アカデミー賞最有力と注目される本作は、スコセッシが1988年に原作となる遠藤周作の「沈黙」と出会ってから28年、読んだ瞬間に映画化を希望し、長年に渡り暖め続けてきたという待望のプロジェクト。

17世紀江戸初期、激しいキリシタン弾圧の中で棄教したとされる師の真実を確かめるため、日本にたどり着いたポルトガル司祭の目に映った想像を絶する日本を舞台に、人間にとって本当に大切なものとは何かを、壮大な映像で描いた歴史大作です。

本作のプロモーションで長崎を訪問中のモキチを演じた塚本晋也さんが本日11月3日(木)、枯松(かれまつ)神社祭に出席いたしました。
枯松神社は、遠藤周作の原作「沈黙」および映画『沈黙-サイレンス-』に登場するトモギ村のモデルとなった旧黒崎村の隠れキリシタンたちが、伝説の伝道師バスチャンの師であるサン・ジワンを祀った神社で、自分たちの信仰を異宗教的外観でカモフラージュした“キリシタン神社”という他に類を見ない施設。黒崎地区の山中にあり、隠れキリシタンの聖地とされています。

今年で17回を数える枯松神社祭は、迫害時代に苦難を乗り越え信仰の指導を続けたサン・ジワンと信仰を伝承し続けたキリシタンの先祖たちに対して感謝を捧げ冥福を祈り、かつ外海(そとめ)地区のキリシタンの歴史と文化を継承する目的で行われています。

さわやかな秋晴れの中、午後1時からの感謝祭と慰霊ミサには約150人が参加。平成30年の世界遺産登録を目指す「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」で注目が集まる中、地元メディアをはじめ多くの報道陣の姿も。境内には、お神酒、花、パン、ワインが奉納され、枯松神社が持つ特異性が見てとれる。神父の言葉と讃美歌が繰り返され、オラショ奉納(※オラショはキリシタン用語で“祈り”)、カトリック信徒を対象とした聖体拝領などが行われました。

荘厳な雰囲気の中で進行する慰霊祭に出席した塚本晋也さんは「今回の『沈黙』を深める旅の最終地点にあたる場所なので、映画でいうとクライマックスの奥まった所に行くような感じで今日は参りました。
緊張していましたが、境内まで来ると毎年行われている地元の行事ということで和やかな雰囲気があり、少しほっとしました。僕が演じたのは隠れキリシタンのモキチですが、彼と同じような隠れキリシタンの子孫の人たちが集まって今もこのような行事を行っているわけですから、演じた身としては感慨深いものがあります。この役を本気でやったので、隠れキリシタンの子孫の人たちに今日実際に会うのはやはりちょっと緊張しました。(隠れキリシタン特有の)オラショも生で聞けて“お、本物はこういう感じなんだ!”と感動しました。
モキチを演じた自分としては、信じるものを長きにわたり伝承し続けている姿にすごく共感しました。」と感慨深げに語った。
慰霊祭を見守る塚本=モキチには、天からの光が降り注ぎ、まるで後光が差しているかのようだった。

【サン・ジワン枯松神社】
禁教時代、伝説の伝道師とされるバスチャンが黒崎の地にいた。彼の師であり黒崎の隠れキリシタンが崇拝していたサン・ジワンの隠れ家とされたこの場所に隠れキリシタンたちが集い、オラショ(祈り)を捧げ信仰を守ってきたといわれている。明治に入るとこの場所を神社の外観でカモフラージュした枯松神社を立て、世界でも類を見ない“キリシタン神社”が誕生。枯松神社祭は、カトリック黒崎教会、外海地区に今も暮らす隠れキリシタン、異なる宗教でありながら神社を守り続けてきた仏教徒らの主導で毎年開催されており、今年で17回目を迎える。平成3年2月16日に枯松神社は外海町文化財に指定され、外海町が長崎市に編入されてからは長崎市の文化財となっている。

『沈黙-サイレンス-』は、2017年1月21日(土)全国ロードショー