世田谷美術館において「竹中工務店400年の夢 ―時をきざむ建築の文化史―」が2016年6月19日(日)まで開催されています。展示されている膨大な数の建築物を竹中工務店が手がけてきたのかと驚きますが、展示内容は一企業をとりあげながら日本の近代史(建築史にとどまらない)の一面を分かりやすい形で見せています。

1610年に創業した竹中工務店は、大工の棟梁として400年の歴史をきざみはじめ、その棟梁精神は明治期以降の近代的建築業に発展する中に脈々と受け継がれています。それは設計と施工が一体となった業態に進化し、さらに活躍の舞台を世界へ広げています。本展では、長き歩みの中で創造された「かたち」の数々を写真、模型、図面などをメインとし、同時代の美術作品やグラフィックなど多彩な周縁資料を加えご紹介することで、日本の近代化の過程を"建築"という視点から眺望します。

題字は御年103歳の篠田桃紅さん。竹中工務店の季刊誌「アプローチ」に毎号一言をお書になっているご縁だそうです。

題字
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エントランスホールに横たわる巨大な柱
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展示会場導入部の通路にかかる「竹中工務店400年絵巻」。今回の展示に合わせて社員が制作してそうです。自社への愛情を感じます。

「竹中工務店400年絵巻」2015年 関ヶ原〜大正時代

「竹中工務店400年絵巻」2015年 昭和初期〜昭和58年

展示構成は下記の8つから成ります。

「はじまりのかたち」
竹中工務店の歴史は、織田家の普請奉行を務めた竹中藤兵衛正高にまでさかのぼることができます。以来、名古屋を中心に神社仏閣の造営に努め、今日まで400年にわたる歴史をきざんできました。ここでは大工棟梁時代の建築作品とそこに込められた美意識を、当時の歴史資料や再現模型を通してご紹介します。

「出会いのかたち」
劇場、ホテル、商業施設などは、さまざまな出会いを提供する場です。そこには一期一会のドラマがあり、時間と空間のはざまに織り成されるさまざまな目線が交錯しています。出会いの空間から得た印象は、時に人の心の深くにのこり、それは豊かな記憶へとつながっていきます。

「はたらくかたち」
時代の変遷や社会的要請によって、私たちの労働環境はさまざまに変化してきました。企業のそして都市の顔となる近代建築として誕生したオフィスビルディングがたんに労働する場所をこえて、長時間にわたり人が思考し創造する場であり生活空間の一部になるまでを、はたらく「かたち」の移り変りを通じご紹介します。

「夢を追うかたち」会場風景。 右手奥に季刊誌「アプローチ」の展示コーナー。
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「夢を追うかたち」
人類の歴史は夢を実現することの連続であり、私たちの生活はさまざまな技術革新によって大きく変化してきました。ここでご紹介する作品には、未体験の課題を克服しようとするパイオニア精神が宿っています。そして、その「かたち」は時を経てもなお、鮮やかな魅力を私たちに感じさせてくれます。

「夢を追うかたち 技術開発・挑戦」会場風景 「南極観測用施設」。右手は現代アート作品のような壁パネルの実物。
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「東京タワー」や「通天閣」といったお馴染みのタワー建築も竹中工務店の施工です。

「夢を追うかたち タワー」会場風景 「日本電波塔(東京タワー)」と「通天閣」
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「感性を育むかたち」
建築は人間の感性や感受性に、さまざまに作用します。とくに学校建築=教育施設は、子どもたちの成長にとって大切な器です。また美術館や博物館は人々が多彩な文化と出会う場であり、一点の作品から個人的で独特な感動を得る空間です。豊かな感性をおしひろげる工夫に満ちた「かたち」をご紹介します。

「夢を追うかたち スタジアム」会場風景 展示されている中では最新作の2015年竣工「市立吹田サッカースタジアム」
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「暮らしのかたち」
暮らしの空間には、一定の機能性を前提に、個を保つ空間と、そこで過ごす人々が共有する空間が配置されています。暮らしの最小単位は個人ですが、それは家族や周囲の人々との接点を生み出し、やがて地域社会へと領域を広げていきます。ここでは、さまざまな暮らしの「かたち」をご紹介します。

「時を紡ぐかたち」
私たちは時の流れの中で、日本の近代化を支えた建築、また日本古来の住まいの「かたち」を失ってきました。しかし近年、こうした道程に対する自省が社会に広まっています。ここでは、建築文化の継承、保存、修復、復元をテーマとし、さらに和の文化をあらためて耕し、伝えていこうとする今をご紹介します。

連絡通路の先には映像で足跡を知る空間が待っています。
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「これからのかたち」
地球は、私たち人間のためだけのものではありません。建築の原点は生命を繋ぐ工夫から始まりました。それはやがて感性を育てる拠りどころとなっていきます。「これからのかたち」では、人間と環境のつながりを考え、竹中工務店の考える生命の延長としての建築のあり方をご紹介します。

そして、展覧会場をしめくくるのは木製の橋。大工棟梁の阿保昭則氏の手によってつくられたものです。時を超えて現代に受け継がれ、また未来へと続く「ものづくり」の精神を象徴する空間です。

展覧会場をしめくくる木製の橋。 制作:阿保昭則(大工棟梁)
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80年前の味わい―クラシック・スタイルの雲仙観光ホテルのメニューを再現!

「竹中工務店400年の夢」展に関連して、美術館の併設レストラン「ル・ジャルダン」では、竹中工務店が1935(昭和10)年に手掛けた洋風建築のホテルの先駆け、雲仙観光ホテルの幻のメニューの再現に挑戦します!

雲仙観光ホテルは、外国人観光客をもてなすために建てられました。日本在来建築の様式を活かし、豪壮華麗さと素朴で簡潔なコテージ趣味を兼ね備えたクラシックホテルとして現在も愛され続けています。2003(平成15)年には、雲仙天草国立公園の街並みづくりの貴重な景観構成要素として、国の登録有形文化財にも指定されています。

「ル・ジャルダン」サイト http://www.setagaya.co.jp/le_jardin/course/index.php

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展示概要

展覧会名:「竹中工務店400年の夢 -時をきざむ建築の文化史-」
会期: 2016年4月23日(土)−6月19日(日)
開館時間: 10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日: 毎週月曜日 
会場: 世田谷美術館 1階展示室

観覧料: 一般1000円(800円)、65歳以上800円(600円)、大高生800円(600円)、中小生500円(300円)
※( )内は20名以上の団体料金。
※障害者の方は500円(300円)、ただし小・中・高・大学生の障害者は無料。介助者(当該障害者1名につき1名)は無料。
※リピーター割引 会期中、本展有料チケットの半券をご提示いただくと、2回目以降は団体料金にてご覧いただけます。

主催: 世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)
後援: 世田谷区、世田谷区教育委員会
特別協力: 株式会社竹中工務店、公益財団法人竹中育英会、公益財団法人竹中大工道具館、公益財団法人ギャラリーエークワッド
助成: 公益財団法人朝日新聞文化財団
TEL: 03-3415-6011(世田谷美術館 代表)
URL: http://www.setagayaartmuseum.or.jp/

関連企画

●講演会-2「技を伝え、人を育てる」
2016年5月3日(火・祝)14:00~15:30(開場13:30)
●ワークショップ「やってみよう!けんちく体操」
2016年5月5日(木・祝)14:00~15:30(受付13:30より)
●講演会-3「建物と人間のあいだ」
2016年5月14日(土)14:00~15:30(開場13:30)
●対談「竹中工務店の仕事と写真家の眼」
2016年5月21日(土)14:00~15:30(開場13:30)
●講演会-4「大工道具の歴史とものづくりの心」
2016年5月28日(土)14:00~15:30(開場13:30)
●講演会-5「大工棟梁・木と向き合い、時を紡ぐ」(実演と解説)
2016年5月28日(土)15:45~17:15(開場15:40)
●ダンス・パフォーマンス「ヒトとキとキと」
2016年6月4日(土)19:30~20:30(開場19:00)
●講演会-6「竹中工務店が語る六つのかたち」
2016年6月11日(土)14:00~17:45(開場13:30)
●100円ワークショップ「木でつくるかたち」
会期中の毎週土曜日 13:00~15:00

http://www.setagayaartmuseum.or.jp/event/list.html#pe00517

「竹中工務店400年の夢 -時をきざむ建築の文化史-」  cinefilチケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「竹中工務店400年の夢 -時をきざむ建築の文化史-」チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いしております。
☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
  *応募締め切りは2016年5月15日 24:00 日曜日
記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。