「カレイド シアター あなたの、指定席」『夕陽のガンマン』


さて、次のコーナーは「カレイド シアター あなたの、指定席」。懐かしの名作をストーリーとスターで思い出していただこうというコーナーです。
今週の上映作品は 「夕陽のガンマン」。
「夕陽のガンマン」は先週ご紹介した「荒野の用心棒」の続編です。主役の、クリント・イーストウッド演ずるガンマンのスタイルは「荒野の用心棒」と同じで、仕事は賞金稼ぎ。名前は名乗りません。作品によって他の登場人物が勝手に呼び名を付けることがありますが、「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」の三部作は「名無し」三部作、または「ドル箱」三部作と言われています。
 日本公開は1967年ですが、製作は1965年。「荒野の用心棒」の大ヒットによって、セルジオ・レオーネ監督に、より大きな製作費による「マカロニ ウエスタン」の製作が依頼されたもの。セルジオ・レオーネ監督は、前作に続きイーストウッドを起用したほか、もう一人アメリカから西部劇スターをリクルートします。それが、リー・ヴァン・クリーフでした。
 ポンチョ姿の名無しと、黒ずくめのスタイリッシュなモーティマー大佐のコンビが、再び「マカロニ ウエスタン」を印象付け、ファンを獲得した作品です。
 「名無し」三部作はクリント・イーストウッドを映画スターに育て上げた作品ですが、アメリカで第一作「荒野の用心棒」が公開された時には、主演のイーストウッドすら公開されていることを知らなかったという、B級の外国映画扱いにされていました。
 しかし「荒野の用心棒」の大ヒットによって、そこに西部劇スターの需要があることが知られ、イタリアに渡るスターも出てきます。それが「夕陽のガンマン」のリー・ヴァン・クリーフでした。舞台出身の俳優ですが、1952年の「真昼の決闘」で映画デビューするとともに悪役として注目され、数々の西部劇に出演しています。1959年に事故でひざを痛め西部劇で馬に乗ったアクションは難しいと言われ、半ば引退状態になり、1962年に「リバティ・バランスを撃った男」などに久しぶりに出演したものの、西部劇自体が斜陽になっていたところにやって来たのが、マカロニ ウエスタンへの出演依頼でした。40歳のときです。鋭い眼光、鷲のような鼻、とがった顎。スリムな長身に黒いジャケット、黒いロングコートを着こなし、馬も黒ずくめという、いかにも、悪役っぽいいでたちが、異彩を放っています。
 この「夕陽のガンマン」の続編にも登場したほか、何本ものマカロニウエスタンに出演し、もう一度俳優として花を咲かせたわけですね。
現在活躍中の映画監督たちにはマカロニウエスタンのファンがたくさんいて、大好きなマカロニウエスタンにオマージュを捧げるような作品を作る監督もいます。
 そのひとりがクウェンティン・タランティーノ監督で、「続 荒野の用心棒」にオマージュを捧げたのが「ジャンゴ 繋がれざる者」ですし、最新作の「ヘイトフルエイト」には、様々なマカロニ ウエスタンへのオマージュが見受けられます。例えば、「ヘイトフル エイト」で舞台になる宿屋にいるスミザース将軍のキャラクター設定は「夕陽のガンマン」のモーティマー大佐を思い起こさせます。そして何と言ってもエンリオ・モリコーネの音楽!! アカデミー賞の授賞式ではモリコーネの受賞にスタンディング・オーベーションが起こったのも記憶に新しいところです。
また、「続 夕陽のガンマン」は韓国映画としてリメイクもされています。2008年の「グッド・バッド・ウィヤード」はタイトルも「続・夕陽のガンマン」の原題「グッド・バッド・アグリー」をいただいたもの。舞台こそ中国大陸になっていましたが、ストーリーやキャラクターはオリジナルに限りなくオマージュを捧げたものになっていました。

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