アジアの俊英監督から選ばれた作品10本!

アジア映画の発展を支援する目的で設けられた賞です。
長編映画2本目までのアジア新鋭監督の作品の中から、“アジアの未来 作品賞審査委員会”により、1作品に作品賞が贈られます。また、同部門で国際交流基金アジアセンター特別賞も選ばれます。

バードショット

ヒューマンドラマサスペンス
絶滅危惧種のワシと森のミステリー

農場の娘マヤは森林保護区に迷い込み、誤って絶滅危惧種のフィリピンワシを撃ち殺してしまう。死骸を見つけた警察が捜査を開始するが、さらに恐ろしい事件が明らかになっていく…。デビュー作『レコーダー 目撃者』(TIFF2013出品)で注目されたミカイル・レッドの第2作は、複数の事件による謎が謎を呼ぶ“森のミステリー”ともいうべきスリリングな一編。フィリピンワシは全長1メートルと現在生存している最大のワシだが、開発で生息地が破壊され、剥製用に乱獲されるなどにより、野生の個体数が200羽以下といわれている。

【監督メッセージ】
この広い世界を歩み抜けようとすると、道に迷うことがあるかもしれません。でも、いずれ元に戻る道を見つけ、落ち着くことでしょう。時には、自分たちは「希望を追求する者」の最後の生き残りだと感じることがあるかもしれません。でも、フィリピンワシと同じように、何とか生き延びるのです。絶滅危機にはあるけれど、決して消滅することのない真実を求めながら。
監督:ミカイル・レッド
アジアの未来/ワールド・プレミア

10/28 13:50- 11/01 20:50-
予告編

【アジアの未来(Asian Future)】『バードショット(Birdshot)』

youtu.be

©PelikulaRED, TBA Productions

ケチュンばあちゃん

ヒューマンドラマ
謎の失踪12年、孫娘の帰還

済州島のベテラン海女ケチュンは孫娘のヘジと幸せな生活を送っていたが、ある日ヘジがいなくなってしまう。八方手を尽くしたが彼女は見つからない…。やがて12年の年月が経過したとき、突然ヘジが帰ってくる。不在の間に何があったのか言おうとしないヘジと、釈然としないケチュンは再び一緒に暮らしはじめるのだが…。ユン・ヨジョン(『ハウスメイド』)とキム・ゴウン(『コインロッカーの女』)が共演した、異世代女性をつなぐハートフルにしてミステリアスな物語。ほかに、K-POP人気アイドルグループSHINee(シャイニー)のミンホや、『息もできない』(08)のヤン・イクチュン監督が出演している。チャン監督は前作『ポイントブランク~標的にされた男~』(14)がカンヌ映画祭で上映されるなど、韓国映画界期待の若手。

【監督メッセージ】
観客には納得するより、感情移入をしてもらいたい。映画を観て何かを学ぶよりも、癒しを感じてほしい。本作が第29回東京国際映画祭アジアの未来部門に選出されて、大変光栄です。
監督:チャン
アジアの未来/インターナショナル・プレミア

10/31 21:00- 11/02 16:10-
予告編

【アジアの未来(Asian Future)】『ケチュンばあちゃん(계춘할망)』

youtu.be

©Chang/ZIO Entertainment Inc

エヴァ

ヒューマンドラマラブストーリー
ホロコーストの記憶と現在

夫婦として長年連れ添うヨエルとエヴァ。あるときヨエルは全くおぼえのない自分名義の家の存在を知る。貧しい人々が住む地区にあるその場所を訪れたヨエルは、住人の見知らぬ男が妻エヴァと親しいのに驚く。謎を解明しようとするヨエルの人生は大きく動いていく…。ホロコーストの凄絶な記憶と現在を往還する、静謐で陰影に富んだ大人のドラマ。ハイム・タバックマン監督はデビュー作“Eyes Wide Open”(09)がカンヌ映画祭で上映されるなど注目され、第2作となる本作はイスラエルのほかにポーランド、ドイツなどヨーロッパ諸国も参加して製作された。「(夫婦という)赤の他人と人生を共に歩むうえでの葛藤が、劇的な崖っぷちに到達する瞬間」を描きたかったと監督は語っている。

【監督メッセージ】
人と長い付き合いを維持することについての自分自身の経験から、私はカップルの人生のひと時を描くことに興味がありました。そのひと時とは、赤の他人と人生を共に歩むうえでの葛藤が、劇的な崖っぷちに到達する瞬間のこと。カップルとして生きていくために多大なる犠牲を払うことを迫られる瞬間のことです。

監督:ハイム・タバックマン
アジアの未来/ワールド・プレミア

10/28 21:00- 10/31 10:25-

©Cyrelson Retires LP

I America

ヒューマンドラマ
父を探しにアメリカへ?

基地の兵士だったアメリカ人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれたエリカは、帰国したまま音信不通の父に会うため、パスポートとビザを取得して渡米する計画を立てていた。そんな彼女の前にアメリカ人のジョンがあらわれる。父かもしれないジョンと向き合うなかで、エリカの真実を求める道程は続く…。フィリピンはかつて広大な米軍基地を抱え、そんななかで生まれた米比混血の子どもたちは父親が帰国したまま分からないケースも多く、いまなお社会問題となっている。タイトルの「I America(私、アメリカ)」は、分解すると「I Am Erica(私はエリカ)」とも読める。シネマラヤ映画祭2016で最優秀助演女優賞を受賞。

【監督メッセージ】
自分探しの物語は、誰にでも共通する部分があると私は思います。自分が本当は何者なのかと日々もがき苦しむことは、やりがいのある人生の旅でもあります。本作では、アメラジアン(アメリカ人とアジア人の間に生まれた子)の少年少女の人生を見つめ、父親を知らない自分とどのように向き合うのかを描いています。答えの見つからない疑問への憤りと混乱を抱えながら、彼らは育ちます。しかし、私は気付きました。自分の出自に関わらず、自分は何者かを知り、自分を受け入れることができれば、人生はもっと楽になるものだと。

監督:アイヴァン・アンドリュー・パヤワル
アジアの未来/インターナショナル・プレミア

10/30 14:45- 11/02 12:50-

予告編

【アジアの未来(Asian Future)】『I America(I America)』

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ブルカの中の口紅

ヒューマンドラマラブストーリー
女性4人、自由と自立への模索

ブルカを被った女子大学生はポップシンガーになる夢を抱いて葛藤している。若い美容師の女性はふたりの男と付き合いながら、小さな町の閉塞空間から脱出したいと思っている。3人の子持ちの主婦はセールスウーマンとしてもうひとつの人生を送っている。55歳の未亡人は電話によるロマンスで性的欲望がよみがえる…。抑圧された4人の女性たちに寄り添いながら彼女たちの自立への葛藤を見据えた、女性監督アランクリター・シュリーワースタウの第2作。シリン役のコーンクナー・セーン・シャルマー(『チャンスをつかめ!』TIFF2009出品)をはじめ女優陣が堅実な演技を披露している。

【監督メッセージ】
私はブルカを着けたことがありません。小さな町にも住んでいません。私の自由を阻害しようとする人もいません。かなりリベラルな中産階級に生まれ、大都市に暮らしています。でも、私の内面には葛藤が常にあり、後ろに引き戻そうとする鎖のようなものを感じるのです。完全に自由だと、感じたことは一度もありません。おそらく自由を夢見る田舎町の女性と、何ら変わらないのだと思います。その女性が秘かに行う反抗は、私の行為でもあります。外からの縛りであろうが、内からの縛りであろうが、鎖は鎖です。

監督:アランクリター・シュリーワースタウ
アジアの未来/ワールド・プレミア

10/26 18:20- 10/30 18:00-

©m-appeal

底辺から走り出せ

ヒューマンドラマミュージック
上海国際映画祭主演男優賞!

ホーピンは20年前にロックシンガーとして活躍していたが、その後音楽の道を諦め、いまはタクシー運転代行業をしている。あるとき音楽コンクールで審査員をしているかつてのバンド仲間ダーヨンと偶然に再会し、飲み明かすなかで再び音楽への情熱が目覚めはじめる。審査員をやらないかと誘われたホーピンはいったん断るが、その後災難が降りかかり、絶望のなかで再びステージに上がるときが到来する…。挫折した男の再起を音楽に乗せて描く熱いドラマ。シエ・シャオドン監督によれば、前半は「中年世代の日常を記録したドキュメンタリー」、後半は「多くの中年世代の心の奥深くにあるファンタジー」として描き分けた由。上海国際映画祭2016でチン・ヨンが最優秀主演男優賞を受賞した。

【監督メッセージ】
ある一定の年齢を越えると、数多くの死に触れるでしょう。そのことによって、果たして自分は何者で、何を大事に思うのか、を考えさせられます。本作の前半は、中年世代の日常を記録したドキュメンタリーのように撮りました。夢をもつには忙しすぎる、どこか退屈な日常です。後半は、もっとフィクション性が強く、多くの中年世代の心の奥深くにあるファンタジーを描いています。
監督:シエ・シャオドン
アジアの未来/インターナショナル・プレミア

10/26 15:35- 10/27 17:30-
予告編

【アジアの未来(Asian Future)】『底辺から走り出せ(Nirvana)』

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四十年

ミュージックドキュメンタリー
台湾ポップスのレジェンド勢揃い

1970年代に花開いた台湾フォーク&ロックを牽引したベテラン歌手たちが40年の時を経て再集結。一大ライブの幕が開くまでを個々のミュージシャンに密着して描いた音楽ドキュメンタリー。彼らの歌は今でも若い世代に伝わるだろうか。中国と台湾の関係、アメリカの文化的な影響などのテーマを盛り込みながら、ミュージシャンたちの人生の軌跡も挿入されていく。先住民の魂を歌う者、病を押してステージに登る者もいる。日本のポップスの歴史との同時代性にも驚かされる。ホウ・チーラン監督はオムニバス映画『ジュリエット』(TIFF2010出品)の一編『ジュリエットの選択』や『狼が羊に恋をするとき』(12/公開待機中)などが紹介されている。

【監督メッセージ】
台湾の大衆音楽や文化の歴史において、フォークソングは人間のアイデンティティ探求のきっかけになりました。私は、フォークソングの“歴史”を描くというよりも、若い頃にその歌を書いた人を追ってみたいと思いました。撮影中、私が確かめてみたかったのは、彼らがまだ自分の歌を恋しいと感じているのかどうか、まだ作詞や作曲に情熱を感じているのかどうか、生きる姿勢は昔と同じくらい清廉潔白であるかどうか。このドキュメンタリーが、彼らの歌や記憶、そして40年を経た後の人生に宛てて送られたポストカードのように感じてもらえればうれしいです。
監督:ホウ・チーラン
アジアの未来/インターナショナル・プレミア

10/27 14:05- 10/28 10:50-

©The Chinese Music Man Association

サラワク

ヒューマンドラマ青春
島の少年は姉探しの旅に出る

モルッカ諸島の海辺の村。10歳の少年サラワクは姉のビナイヤとふたりで暮らしていたが、姉が突然失踪してしまう。彼女を探すためにサラワクはこっそり村を抜け出す。旅の途中でジャカルタから来た20歳の少女サラスと出会い、一緒に旅をすることになる。実はサラスもまたビナイヤと同じ理由で街を出てきたのだった。やがて彼らはビナイヤを見つけるが…。女性の台頭著しいインドネシア映画界にあって、プリタギタ・アリアヌガラ監督も大作『カルティニ』の助監督などを経て本作でデビューした期待の新鋭である。美しい海に囲まれたモルッカの風景と、婚外子を生んで抑圧される女性たちの姿のコントラストが印象に残る。ビナイヤ役のライハアヌンは『ラブリー・マン』『ディアナを見つめて』にも出演。

【監督メッセージ】
人間の複雑さは大都市特有のものではなく、田舎町にもあるものだと本作では描いています。愛は、その重さゆえに、お荷物になってしまうということを私は実体験で学びました。自分の決断は、結果的に周囲の人の人生にも影響します。本作の舞台の大半は、モルッカ諸島というジャカルタから8時間の距離にある開放的な土地です。華やかな首都から遠く離れても、同じような問題が起きているのです。社会的拒絶の恐れや女性問題は、場所に関わらず存在するのです。
監督:プリタギタ・アリアヌガラ
アジアの未来/ワールド・プレミア

10/26 21:40- 10/29 19:20-
予告編

【アジアの未来(Asian Future)】『サラワク(Salawaku)』

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©Kamala Media Cipta

八月

ヒューマンドラマ
内モンゴル少年の夏休み

1990年代初頭の内モンゴル。12歳の少年シャオレイの夏休みは、映画撮影所で働く父と教育熱心な母に囲まれて過ぎていく。世の中は静かに、しかし大きく動いており、国営の職場が生活の安定を保障してくれる時代は終わりつつある。シャオレイの家族もその例外ではない。やがて秋が到来する…。フフホト出身のチャン・ダーレイ監督がモノクロで描く、四半世紀ほど前の内モンゴルの一断面。中国語圏で近年流行のノスタルジックな青春映画とは一線を画し、少年の目がとらえた世界をドライに切り取っている。監督によれば、80歳の寝たきりの祖母と面会したとき“白日夢の魔法”に襲われ、本作の構想が浮かび上がったという。製作総指揮をペマ・ツェテン監督(『オールド・ドッグ』『タルロ』)が務めている。

【監督メッセージ】
何年も前の日曜、私はめったに訪ねることのない祖母の家でランチを食べていました。寝たきりになった80歳の祖母の口に、母がスプーンで食べ物を運んでいるのを見ていたら、突然、人ひとりの人生が逆戻りする感覚に襲われました。1994年の夏、祖母の母が重度の寝たきりになりました。その時、娘に背中を支えられ、流動食を口に運んでもらっていた、まさにその光景が、また目の前で起きている。その瞬間、80年代のポップソングと列車の汽笛が遠くから聞こえてきました。白昼夢の魔法が、この映画を撮るインスピレーションを与えてくれたのです。

監督:チャン・ダーレイ
アジアの未来/インターナショナル・プレミア

10/31 13:25- 11/02 20:00-

©Beijing Mai Lisi Film & Television Culture Co.,Ltd

雨にゆれる女

ヒューマンドラマラブストーリーサスペンス
その出会いは、罪。

パリを拠点に世界で活躍し、ホウ・シャオシェン、ジャ・ジャンクー等世界の名匠を魅了してきた音楽家・半野喜弘、渾身の監督デビュー作。14年前のパリで、まだ俳優になる前の青木崇高と半野喜弘が出会い本作は生まれた。青木崇高初の長編単独主演作。ヒロインに期待の若手女優・大野いと。本名を隠し、別人としてひっそりと暮らす男。ある夜、突然男に預けられた謎の女。本当の姿を明かさないままふたりは次第に惹かれ合っていくが、お互いの隠された過去が明らかになる時、哀しい運命がふたりを待ち受けていた――。濃厚な色彩、優美な旋律、登場人物の息づかい…。現代の日本映画には稀な質感の映像で紡ぐサスペンスフルな愛の物語。
本名を隠し、‟飯田健次”という別人としてひっそりと暮らす男。人との関わりを拒む彼の過去を知る者は、誰もいない。ある夜、突然同僚が家にやってきて、無理やり健次に女を預ける。謎の女の登場で、健次の生活が狂いはじめる。なぜ、女は健次の前に現れたのか。お互いに本当の姿を明かさないまま、次第に惹かれ合っていくふたり。しかし、隠された過去が明らかになるとき、哀しい運命の皮肉がふたりを待ち受けていた――。

【監督メッセージ】
「罪」は気づかぬうちに我々の中に存在し、生きるとは完璧なまでに不公平。私は「他者として生きる」サスペンスの中で、逃れられない喪失を抱えた男女の贖罪を描こうと考えました。ふたりの苦しみと悲しみを通して当たり前の日常の価値を観客に伝えたいのです。音楽家として、ホウ・シャオシェン、ジャ・ジャンクー等の名匠たちと協働し多くを学ぶ一方、自分が求める創作が音楽のみでは表現できなくなってゆきました。私の中で音楽と映像は表裏一体。次の目標が映画製作に向かったのは自然でした。この映画特有の、湿度のある極めてアジア的な色彩と時間の流れ、日本文化の根幹でもある簡略化された表現は、私自身が日本人である証明かもしれません。


監督:半野喜弘
アジアの未来/ワールド・プレミア

10/28 17:00- 10/29 14:15-
予告編

『雨にゆれる女』予告

youtu.be

©「雨にゆれる女」members


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