映画『ヘイトフル・エイト(原題: The Hateful Eight)』
『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』などのクエンティン・タランティーノ監督が放つ、長編第8作でウエスタン仕立ての密室ミステリー。
全員が嘘をついているワケありの男女8人が閉じ込められた雪嵐の山小屋で起きた殺人事件の意外な真相を映し出す。
ベテランでタランティーノ監督作品常連のサミュエル・L・ジャクソンをはじめ、『デス・プルーフinグラインドハウス』などのカート・ラッセル、『ミセス・パーカー/ジャズエイジの華』などのジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンズ、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーンらが顔を揃える。
彼らが織り成すストーリー展開はもちろん、タランティーノ監督が仕掛ける謎と伏線が張り巡らされた物語に釘付け。音楽をタランティーノ監督が敬愛する巨匠エンニオ・モリコーネが担当し、第88回(2016年)アカデミー賞で作曲賞を受賞。モリコーネにとっては名誉賞を除いては初のアカデミー賞受賞となった。
70ミリのフィルムで撮影され、画面は2.76:1というワイドスクリーンで描かれる。物語が進むごとに浮かび上がる真実にグイグイと引き込まれて、アッという間の168分。
いろいろとタランティーノっぽいけど、ミステリーは珍しいよね。章立ての構成、時間軸を戻すなど先が読めない展開、差別、マシンガンのような会話…。
特に前半は意味がなさそうでありそうな不思議な会話が続いて、キャラクタが語られるんだけれど、あとで効果的に活かされててね。そういった意味ではあと2回くらい観たいなあ。
紅一点のジェニファー・ジェイソン・リーの演技は印象に残ったね。とはいえ、米国社会への皮肉が痛快ですらあって、白馬と黒馬が並走するシーン(画も音楽も美しい)や、8人それぞれのキャラクタ設定やリンカーンの手紙などにタランティーノ監督の強いメッセージが込められているのだろう。
そして本作は70ミリフィルムの「ウルトラ・パナビジョン70」で撮影されててね、米国では70ミリ映写機でさらに30分程度長い休憩付きで上映してるそうな。日本では1館もやってないのは残念で仕方ない…。
バイオレンスも血しぶきもたっぷりなんで好みは分かれるかもしれないけれど…舞台劇のような見事な(俳優陣は楽しんでるね)芝居を楽しめる作品。
シネフィル編集部 あまぴぃ