映画『下衆の愛』フェイク・インタビュー part1
監督TETSUO AOKI feat. 渋川清彦
interview 内田英治

(内田)今回は新作映画が公開を控える青木テツオ監督におこしいただきました。
青木監督は数々の映画祭でグランプリを受賞。その後もインディペデントの世界で様々な映画を撮影されてきました。
そもそも、映画を始めたキッカケを教えてください。

(青木)それ、難しい質問ですね(笑)。
俺、どこにでもある小さな地方都市で生まれ育ったんですけどね、そこに一館だけあったんですよ、小さな映画館が。親父が映画マニアでしてね、休みの日はその映画館に入り浸るわけですよ。で、子供の面倒も見なきゃいけないってんで、俺も一緒に連れてってたんですね。
それで、昔はフィルムでしょ。映写機からスクリーンに射し込む光が綺麗でねー。
俺、飽きずにじーっと見てて…いつか映画撮るぞーって。それがきっかけですかね。
たまに母親も映画館に連れてってくれたんですけど、母親は映画の途中から入って途中まで見る人だったんで、やっぱ親父と見たかったですよね(笑)。
当時は色々な映画やってましたよ。二本立てで。ジャッキーの『プロジェクトA』と『猛獣大脱走』とか。で、家に帰ると今度は親父が借りてきたレンタルビデオをひたすら見てたなー。当時はVHSで、田舎町にもレンタル店ができたんだよね。
家ではひたすら親父の趣味の映画見させられてね。スティーブマックィーンと、アメリカンニューシネマね。『真夜中のカーボーイ』見たときはもうショックでね。あのラストシーンは今でも脳裏に焼き付いてますよ。で中学入ると『アウトサイダー』見て、高校では急にヨーロッパ映画なんて見たりして。まあ、とにかく映画ばかり見てました。でも家で親と映画見てると、ほら、セックスシーンになると、いきなりシーンとしたりしてね。気まずいの。あれ、やだったなー。
俺、親のセックスも見ちゃったことあるから、すごい気まずいんですよ。母親が上に乗っててねー…

(内田)まあ…その、ご両親のプライベートな話は結構です。で、その後、インディシーンで映画製作をはじめるわけですが、その経緯を教えてください。

(青木)俺は21から映画撮ってますからね。いきなり映画祭でグランプリ獲って。
当時は天才とか言われたんですよ、これでも(笑)。
結局、そこから10年映画撮れなかったんだけどね。そもそも、まず、インディーズという概念について言いたいんです。インディーズって色々な意味を持ってるわけだけど、インディーズイコール自主映画、金ない、みたいな流れは違うと思うんですよね。インディーズというのは、やっぱり作家性の強い、作り手の個性が浮き出ている、そういう映画を指すと思うんですよね。自己資金で撮ったとか、安く撮ったとか、そういうのがインディーてわけじゃない。まずそこだね。で、その作家性を守りたいから、少ない予算で、大手じゃできないことをやるのがインディペンデント映画。
俺の敬愛するカサヴェテスはもちろん、その先駆者ですよね。ニューヨークインディーズの系譜で言えば、ウッディ・アレンやジャームッシュなんかも大好きだよ。

(内田)なるほど、ではインディーズ映画を撮られるときに苦労してる点などありますか?

(青木)そりゃ資金ですよ、世界中どこでもそうでしょ。
作家性というのは、あんまり歓迎されないからね。企画をあちこちに持って行くけど、どこにも相手にされない。それでも持って行き続けると、いつか撮れる可能性もある。
それが10年後だったりね、俺いくつだよみたいな(笑)。
映画監督ってのは本当に人生かけてんですよね。とりあえず30までやってみて進路考えるみたいなやつ、ふざけるなと。死ぬまでやんだよ、みたいな(笑)。やっぱ映画って、芸術と商業という二面性を持ってるぶんやっかいなんだ。お金出す会社とか、映画会社とか、やっぱ中身よりどれだけ稼げるかを見るわけですよ。どれだけ稼げるかを端的に知りたいとき、キャストを見る。売れてる、客を呼べる役者がいるかどうか。そこを見る。で、売れてるキャストというのは当然金がかかる。インディーにはそんな金ないから、売れてるキャストは出ない。イコール、金はやっぱり集まらないというわけ。それか、原作ね。ベストセラーのマンガの権利持ってたらお金なんてすぐ集まっちゃうんじゃないかな。まあ、でもそれだけ金がない中でも、やっぱり俺たちは映画を撮るんだよ。300円の弁当を「おい、250年のはないのか?」なんて言いながら。セコく、コツコツと、撮り続けるんだよ。

(内田)では最後に、監督にとって役者とはなんですか? 映画とはなんですか?

(青木)
役者? 役者は俺が敬愛してやまない芸術家だな。自分には演技なんて絶対に出来ないもん、いやじっさいすごい職業だよね。そこにいるだけで、存在感ある人たちだよ。
でも役者と自分で言えば、役者なのかというと違うと思うんだ。本物の役者はすごく少ないよ。日本はほら、芸能人と役者がイコールでしょう。海外はそこがきちんと分かれてるから、役者たちのプライドが半端ないよね。彼らはスターであると同時に技術者でもあるわけだから。エンジニアのおっさんが仕事にうるさいように、彼らもうるさい。それになるべくして役者になった人が多いよね。
高校や大学で演劇や、スタジオで学びながらチャンスを狙う。日本は、スカウト文化だもの。
あと俺にとっての映画? そりゃ危ないクスリみたいなもんだよ(笑)。やめたくてもやめられない。そういう危ない遊びだよね。だから命がけで俺は遊んでるんだよ。


(内田)本日はありがとうございました。次回はプロデューサーinterviewをお届けします。

青木テツオ(渋川清彦)が出演する『下衆の愛』

LOWLIFE LOVE (下衆の愛) trailer - Directed by Uchida Eiji, Japan 2016

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