『菊とギロチン -女相撲とアナキスト-』が釜山国際映画祭のAPM(企画部門)で受賞したことがわかった。

大作『64-ロクヨン- 前編/後編』の監督 瀬々敬久が、人間が持つ「罪と罰」を掘り下げ、上映時間4時間38分という壮大な自主映画『ヘヴンズ ストーリー』公開されてから5年--次なる自主企画の舞台に選んだのは、関東大震災直後の時代の空気を描く新作『菊とギロチン -女相撲とアナキスト-』

今作で、釜山国際映画祭で併設されている、新たな映画企画に対してサポートするAPMで、今年より新しく創設されたBright East Award賞を受賞して、15,000ドル(USD)の賞金を獲得した。

メジャーな大作から、インディペンデントな作品を両方作れる瀬々敬久監督。
この作品は、その自主企画のユニークな作品で話題を集めている。

登壇しているプロデューサーの坂口一直 https://twitter.com/kikugiro2016/status/785843382962774016

映画は、関東大震災後の混沌の中で、様々な大衆文化が花開くと同時に軍事国家への道をひた走る大正時代末期の日本が舞台。
当時農村を中心に活況を呈していた、「女相撲興行」の力士たちと、格差のない理想世界を夢見る若きアナキストたちの出会いを軸に、庶民たちの荒々しくも猥雑なパワーを、ロマンスあり、活劇あり、社会風刺ありで描く骨太エンターテインメント作品。

かつて、女相撲の興行が日本全国に渡って行われていたことは、あまり知られていない。
今もわずかに、地方の村おこしイベントで企画されたりしているが、当時の盛況を語り継ぐ者はほとんどいなくなっている。
江戸時代に始まった女相撲は当初の見世物的なものから、時代を経てより格闘技的なものに変わっていった。そして昭和の高度経済成長期とともに静かに幕を閉じた。
そこには大相撲にも劣らない力士がいたし、純粋に相撲をしたくて土俵に上がっていた女性たちも多くいた。
歴史の表には出て来ない女相撲がかつてあり、そこには魅力的な女力士たちが生きていた。

右が女相撲のポスター

https://twitter.com/kikugiro2016

この映画に登場するアナキストたちも実在した人々だ。
暗殺を企てると言ってはいるもの、今の若者とあまり変わらない。
ドジで間抜けで優しくて純粋、そして社会をよりよくしたいと思っている若者たち。

そんな彼等が、もし女相撲の力士たちと触れ合っていたらと仮定してつくられた物語。
事実に基づいたフィクション。
歴史の偶然なのか必然なのか、東日本大震災後の日本社会に漂う不寛容で不穏な空気は、関東大震災後のそれとあまりに似通っていないだろうか?

本作が、この時代に生きた人々を活写することで、その後のアジア諸国を巻き込んだ侵略戦争への道を捉え直し、現在世界各地で頻発している様々な問題や紛争とその克服に思いを馳せるきっかけとなることを望む。

瀬々敬久監督  最新自主企画『菊とギロチン -女相撲とアナキスト-』特報

瀬々敬久 最新自主企画『菊とギロチン -女相撲とアナキスト-』特報!

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瀬々 敬久(ぜぜ たかひさ)
京都大学哲学科在籍中より、8mm、16mm などで自主映画を製作。卒業後、映画制作会社「獅子プロダクション」に所属。
1989年、ピンク映画『課外授業 暴行』で監督デビュー。1997年『KOKKURI こっくりさん』で、一般映画デビュー。
以後、一般映画、ピンク映画、テレビドキュメンタリーなど、ジャンルを問わず縦横無尽に活躍。豊川悦司主演の『DOG STAR』(2002)、Gackt主演の 『MOON CHILD』(2003)、妻夫木聡主演の『感染列島』(2009)、岡田将生主演の異色アクション映画『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015)など商業的な作品を作り続ける。
一方、4時間38分の超長編映画『ヘヴンズ ストーリー』(2010)はインディーズ体勢で製作、ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞するなどした。
2016 年は、横山秀夫原作、佐藤浩市主演『64-ロクヨン- 前編/後編』

題名「菊とギロチン -女相撲とアナキスト-」
監督瀬々敬久
脚本瀬々敬久、相澤虎之助(空族)
出演者未定撮影時期2016年秋上映時間約120分
公開予定2017-2018年

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