第17回 
日本人タレントが中国本土に進出するなら絶対に知っておいた方が良いこと!

台湾、香港、中国本土など中華圏での仕事歴20年
(うち半分の10年は中国暮らし)
自称!日中友好大使の小松拓也です。

小松拓也

前回までは近年における中国本土の芸能産業の急拡大と、それに伴うタレントのギャラの高騰を紹介しましたが、今回のブログでは日本人タレントが中国を拠点に活動する上でのリスクや困難な点を紹介していきたいと思います。

これは中国本土を拠点に選ぶならば絶対に度外視出来ない問題!「それが日中間の政治問題です。」
「中華圏進出を目指す日本人タレントの入り口は?北京?上海?台湾?香港?どこがいいか? 」の記事でも紹介しましたが、台湾や香港ならば日本との政治関係が仮に若干悪くなることがあったとしても、その地で活動する企業や個人が政治問題が直接的な理由で被害を被るというケースは基本的に考えられません。(職種や風評被害の度合いにもよるでしょうが)

2012年、日本が尖閣諸島国有化を決定した時期に起こった中国国内の大規模半日デモ
http://www.47news.jp/movie/general_national/post_7569/

もちろん日本も同じですよね。
政治間の問題が海外で活動している人間に全く害をきたさないか?といえば、必ずしもそうであるとは言えないかもしれないですが、例えば日中関係が冷え込んだからといって、日本で活動する中国人タレントの仕事がドタキャンになったり、仕事が出来ない状況に陥るというケースはまずないですよね。
でも、知っておいてください。中国において日本人タレントは国同士の政治関係の煽りを簡単に、しかももろに受けます。

僕個人も中国在住時代、何度もこの洗礼を受けることになりました。
例えば、小泉元首相が靖国神社へ参拝した翌日。
元々決まっていた仕事が「今回の仕事は日本人を使えなくなった!」という国の急なお達しにより、当日仕事がキャンセルされました。
ある時は石原慎太郎元都知事が中国批判を公の場で発言したことがきっかけで僕個人の仕事をキャンセルされました。
このような政治問題の煽りを受けて急に仕事が出来なくなったことは、上海在住時代の6年間で大体5~6回ほどあったと思います。
その中には企業さんが主催する商業イベントの場合もありましたし、日本領事館や上海市が後援して執り行う大規模の日中友好イベントだったこともあり、イベント自体の開催を禁じられたことにより結果、個人としても仕事を失ったという内容でした。

中国で行われた日中友好活動における中国では珍しいマグロの解体ショー
http://www.insightchina.jp/newscns/2013/03/29/102189/

公的機関である日本領事館や上海市が後援するイベントならば政治の煽りを直に受けても仕方ないと思われた方もいるかもしれないですが、企業単体で起こす商業イベントさえも、政治関係が冷え込んでいる時期は日系企業が中国国内でイベントを開催するのが相応しくないと判断され、中止に追い込まれる可能性があるんです。

イベントというのは開催されなくても諸準備に多くのお金や人の手間や労力がかかるわけですが、開催出来ないとなれば当然全てこれらは水の泡となります。
もちろんイベントに対する補償はされないほか、かかった費用は戻って来ません。
こういった問題は中国で活動するタレントに限った話でなく、中国の日系企業で働く日本人を含む全ての日本人に例外なく当てはまる事例です。

ただ、その中でも他の職種に比べてタレントはかなりダイレクトに政治問題の影響を受けます。
テレビなどの公の場に出る広報的役割を担う活動がそもそもこれらの直接的な対象にされやすいのでしょうが、政治問題で他の職種の日本人が影響を受けない中でも個人的に仕事をキャンセルされるようなことも時にはありました。
時の総理が靖国神社参拝するだけで上記の事態ですから、2012年の日本政府による尖閣諸島国有化に始まった日中関係の悪化は本当にひどいものでした。

中国で日本人として一番の知名度を誇る矢野浩二さん
http://j.people.com.cn/94638/94657/7308510.html

日中国交正常化以来最悪の関係にまで陥ったと言わしめた尖閣問題により、僕は当時中国での全ての仕事を失いました。
それまでの中国でのキャリアや実績もある日突然、一切関係なくなり、上海の有力者たちの助けや力さえ及ばないほどに深刻だった政治問題は、僕や矢野浩二さんをはじめ、中国で活動していたタレントたち全ての仕事をおよそ2年近くその後、許可してくれませんでした。

さすがに今後、あそこまでの関係悪化が再びあるか?と言われると可能性は低い気がしますが、少なくても理想は別として、現実的には大なり小なり日中間の政治問題による中国国内での上記のような事態は今後も起こるだろうと個人的には考えています。
個人的にはこれはもう仕方のないことだと割り切っています。
と、今回は中国本土を活動拠点に選ぶ日本人タレントたちにとって最低限の知識と心構えをお伝えさせて頂きました。
次回は、また違った角度から皆さんの活動に参考になるであろう話をさせて下さい。

1977年生まれ。
高校を卒業するとともに金城武のような多言語を操る国際的な俳優を目指し、台湾へ語学留学。
2003年に台湾でリリースした北京語CDアルバム「一萬個為什摩」は二万枚のセールスを記録。2007年に中国の国民的テレビオーディション番組「加油!好男児」に参加をし、約八万人の応募者の中からトップ20位に残った唯一の外国人ということで大きな注目を浴び、番組終了後は数多くの中国のテレビやイベント、雑誌などに出演するほか、数社の企業広告のイメージキャラクターを務め、日本の音楽を紹介する「音楽物語in Japan」のMCを務めるなど幅広く活動。
また、国家プロジェクトである上海万博の開幕式への参加や、世界中の華僑を台湾に集めて台北小巨蛋をステージに行われた四海大同では、2万人を前にイベントのテーマソングを歌うなど、その功績を中国からも認められている数少ない日本人の1人。

小松拓也オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/takuyashanghai/