『奴らを高く吊るせ!』(テッド・ポスト 68)
『奴らを高く吊るせ!』は、クリント・イーストウッドの監督主演作品『グラン・トリノ』(08)と合わせて観るとさらに面白い作品です。
時代は1880年代のアメリカ・オクラホマ。牛泥棒の濡れ衣を着せられ首吊りで殺されかけた男ジェッド(クリント・イーストウッド)は、保安官になり合法的な復讐を果たしていきます。その過程で起きる応報感情の着地点、そして死刑や司法制度や冤罪の問題から、正義と思われるものの不確かさを描いていきます。
映画の序盤でジェッドの命を救った保安官が、中盤で脱走した囚人を捕まえようか射殺しようか躊躇しているときに、護送車のなかにいる他の囚人たちが、逃げる囚人を殺せと騒ぎ出す場面が印象に残ります。
騒ぎは保安官のカタルシスを高めていき、保安官は迷いながらも射殺をしてしまう。人が良さそうに見える保安官が、射殺するまでの過程を丁寧に描くことで、群衆心理の恐ろしさを見せています。
ところでジェッドが首を吊るされた瞬間、足から垂れる滴は糞?だと思います。吊るされると糞を漏らすのはよく知られていることですが、映画でその描写をしているのを初めて見ました。
中盤で幾人もの男たちが一斉に吊るし首にされる場面、老人も子供もまるで見せ物を見るように集まります。娼婦たちは着飾り、屋台まで出てお祭り騒ぎになっていきます。そこで行なわれる死刑は正当な手続きを踏んだ正義と皆は思っています。
しかしそれは罪人を捕えた保安官を英雄にして、秩序を維持するための見せしめであり、死刑が事実上のリンチとなっています。 西部劇を舞台にすることで、死刑に関係する様々な問題を原始的な形にして、現在の社会の問題をあぶり出すことに成功している作品です。
https://www.youtube.com/watch?v=lKITYu7z-AY
監督: テッド・ポスト
出演: クリント・イーストウッド, インガー・スティーブンス, エド・ビグリー
原題: Hang 'Em High
販売元: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
価格: 1,944円
発売日: 2011/06/22
時間: 115分
製作年・製作国: 1968年 米国