「LuckyHouse のポートフォリオ」15 アドリアーナ・ウガルテ
鬼才アルモドバルの新ミューズは「情熱のシーラ」で脚光を浴びたスペインの新進女優

1985年1月17日、スペインのマドリードで生まれたアドリアーナ・ウガルテは、曽祖父が作家のカルロス・アルニーチェス、祖父が映画監督&脚本家のエドゥアルド・ウガルテという文化人家庭に育つ。

カンヌ国際映画祭の公式記者会見(5/17:現地時間)に登壇したアドリアーナ・ウガルテ
Photo by Yoko KIKKA

演技とダンス、哲学を学んだ後、2001年に短編映画「Mala espina」で女優デビューした彼女は、翌年にはTVドラマに初出演。2006年の初長編映画「Cabeza de perro」で、スペインのアカデミー賞にあたるゴヤ賞の最優秀新人女優賞候補となる。
2013年にはヨーロッパの高級スポーツカーのストリートレースを描いたスペイン映画『ワイルド・ルーザー 』に出演し、本作は日本でも公開された。
そして同年、スペインの作家マリア・ドゥエニャスのベストセラー小説を原作とする大河ドラマ「情熱のシーラ」(2015年にNHK総合にて放映)のヒロイン役に抜擢されて、大ブレイク!

この「情熱のシーラ」は、スペイン内戦および第二次世界大戦下のスペインとモロッコ、ポルトガルを舞台に、平凡なお針子シーラがひょんなことからスパイ活動に従事することになり、波乱の人生を歩む姿を鮮烈かつ異国情緒たっぷりに描いたロマンス・ミステリーで、時代に翻弄されながらも逞しく生き抜いていくヒロインを熱演したアドリアーナ・ウガルテは一躍、人気女優の仲間入りを果たした。

『ジュリエッタ』のカンヌ記者会見:左からアドリアーナ・ウガルテ、P・アルモドバル監督、エマ・スアレス
Photo by Yoko KIKKA

2015年10月には、第12回ラテンビート映画祭のゲストで初来日。主演したミステリーTVドラマ「Habitaciones cerradas」が上映され、新宿バトル9で舞台挨拶を行っている。

そして、今後の活躍が増々期待される気鋭女優アドリアーナ・ウガルテの最新出演作『ジュリエッタ』が、11月5日に公開される。

美しいデコルテが映えるアドリアーナ・ウガルテ
Photo by Yoko KIKKA

本作は『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』などで知られるスペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督が、カナダのノーベル賞作家アリス・マンローの短編小説3編をひとつの物語にまとめて自ら脚本化。孤独な女性ジュリエッタが母親としての自分、そして一人娘と向き合う姿を回想シーンを織り交ぜながら、老練な語り口と色鮮やかな映像美でミステリアスかつエモーショナルに描き出した話題作だ。

今年のカンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映された『ジュリエッタ』はペドロ・アルモドバルの長編20作目にあたる上、数奇な運命を辿る主人公ジュリエッタの現在と過去を2人の女優が演じ分けたことでも注目され、その公式記者会見には大勢のジャーナリストが駆けつけた。

左から家政婦役のロッシ・デ・パルマ、夫役のダニエル・グラオ、アドリアーナ・ウガルテ
Photo by Yoko KIKKA

本作で若き日のジュリエッタを生き生きと演じたアドリアーナ・ウガルテは、劇中でブロンドの80年代風ショートヘアと雰囲気がガラっと変わる巻き髪ロングヘアを披露。ビビッドカラーの大胆な配色のファッションも見事に着こなしており、とても魅力的だ。
一方、洗練された熟年女性になった現在のジュリエッタを演じたのはスペインのベテラン女優エマ・スアレスで、2人が瞬時に入れ替わるシーンも見ものである。

2人1役でヒロインを演じたアドリアーナ・ウガルテとエマ・スアレスについてアルモドバル監督が、「ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ビクトリア・アブリル、マリサ・パレデス、セシリア・ロスといった私の女神たちと肩を並べる存在になった」と絶賛しているのも頷ける意欲作だ。
(Text by Yoko KIKKA)

吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
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ペドロ・アルモドバル監督最新作『ジュリエッタ』特報

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