映画『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト(原題: Paco de Lucia: la búsqueda)』

2014年に66歳で急逝したスペインの天才ギタリスト、パコ・デ・ルシアの功績に迫るドキュメンタリ。実の息子であるクーロ・サンチェスが初監督を務め、フラメンコだけでなくジャズやブルースなども取り込んで唯一無二の存在として名を馳せた父親の人生の光と影を映す。

本作では貴重な演奏映像や、カルロス・サンタナ、チック・コリアらギター界のレジェンドたちのインタビューなどによって構成。監督の姉妹もプロデューサー、脚本として参加し、亡き父の魅力に肉迫していく。

常人を凌駕するテクニックで人々を魅了し続ける男の生き様に感銘を受ける。うーん、身内が製作しているからだろうか? パコ本人の優しさや温かさ、ユーモアなど人間らしさや人間としての魅力に溢れた作品になってるんだよね。全体的に抑揚のない展開だったり、構成にもうひと捻りあっても良さそうだったりするけれど、とても美しい映像で全然飾ってない等身大のパコを丁寧に描いているというのは最大の魅力じゃないかしらね。
温度感というか、空気感というか、熱さっていうかがそのままなのでダイレクトにパコの孤独や葛藤や厳しさ含めた生き様が伝わってくる。

パコ本人や演奏仲間、証言者らの目の覚めるような言葉たちに胸を震わせ、数々の名演奏に感極まり、溢れ出る官能に痺れた。批判されようが、評価されなかろうが、音楽に対する自分のスタイルを崩さずに一歩一歩進んだその生き方が今のフラメンコを作ったんだろうなあと思ったり、自分にも音楽にも厳しかったからこそ栄光を勝ち得たんだろうなあと思ったり、ただの天才だけじゃダメなんだね。そういった意味では生い立ちから演奏家としての苦闘までを追った伝記物としても楽しめる。
生み出した音楽は永遠なんだよね。素晴らしいな。

シネフィル編集部 あまぴぃ

『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト』TRAILER

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