映画『いしぶみ』

『海街diary』の是枝裕和監督と綾瀬はるかが再タッグを組み、戦争の悲惨さを伝える「いしぶみ 広島二中1年生全滅の記録」を基に綴る朗読劇。

1969年に大女優・杉村春子による語りで広島テレビが制作した原爆ドキュメンタリ『碑』を蘇らせた作品で、2015年に同局が戦後70周年特別番組として制作・放送した『いしぶみ 忘れない。あなたたちのことを』を劇場用に再編集した。

昭和20年(1945年)8月6日、広島市の中心部を流れる本川の土手で建物の解体作業にあたっていた旧制広島二中の1年生321人は、わずか500メートル先に投下された原子爆弾で全員が命を奪われた。遺族の手記に残された彼らの最後の言動を、広島県出身である綾瀬が切々と読み上げる。
さらにジャーナリストの池上彰が遺族や関係者らへのインタビューを通し、70年経た現在も終わらない物語の続きを伝えていく。
戦争の生々しい記憶が胸に響く。綾瀬が朗読を行なうステージの美術を担当したのは、劇団☆新感線や野田秀樹、三谷幸喜の舞台美術を手掛ける堀尾幸男。

もう、ツラい…。本当にツラい…。胸が痛い…。言葉も出ないほど悲しい…。全ボクが泣いた…。
感動して泣いたわけじゃない。罪のない子供たちの日常と未来が突然奪われた、その無念さや悲惨さに。戦争の無惨さや悲惨さに。涙なくしては観られない。ただただ淡々と「○○君は、××して、△△しました。そして、□□日、死にました」を繰り返すだけ。すべて実名と写真もある。他に遺族の証言と当時の記録による事実も淡々と挿し込まれる。
この構成と演出は、ボクら観客の想像力に対する期待と信頼の表れなんだろう。“伝える”ということについてしっかり考えられていてとても素晴らしい。歴史の教科書だけではなく、色々な方法で語り伝えていくこと、記憶していくことはとても大切なことだよなあ。

犠牲となった子供たちのあどけない顔を観ているとこのような悲劇は二度と繰り返していけないと心の底から思う。想像を絶する悲しみの上に今の日本、そしてボクらがあるんだなあとしみじみ…。
米国憎しだけでなく、原爆が落ちて、こうなったんだというこの記録を全世界が観るべきじゃないかとすら思う。
試写に招待いただかなかったら忙しさにかまけて観なかっただろう。この作品を通して1人でも多く平和への強い想いが芽吹くきっかけになれば嬉しい。今度息子と娘に逢ったら思いっきり抱き締めたい。

シネフィル編集部 あまぴぃ

『いしぶみ』劇場予告編

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