仲間たちと戯れて過ごすしあわせな時間。
いつまでも続くといいのに、続かないことも知っている、儚い夢のようなひととき。


不思議な町に迷い込んだバンドマンが住人たちと過ごす酩酊の日々。
これまでピンク映画を撮ってきた黒川幸則監督の自主製作に、映画に限らず音楽や現代アートに関わる個性的でフレッシュなスタッフ&キャストが顔を揃えた。
脚本はジャンルレスなライブパフォーマンスで知られるハードコアパンクバンド「core of bells」の山形育弘。主演&音楽は「のっぽのグーニー」や「ju sei」などで活動するミュージシャン・田中淳一郎。ほか『ジョギング渡り鳥』が話題の鈴木卓爾、『恋の渦』の柴田千紘、『サロメの娘アナザサイド』の長宗我部陽子らが脇を固める。
撮影は小林耕平や梅田哲也ら現代アーティストとコラボを続ける渡邉寿岳が担当。

各界の奇才が集まりどことも知れない浮遊感に満ちた世界を描いた本作は、観る者を心の奥底に眠るユートピアのような新鮮で懐かしい甘美な時間へと誘う。

<監督から>
「映画は音楽に嫉妬している」とか「サイレント映画は音楽に取って代わるはずのものだった」というような話をゴダール監督がどこかでしていたと思うのですが、それでというわけでもないですが、今回は脚本家がバンドマンだったり、出演者もミュージシャンやダンサーだったりと、映画畑でない音楽の人たちとやってみて、しばしば映画の方が彼らが普段やってる事よりつまらないんじゃないかと不安になる事がありました。それでもみんなは映画がどんな風に作られるのか興味津々のようで、映画のルールを知りたがるのですが、こっちは逆に映画からはみ出していくようなところを求めていたり、しかし一方でやはり映画であることを保持しようとしたりして、そのせめぎ合いみたいなものが脚本から撮影、編集の段階まで続いたように思います。私は映画を人に教えられるような監督ではないのでむしろ面白い彼ら・彼女らに頼りっぱなしだったという事もあったのですが、そうして綱渡りみたいにしてできたこの凸凹の多い自主映画がそれでも楽しめるものになっているのなら、彼ら・彼女らをキャスティングし、またスタッフィングしたことだけは自負していいのではないかと、この人物、この風景、この映像と音を手に入れただけでも幸運だったと、それでこの76分のささやかな映画が音楽のようなものとして誰かに好まれたらいいと、そう願っています。(黒川幸則)

                                     

黒川幸則(製作・監督・編集)1970年、三重県出身。チャップリンが好きで8ミリ映画を撮り始める。早大シネマ研究会に所属、滝田ゆう原作『ラララの恋人』を撮る。卒業後、鎮西尚一、常本拓招、山岡隆資ほか多数の監督の現場につく。1997年『淫乱生保の女』で監督デビュー。その後、本名と今西守名義でピンク映画の脚本を多数手がける。助監督も続け、TV『七瀬ふたたび』(七里圭監督)、『鎖縛』(カジノ監督)、『亡国のイージス』(阪本順治監督)、『ミンヨン倍音の法則』(佐々木昭一郎監督)などにつく。監督作は他に『火照る姉妹』『夜のタイ語教室』『ある歯科医の異常な愛』。

<ストーリー>
バンドのツアー中に見知らぬ町で取り残された中西(田中淳一郎)は、町のボスのような存在である古賀(鈴木卓爾)に目をかけられ仕事を手伝うようになる。町の住民たちは酒を飲み交わし、外れにある川からさまよい出てくるものたちを追い返す。川にまつわる特別な力をマネージメントすることが彼らの仕事だった。古賀の店で働く絢(柴田千紘)に惹かれながら、次第に中西はこの町と自分に深い繋がりがあることに気付き始める……。

VILLAGE ON THE VILLAGE Movie Trailer

youtu.be

製作・監督・編集:黒川幸則
     脚本:山形育弘 音楽:のっぽのグーニー(田中淳一郎)
     撮影:渡邉寿岳 録音:青石太郎
    出演:田中淳一郎、鈴木卓爾、柴田千紘、佐伯美波、
        只石博紀、宮崎晋太朗、赤堀超太郎、田中真琴、
           しのっぺん、なしの、桒野有香、ペトル・ホリー、
           瀬木俊(coreofbells)、山形育弘(coreofbells)、
飯島大介、園部貴一、長宗我部陽子
    配給:STANDARDS OF LOSSTIME 
       劇中歌:「蛙」「いい?」music&lyrics by 田中淳一郎
      
  ヨーロピアンヴィスタ/カラー/デジタル/2016年/上映時間76分

8月6日(土)より2週間 新宿ケイズシネマにてレイトショー