アンスティチュ・フランセ東京で2月5日から開催の「第19回カイエ・ デュ・シネマ週間」で、2015年10月に死去した映像作家シャンタル・アケルマンの追悼特集が行われる。
2月5~7日と、12~14日の2週にわたり16本の作品を上映することがわかった。

Chantal Akerman, début des années 90
c) Jean –Michel Vlaeminckx/ Cinergie

http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1602050214/

 アケルマンは1975年に発表した傑作『ブリュッセル 1080 コメルス河畔通り23番地 ジャンヌ・ディエルマン』を撮り、映画に革命を起こしました。
その後も、短編、長編、フィクション、ドキュメンタリー、実験映画、文学の脚色など、様々なジャンルで新しい映画の形態を探求し続け、現代映画の可能性を率先して見出しました。

ジム・ジャームッシュ、ガス・ヴァン・サント、トッド・ヘインズ、アピチャッポン・ウィーラセクタン、ミヒャエル・ハネケら、多くの監督に影響及ぼした。

なお、第8回恵比寿映像祭で遺作となった「No Home Movie」が上映される。
 会期中は、「カイエ・デュ・シネマ」ニューヨーク特派員で、アケルマンの映画を紹介してきた映画批評家、映画監督のニコラ・エリオットの講演会を予定。

上映作品より

『街をぶっ飛ばせ』

(ベルギー/1968年/13分/デジタル/モノクロ/台詞なし)
出演:シャンタル・アケルマン
若い女性が鼻歌を歌いながら、料理をすると思いきや、キッチンをめちゃくちゃにし、壁を汚し、顔に食べものを塗りたくる。そして驚くべきラストへと向かっていく。「アケルマンがブリュッセル映画学校の卒業制作として撮ったこの13分の処女作にアケルマン作品の原型がすでに認められることに驚きを禁じえない。」E・ブルトン、『ブレフ』
「アケルマンの反逆的作品群の出発点となる怒りと破壊的エネルギーに満ちたパンク的な作品。」オリヴィエ・ペール

『私、あなた、彼、彼女』

(ベルギー=フランス/1975年/90分/デジタル/モノクロ/日本語字幕)
出演:シャンタル・アケルマン、ニエル・アレストリュプ、クレール・ワティオン

アケルマン演じる若い女性の人生の4つのスケット。女性は部屋で家具を動かしたり、手紙を書いたり、砂糖を食べたりしている。部屋を出て、トラック運転手と出会い、彼に体を委ねる。その後、部屋に戻り若い女性との親密なる時を経て、ふたりは愛を交す。
「観客は絶えず緊張感を持って彼女の道程を追い続ける。そこにはアケルマン自身がよぶところの「逸楽」があるのだろう。」(ジャン・ナルボニ 「カイエ・デュ・シネマ」276号)

『囚われの女』

(フランス=ベルギー/1999年/107分/35ミリ/カラー/英語字幕)
出演: シルヴィ・テスチュ、スタニスラス・メラール、オリヴィエ・ボナミ

マルセル・プルースト『失われたときを求めて』の第五篇「囚われの女」をアケルマンの自由な発想で映画化。パリの豪奢な邸宅で恋人アリアンヌと暮らすシモンは、彼女を求める激しい思いから、彼女を尾行する。そして彼女が女性と愛し合っているという妄想に取り憑かれる。ヒッチコックの『めまい』をも想起させる傑作の一本でその年の「カイエ・デュ・シネマ」ベストテンで2位に選ばれた。「『囚われの女』は他性についての偉大な映画だ。」オリヴィエ・ペール

『ホテル・モンタレー』

(ベルギー/1972年/63分/デジタル/カラー/サイレント)

ニューヨーク、マンハッタンにある安ホテル、アケルマンの眼差しによって、神秘と、予期せぬ美しさをともなって、廊下、エレベーター、部屋、窓、宿泊客(老人たち、ホームレス、犯罪者など)がまるでエドワード・ホッパーの絵画を想起させるように、精彩を帯びてくる。本作はまた「声を持たないアメリカ」についての映画でもある。

『家からの手紙』


(ベルギー=フランス/1976年/89分/デジタル/カラー/英語バージョン・無字幕)

トラベリング、あるいは固定ショットで映される1976年のニューヨークに、母からの手紙を読むアケルマンの声がかぶさる。アケルマンのニューヨークの忘れがたいタイムカプセルは、都会における疎外感、そして家族の断絶についてのすぐれた考察でもある。

同特集はアンスティチュ・フランセ東京のほか京都、大阪、横浜に巡回する。

詳細は下記より