映画『恐怖のメロディ』(クリント・イーストウッド監督)をBS放送で鑑賞した。作品の素晴らしさを確認するとともに、撮影監督のブルース・サーティスってズーミングが好きなんだなァと つくづく思った。お父さまで同じく撮影監督のロバート・サーティスも、映画『卒業』で とびきり印象的なズーミングを見せてくださったものだけれども。

カリフォルニアのラジオの人気DJと、彼にジャズの名曲『ミスティ』をいつもリクエストしながら次第にストーカーと化していく熱狂的ファンの女性。事態はエスカレートして最後には──。

このタイトなプロットのサイコ・サスペンスをわざわざ第一回監督作品に選んだところからして一筋縄ではいかないクリント・イーストウッドは、のちに巨匠となる偉大な才能の片鱗を、ここで早くも見せてくれている。

長い会話を複数のシーンにまたがる引き画の歩きの積み重ねで聴かせていくなど70年代流行りの演出をきっちり採り入れつつも、基本は、師匠のドン・シーゲル監督(『ダーティハリー』)ばりの職人的技巧で、そこに、のちにさらに明確になる、イーストウッド特有の芸術的・作家的感性を忍び込ませている。

師匠で盟友のそのドン・シーゲル監督が、DJ行きつけの店のマスター役で友情出演して名演技を見せてくれているのも、たまらなくうれしい。

何度もリクエストされる『ミスティ』を観客にはほぼ聴かせず、ある仕掛けによって、最後の最後でフルコーラスを流して聴かせてみせる、その王道の構成、演出が、文句なしにうまい。

映画『恐怖のメロディ』
(原題:“Play Misty for Me”)
6月28日、BSプレミアムにて鑑賞

Play Misty For Me Trailer 1971 Movie with Clint Eastwood

youtu.be

Misty『ミスティ』
サラ・ヴォーン バージョン

Sarah Vaughan "Misty" Live 1964

www.youtube.com

旦(だん) 雄二 DAN Yuji
〇映画監督・シナリオライター
〇CMディレクター20年を経て現職
〇武蔵野美術大学卒(美術 デザイン)
〇城戸賞、ACC奨励賞、経産省HVC特別賞 受賞
〇日本映画監督協会会員(在籍25年)

映画監督danchanのブログ
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