することで、こちらの持っているイメージを正確に伝えられ、芝居を通してより深く役者さんと触れ合うことができ、
役者さんの成長を目の前で見ることができます。何をもって成長かといわれると難しいのですが、個人的には最後に味付けをしっかりできる役者さんがいい役者だと思います。
そして、演出家にとっても、いろいろな考えを持った役者さんと触れ合うことで演出の幅が広がるとも感じました。

その後、その魅力にはまってか、今は南青山にある経営する小さなバーで、定期的に2人芝居をやっています。
アドリブ性を問う内容なので、稽古期間を長くといった通常の舞台の完成度を求めるものではないですが、稽古や本番を通じて少しづつ成長できている気がします。

ご興味ある方いたらぜひお越しください。

バーカットの2人芝居『BARでのひ・と・と・き』
出演:三平恵子、田中良一
作・演出:谷健二『U-31』『リュウセイ』
日時:11月25日(金)・26日(土) 20時開場21時開演
場所:南青山BAR CUT(南青山6-13-18-105)
入場料:1,500円(1drink+おつまみ付)
主宰:SEVEN FILM
協力:TMコーポレーション

玄関 写真 尾崎康元