『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります(原題: 5 Flights Up)』
アメリカのロングセラー小説に惚れ込んだ『ミリオンダラー・ベイビー』などのモーガン・フリーマンと『恋愛適齢期』などのダイアン・キートンが夫婦役で初共演を果たした人間ドラマ。
大物俳優2人が夫婦を軽やかに演じ、眺めも日当たりも良く、最高の物件なのだが、エレベーターがないため、今の家を売って新しい住居を得ようと奮闘する熟年カップルの数日間を映す。
『セックス・アンド・ザ・シティ』シリーズなどのシンシア・ニクソンがやり手の不動産エージェントである姪を好演。監督は『リチャード三世』のリチャード・ロンクレイン。
犬の活躍や、長年共に暮らしてきた夫婦の絆を描く物語が心に響く。こういうのをオトナ向けっていうんだろうなあ。派手さはないけど、ジワジワと心に沁みて来るよ。人生いろいろあっての今だなあとしみじみ…。
何と言ってもモーガン・フリーマンとダイアン・キートンの夫婦が絶妙のハマり役。夫婦2人、長年仲良く暮らしてきたんだなあという雰囲気がそこかしこに溢れていてホント素敵。テンボが良くて、夫婦の会話も軽快で洒落てて微笑ましくて楽しい。2人の若い頃の回想シーンを上手に織り交ぜながら色々あった40年をユーモアたっぷりに小気味良く、味わい深く描いてるんだよね。異人種間の結婚がタブーだった過去が語られ、それと比較するようにイスラム系人種が差別される現在や、ニューヨークの不動産事情、テロ等々様々な問題もさらりと描いてる。きっとあの時代はベトナム帰還兵も、ちょっと変わった女のコもブルックリンは受け入れたんだろうなあ。
ダイアン・キートンはメガネもシワも可愛いし、モーガン・フリーマンのダッフルコートも可愛くて2人ともオシャレ。ニューヨークの街の雰囲気も素敵、ブルックリンの街並みも良いね。“自分にとって何が1番大切なのか”をすんなり考えさせてくれる素敵な作品。一方で、加齢を受け入れるのは辛いけれどもだからこそ喜びも悲しみも笑いも共有できるパートナーがいることはとっても幸せなことなんだなあとシミジミ…。
シネフィル編集部 あまぴぃ