ハリウッドを代表する稀代の映像の魔術師、クリストファー・ノーランが次に選んだ題材は、第2次世界大戦。ノーラン監督が史実に基づいたリアルな戦争映画を作ることを意外に感じた映画ファンは多いかもしれません。

本作でもIMAXでの撮影を予定している監督クリストファー・ノーラン

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ダンケルクの戦い(イギリスの首相チャーチルが指令を下した場所が、発電機がある司令室だったことから、コードネーム:"ダイナモ作戦"とも呼ばれている。)とは、どんな戦闘だったのか? ノーラン作品ならではの本作からハリウッドを代表するような俳優に育っていきそうな話題のキャスト陣も続々と決まり、クランクインは5月、映画の公開は、2017年7月に予定されています。この戦争映画、再びIMAXでの撮影とフルCGを嫌う監督は、本物の戦艦を映画に登場させようとしています。米軍協力のもと、リアルな戦艦や空母が映画に登場することは過去にありました。しかし、米軍の万能装甲車ハンビーとランボルギーニのミックスのような異形のバットモービル・タンブラーを作ったノーランだったら、きっと今までの戦争映画では描かれることはなかった解釈のビジュアルやメカ・ガジェットを登場させるに違いなく.... 期待を込めて、ちょっくら推理してみました。そして、辿り着いたのが、第1次世界大戦で実際に実戦投入されていた"幻惑迷彩(Dazzle Camouflage)"を本作で登場させるのかもしれない?という荒唐無稽な大妄想。地味なグレー・トーンの印象しかない当時の戦争の時代にこんなにファッショナブルでアートなドハデ・カモ柄の戦艦があったとはにわかに信じがたいですが、歴史上、ホントにあったことなのです。当時、世界中の軍艦にこのカモフラージュ塗装が施されていくことを知った画家ピカソは、この幻惑迷彩は、自分のキュビズムの絵をパクっている!と云ったとか?

ダンケルクの戦い(コードネーム:ダイナモ作戦)とは?

A still from the 1958 'Dunkirk' film

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この戦いは、1940年5月24日から6月4日までのたった12日間に起きた第2次世界大戦の西部戦線での戦闘の一つ。当時、ドイツ軍によるフランス侵攻で、ドイツ軍の航空機、機甲師団といった新しい兵器を使用した圧倒的な電撃戦の前に連合軍は、フランス、最北端の砂丘の港湾都市、ダンケルクに追いつめられる。イギリスの首相、ウィンストン・チャーチルは、計33万人もの兵士(約19万人のイギリス兵、約14万人のフランス兵)を助け出すべく、急遽、860隻の軍用船だけでなく、輸送船、遊覧船、漁船、人が乗れるものなら、艀(はしけ)に至るまで、ありとあらゆる船舶を手配して、捨て身の大規模救出作戦を決行する。

ダイナモ作戦の歴史的意義とは?

イギリス軍は、莫大なコストがかかり、補充するには数年はかかるであろう全ての武器・兵器をその場に棄ててまでして、やむなく完全撤退する決断を下す。そこには、補充は可能な重兵器とは違い、訓練と経験を積んだ兵士を育てるにはもっと時間がかかるというイギリス軍の判断があったからです。ダンケルクでの大規模救出作戦の大成功で兵力を温存できた連合軍は、数年後、ドイツ軍に勝利することになります。

ダンケルクからの脱出時に活躍したハンバレット(ハンバー・ライト・アーマード・カー )/ Humber light armored car: Humberette

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いかにして連合軍はダンケルクから逃げ切ったのか?

ドイツ軍の執拗な空爆も鉄壁を誇る機甲師団もダンケルクに広がる砂丘が爆撃からの衝撃のクッションになり、砂丘では戦車兵団も思うように動くことができず、敗走する連合軍を海へ逃がすことになる。そして、イギリスとの海峡、海上での制空権を獲ることがままならず、水上艦船力をほとんど持たないドイツは、忍者のように水中から忍び寄り、容赦なく無警告攻撃を仕掛けてくる潜水艦Uボート部隊で追撃する。当時、Uボートの脅威を最も怖れていたチャーチル首相は、「重く暗い知らせが来るかもしれない」と戦況から悲観的に述べていたが、主な戦艦や輸送船の船体におそらく"幻惑迷彩(ダズル・カモフラージュ)"や船体に消磁を施すことで、磁気機雷やUボートの魚雷からまんまと逃げ切る(ことにそうしたユニークな装備が一役買った?)。チャーチルは、救出劇が大成功したとの報を聞き、一転して、「奇跡が起きた!」と叫んだという。実際にこの戦いでドイツ軍は、6隻のUボートを失っており、イギリス軍の戦艦は、不沈を誇ったUボートを封じ込める秘策の兵器を積んでいたのかもしれません。イギリス海軍省の奇人変人の集まりと云われた特殊兵器を開発する部署が生んだ対潜水艦用24連発多弾頭、ハリネズミ(ヘッジホッグ:対潜迫撃砲)が実際に登場するよりも一年ほど時期は早いのですが、そのプロトタイプの兵器が登場したりするのではないのでしょうか....? おそらく本作では、圧倒的に不利な情勢の下、戦況を覆すべく、イギリス軍が持つ知恵を総動員し、そして、イギリス兵らの命を賭けた人間ドラマが描かれてゆくことになると想像します。ストーリーの規模観からするともっと多くの主要キャストが出るハズで、フランス兵の視点も描かれるのかは、現時点では、不明.... もし、そうしたプロットも考えられているのなら、フランス人俳優もキャストされてゆくことでしょう。気になるところは、チャーチルやヒットラーも登場するのでしょうか? スパイや戦火の中の色恋沙汰とか、イギリスとフランスとの確執とか、ドイツ軍内での統率の乱れから生じるいがみ合いとか、枝葉に分かれたプロットの可能性を考え出すとキリがありません。

幻惑迷彩を実際のカラーで再現したイラスト画、まるでモダンな現代美術作品

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ダズル・カモフラージュ(幻惑迷彩)とは?

チャーチルは、かつてこのように語った。「奇術のように独創的で悪意ある手法で敵を混乱させ、打ち倒す」ダズル・カモフラージュ(幻惑迷彩)とは、まさにこのことで、船体を目がクラクラするようなハデな色合いの幾何学模様のカモフラージュ柄にすることで、錯視効果で敵の目を欺く。元々、イギリス海軍将校で画家でもあるノーマン・ウィルキンソンによる発案。

幻惑迷彩をほどこされた艦船は、艦首と艦尾の位置関係、またどこへ向かっているのかさえも分かりずらくなる。

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この図が示すように実際に向かっている方向とは別の方向へ攻撃を仕掛けさせる妨害効果がある

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まだレーダーで完全に敵艦を捕捉することが難しかった頃、魚雷は進行方向と速度を予測した地点へ撃ち込み、相手の敵艦を撃破していました。艦の種類、大きさ、進行方向、速度を分かりにくくすることで攻撃から逃れることを目的に幻惑迷彩は、考案されました。この迷彩をほどこされると艦首なのか、艦尾なのかが分かりにくくなり、遠ざかっているのか、近づいているかすら、見当がつかなくなると云われています。

Dazzle Camouflage

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幻惑迷彩艦コレ

ダズル・カモフラージュがほどこされた当時のハー・マジェティーズ・シップ(大英帝国艦隊)とイギリス商船の艦コレ。商船までも何故、幻惑迷彩なのかというと、当時、商船は、Uボートの格好の獲物だったからです。ほとんどがモノクローム写真だが、実際は、カラフルだった模様。

空母アーガス / HMS Argus (1918)

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イギリス商船 モーリタニア / RMS Mauretania

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砲艦キルダンガン / HMS Kildangan (1918)

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戦艦ロンドン / HMS London (1918)

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客船タイタニック号の姉妹船、イギリス商船オリンピック / RMS Olympic (c.1918) - The identical sister ship to RMS Titanic

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砲艦アンダーウィング / HMS Underwing (c.1918)

リアリティにこだわるノーラン監督、フランスの艦艇を借り出す

ノーラン監督が映画撮影のために借り出すマイエ・ブレゼ、普段は、仏、ナントの港に係留されている海に浮かぶ博物館で、子供たちのためにポップな幻惑迷彩がほどこされている / Maillé Brézé

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VFXではなくリアルな映像にこだわりがあるノーラン監督は、フランス、ナントに停泊している船の博物館を撮影のためにレンタルした。外装を撮影用に改装した後に撮影に臨む。この船に幻惑迷彩をほどこすのではないだろうか?

フランス海軍軽巡洋艦グロア / The Glory 1943

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主要キャストには、常連のトム・ハーディや友人であるレオナルド・ディカプリオがハリウッド・デビューを強く勧めていたワン・ダイレクションのシンガー、ハリー・スタイルズも決まり、いよいよ撮影も5月と迫ってきた。はたして、幻惑迷彩は、映画に登場するか? shutarowの妄想で終わるか、秘密主義で有名なクリストファー・ノーラン作品なので、きっと公開間際までは判明しないかもしれませんが、傑作が生み出されることを期待して来年の7月まで待ちましょう!