カンヌ([アリラン』ある視点部門最優秀作品賞)、ヴェネチア([うつせみ』監督賞)、ベルリン(『サマリア』監督賞)と、世界三大映画祭を制覇。「嘆きのピエタ』で、第69回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(最高賞)に輝いた、韓国随一の鬼才キム・ギドク。

ある事故により、意に反して国境線を越え、韓国警察に捕まってしまった北朝鮮の漁師。拷問を受け、韓国への亡命を強要されるが、妻子と再会したい一心を貫いて母国に戻る。だが更に苛酷な運命が彼を待ち受けていた。

本作は、これまでの20本を超えるギドク映画を総括するとともに、さらなる高みに飛躍を遂げたギドクが、世界に向けて放った、社会派ヒューマン・ドラマ。
キム・ギドクの新たな傑作が誕生した。

今作は11月19日より開催される第17回東京フィルメックスのオープニング作品として、上映が決定している。

http://filmex.net/2016/program/specialscreenings/ss01
© 2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

妻子と平穏な日々を送っていた北朝鮮の漁師・ナムは、網がエンジンに巻き込まれたトラブルにより、意に反して水上の韓国との国境を越えてしまう。韓国の警察に捉えられたナムは、スパイと疑われて拷問を受け、更には韓国への亡命を強要される。妻子の元にただ戻りたいだけのナムは自らの意思を貫き、ついに北朝鮮に戻ることになる。表面的には資本主義の誘惑に打ち勝った英雄として北朝鮮に迎えられたナムだったが、彼を待っていたのは更に過酷な運命だった……。

キム・ギドク作品のトレードマークであった極端なバイオレンスは本作では封印され、体制に翻弄される一人の男の姿が重厚に描かれた傑作。ナムを演じたリュ・スンボムの熱演も見どころだ。

©2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

南北の分断をテーマに、脚本・製作を担当した『プンサンケ』『レッド・ファミリー』を経て、ギドク自らメガホンを取った本作は、一人の漁師の悲運を通し、たとえ政治的体制が違っても、常に犠牲を強いられ切り捨てられていくのは弱者である現実を簡潔かつ力強いタッチで浮き彫りにしていく。

資本主義に毒されまいと、ソウルの街中で頑なに目を瞑るチョルの内面をリアルに描出する。あるいは、彼の監視役に就くうちにチョルの潔白を信じ、彼を帰すべきだと上官に訴える若き警護官など、登場人物たちの心情に寄り添って、その心の壁をキメ細やかに映し出した。
そして、斡国の経済的繁栄の裏に潜むダークサイドに朝鮮半島の分断が人々にもたらす苦悩と悲哀。そうした現代社会の矛盾と闇を直視するギドクの眼差しは、あくまでも鋭く揺るぎない。

海外版予告

THE NET (Geumul) - Kim Ki-duk Film Trailer (2016, South Korea)

youtu.be

ストーリー

北朝鮮の寒村で、妻子と共に貧しくも平穏な日々を送る漁師ナム・チョル。
その朝も、唯一の財産である小さなモーターボートで漁に出るが、魚網がエンジンに絡まりボートが故障。チョルは意に反して、韓国側に流されてしまう。
韓国の警察に拘束された彼は、身に覚えのないスパイ容疑で、執拗で残忍な尋問を受けることに。
一方、チョルの監視役に就いた青年警護官オ・ジヌは、家族の元に帰りたいというチョルの切実な思いを知り、次第にその潔白を信じるようになる。そんな時、やはりスパイ容疑で捕えられた男が、チョルにソウルにいる娘への伝言を託して、自ら舌を噛み切り息絶える。やがて、チョルを泳がせようという方針から、物質文明を極め人々が自由に闊歩する、ソウルの繁華街に放置される。
街を彷徨う彼は、家族を養い弟を大学に入れるために身を売る若い女性と出会い、経済的繁栄の陰に隠されたダークサイドに気付く。
何とか探し出したかの男の娘に伝言を告げ、ジヌが待つ場所に戻るチョル。ところが、街中のチョルの姿を映した映像が北に流れ、南北関係の悪化を懸念した韓国当局は、チョルを北朝鮮に送還する。資本主義の誘惑を退け、晴れて祖国に帰って来たチョル。だが、彼を待ち受けていたのはいっそう苛酷な運命だった。

『The NET 網に囚われた男』
原題:그물
英題:THE NET
製作・監督・脚本・撮影:キム・ギドク
出演:リュ・スンボム、イ・ウォングン、キム・ヨンミン、チェ・グィファ、ソン・ミンソク
韓国/2016 年/112 分/カラー/1:1.85/5.1 SRD// 提供:キングレコード
配給:クレストインターナショナル
©2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

2017年1月7日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!