ベトナム戦争終結から約40年
その後の世界はどうなったか?


フランシス・フォード・コッポラが問いかけた不朽の名作
1979年のカンヌ国際映画祭を震撼させたグランプリ作が
戦いの意義をいまふたたび問いかける

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『ゴッドファーザー』から『地獄の黙示録へ』

『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザーPART II』の世界的な大ヒットの後、フランシス・フォード・コッポラがその資産をつぎ込んで作り上げたのは、ベトナム戦争映画だった。原作となったのは1902年に出版されたジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』。小説の舞台となるのは当時のコンゴ川の流域で、そこには当時、ベルギー国王レオポルド2世の私有地としての「コンゴ自由国」が存在、そこでの搾取などが国際社会で問題となっていた。小説はその事実を背景に、フランスの貿易会社の物語へと骨組みを変えて、主人公がコンゴ川の奥地に住む「クルツ」(英語読みはカーツ)と呼ばれる貿易会社の代理人を訪ねる旅として語られる。コッポラはさらにそれを現代のベトナムの物語へと作り変えたのである。

アメリカの黎明期から支配の時代の終わりへ

当然、それは通常の「戦争映画」になるはずもない。ベトナムのジャングルが人間の心の闇とも重なり、戦争の恐怖は生きることの恐怖となり、戦いの果ての向こう側に向けての闇の中への潜行となる。果たしてそこに着地点はあるのか? ベトナム戦争終戦後、その先が見えない西欧社会の行き詰まりの中で、「その後」を模索するアメリカの露わな姿をそこに見て取ることもできる。「アメリカ」の黎明期の物語とも言える『ゴッドファーザー』の後、コッポラは「アメリカ」の終わりであり、新たな始まりの物語を作り上げたのだ。

難航した製作と混乱

製作は難航を極めた。さまざまなトラブルにより何度も撮影は中断。キャストも変更。スタッフも入れ替わり、当然経費も莫大なものとなり、1200万ドルの当初の予算は3100万ドルへと膨れ上がった。その経費の多くはコッポラ自らの出資である。コッポラこそがジャングルの闇の中で暮らすカーツ大佐となったのだとも言えるだろうか。カーツ大佐の混乱を、監督自身も生き、そして映画が出来上がる。

オリジナル・ヴァージョンでの公開

その公開から36年。混乱の中で出来上がった映画はいまだに生き物のように、姿を変えるはずだ。21世紀初頭にさらに50分ほどが付け加えられて「特別完全版」となって上映された『地獄の黙示録』だが、今回はそれより50分短いオリジナル・ヴァージョンでの公開。後に付け加えられた慰問に訪れたプレイメイトたちのプライヴェートなエピソードや、ベトナムで大規模農園を営むフランス人一家のエピソードなどがない、主人公のウィラード大尉の行動をシンプルに追ったストーリー。そして、さまざまな製作途中のトラブルのためか、エンディングのクレジットもないヴァージョンである。不意に、真っ黒な画面となって映画は終わる。まさに暗闇の中にわたしたちは放り出されてしまうのである。

36年ぶりに「終わりの始まり」を振り返る

その時再び、映画の冒頭で流れたドアーズの名曲「ジ・エンド」が、わたしたちの脳裏をよぎるだろう。終わりから始まったこの映画が、旅の進行とともに混迷を深め、まさに「闇の奥」へと突き進むとき、この映画の出発点である何かの終わりに立ち戻り、わたしたちの36年を振り返ってみたい。ジャングルの中の戦いの果ての風景は、今の日本の中でいったいどんなふうに見えるだろうか? この36年間に世界中で起こったさまざまな出来事は、この映画とどんなふうに重なり合ってくるだろうか?

『地獄の黙示録 劇場公開版』 予告編

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【ストーリー】
ベトナム戦争後期。陸軍空挺士官のウィラード大尉はサイゴンのホテルに滞在中、軍上層部に呼び出され、元グリーンベレー隊長のカーツ大佐の暗殺指令を受ける。カーツ大佐は米軍の意向を無視して山岳民族の部隊とともに国境を越え、カンボジアに侵攻し、王国を築いているらしい。
任務の出発点、ナン川には海軍の硝戒艇と若い4人の乗員が待っていた。ウィラードは海軍の河川哨戒艇に乗り込み、乗組員に目的地を知らせぬまま大河を遡行する。その中で一行は戦争の狂気を目の当たりにする。ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を流しながらの爆撃、サーフィンをするためにベトコンの前哨基地を襲撃する司令官。ジャングルに突如として出現したプレイメイトのステージ。指揮官抜きで戦い続ける最前線の兵士。そして目的地に近づくにつれ、騒がしさは薄れ、静けさと静けさゆえの狂気がウィラードたちを包み込み始める。原住民からの攻撃は、もはや現実の出来事とも思えない。
しかし現実に乗組員は死傷し、ウィラードは何とか王国にたどり着く。出迎えたのは、狂った白人カメラマン。彼の案内で、ウィラードは王国に入り、カーツ大佐と邂逅する。そしてカーツとの対話。カーツの言葉は、ひとりの人間というより、人間の心の闇の中から湧き出てくるようなものだった。寺院の外では祭りが始まろうとしていた。豊穣と国土再生の祭りが……。


地獄の黙示録 劇場公開版<デジタル・リマスター>
Apocalypse Now
出演:マーロン・ブランド、ロバート・デュヴァル、マーティン・シーン、フレデリック・フォレスト、アルバート・ホール、サム・ボトムズ、ローレンス・フィッシュバーン、デニス・ホッパー
監督・製作:フランシス・コッポラ
脚本:ジョン・ミリアス、フランシス・コッポラ
ナレーション脚本:マイケル・ハー
共同製作:フレッド・ルース、グレイ・フレデリクソン、トム・スターンバーグ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
美術:ディーン・タヴォウラリス
編集:リチャード・マークス
音響:ウォルター・マーチ
音楽:カーマイン・コッポラ、フランシス・コッポラ
制作:OMNI ZOETROPE
1979年/アメリカ/147分/カラー/デジタル(デジタル・リマスター版)
©1979 Omni Zoetrope. All Rights Reserved.
提供:吉祥寺バウスシアター/配給:boid

4/16(土)よりシネマート新宿、4/30(土)よりシネマート心斎橋にて公開!
以降全国順次公開です。